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眼トキソプラズマ症(トキソプラズマ性網脈絡膜炎)

(IASR Vol. 43 p59-60: 2022年3月号)

 

 トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)はネコを終宿主とする細胞内寄生原虫で, ヒトは中間宿主にあたる。ネコの糞便中のオーシスト(接合子嚢)や, トキソプラズマに感染したウシ・ブタ・ニワトリ等の中間宿主の肉を加熱不十分な状態で食することによりヒトに感染する。感染後, トキソプラズマは血行性・リンパ行性に全身に播種し, 発熱, 全身倦怠感, リンパ節腫脹等を起こす。免疫正常者ではトキソプラズマは全身の臓器, 特に脳・眼・筋肉・肺にシスト(嚢子:緩増虫体を内蔵する)を形成し潜伏するため, 症状は自然に緩解し不顕性感染となる。しかし, 免疫不全者〔後天性免疫不全症候群(AIDS)患者・長期免疫抑制剤の投与を受けている患者等〕では, 時に致死する日和見感染症の1つである。妊婦が初感染した場合, 胎児に感染が波及することがあり, 先天性トキソプラズマ症(4大徴候:網脈絡膜炎・水頭症・脳内石灰化像・精神運動障害)を発症する。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan