(IASR Vol. 34 p. 143-144: 2013年5月号)
2012年のClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)ドキュメントにおいて、チフス菌および腸管外から分離されたサルモネラ属菌(以下、チフス菌等)のフルオロキノロン(ニューキノロン)系抗菌薬に関する記載が改訂され、治療効果を判断するための新たな最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration: MIC)の判定基準(ブレイクポイント)が引き下げられた。これまでシプロフロキサシン(CPFX)では、MIC値4mg/L以上で耐性、2mg/Lで中間、1mg/L以下で感受性と判断されていたが、変更後は1mg/L以上で耐性、0.12~0.5mg/Lで中間、0.06mg/L以下で感受性となった(表)。
従来、ニューキノロン系抗菌薬に対して感受性であっても、ナリジクス酸に対して耐性を示すチフス菌等による感染症に対し、ニューキノロン系抗菌薬治療は無効か効果が弱いとされている。こうした株の多くは旧ブレイクポイントでは感受性となることから、ニューキノロン低感受性菌と呼ばれており、CLSIではナリジクス酸を用いたスクリーニングを推奨していた(CLSI2011)。今回のブレイクポイントの改訂により、CPFX低感受性菌の多くは耐性もしくは中間となると推測される。
国立感染症研究所細菌第一部では、チフス菌およびパラチフスA菌のファージ型別と併せて感受性試験を実施しております。本年4月以後の菌株についてはCLSI2012の基準に従うこととし、CPFX非感受性(耐性もしくは中間)として報告いたしますので、よろしくお取り計らいのほど願い上げます。
国立感染症研究所細菌第一部
森田昌知 泉谷秀昌 大西 真