(IDWR 2004年第14号掲載)
A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残さ れる。HAVは糞便中に排泄され、糞口感染で伝播するので、 患者の発生は衛生環境に影響されやすい。A型肝炎は発展途上国では蔓延しているが、先進国では上下水道などの整備により感染者は激減している。しかしなが ら、HAV感染の少ない 状態が長期間継続すると抗体陰性者が増加する。日本では50歳以下での抗体陽性者は極めて少ない。最近の日本のA型肝炎では乳幼児、学童の患者は殆ど見ら れず、患者の高年齢化が 顕著である。また、大規模な集団発生はみられないが、飲食店を介した感染や、海外渡航者 の感染がみられる。ますます盛んになる国際交流、発展途上国からの輸入食料品の増加など、 A型肝炎の感染予防対策は社会的に重要な問題として認識されるようになってきた。国産の不活化ワクチンが製造認可され、1995年から医療現場で使われている。