国立感染症研究所

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沖縄県におけるSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)症例の実地疫学調査報告

(速報掲載日 2022/1/11)
 
はじめに

 2021年11月24日に南アフリカ共和国から世界保健機関(WHO)へ最初の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)新規変異株B.1.1.529 系統(オミクロン)感染例が報告された。12月21日までに日本を含め世界106カ国から感染例が報告され、各地でオミクロン株の感染拡大がみられている1)

 国内では、2021年11月30日に初のオミクロン株感染例が空港検疫所の検査で確認された。以降、2021年12月27日までに、国内で計316例のオミクロン株感染例(確定例)が報告された2)。そのうち36例が検査前14日以内に海外渡航歴がなく、また海外渡航歴のある者との接触が認められないオミクロン株感染例であった。これらは、複数の都道府県(大阪府14例、京都府12例、愛知県、山口県各2例、東京都、富山県、静岡県、滋賀県、広島県、福岡県各1例)から報告された2)

 沖縄県庁が、オミクロン株感染を初めて確認したのは2021年12月17日、キャンプ・ハンセン基地従業員からであった3)。当該症例は、12月14日にSARS-CoV-2検査で陽性となり、12月16日にL452R変異判定PCR検査でL452と判定された(L452R変異陰性)ためゲノム解析を行い、12月17日にオミクロン株感染が確認されている。その後 2022年1月1日までに、県内では64例のオミクロン株の感染例が確認された。本稿では、このうち、1月3日までに詳細な疫学情報が得られたオミクロン株感染例50例についての記述疫学の結果について報告する。なお、今回の報告に含めていないが、在沖縄米軍基地においては、2021年12月初旬、米本国から国内(沖縄県)に入国した部隊からのSARS-CoV-2検査陽性の感染例が確認されて以降、連日多くの感染例が報告されており、1月2日時点で約400例となっている4)

対象と方法

 症例定義は、2021年12月1日~2022年1月1日に沖縄県で確認されたSARS-CoV-2検査陽性例〔新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例〕のうち変異株PCR検査によりL452R変異陰性であったものを国内の流行系統の状況を参考にオミクロン株疑い例(疑い例)とした。さらにウイルスゲノム解析によりオミクロン株であることが確定した症例をオミクロン株確定例(確定例)とした。確定例について、県内の保健所が実施した積極的疫学調査結果(調査票)、県衛生環境研究所からの検査結果、関係者からの聞き取り調査の情報を用いて、記述疫学を行った。

結 果

 2021年12月1日~2022年1月1日の県内のCOVID-19症例は400例、疑い例は159例、確定例は64例であった。COVID-19症例と疑い例の検査結果判明日ごとの割合の経時的変化を図1に示す。12月16日に県内初の疑い例が認められ、その後10日間は疑い例の探知は散発的であった。12月26日以降疑い例の割合は、急激に上昇し、12月30日時点で97%にまで達した。

 確定例のうち詳細な疫学情報が得られた50例に関する発症日に基づいた流行曲線を図2に示す。発熱、咽頭痛、頭痛、咳、全身倦怠感などのCOVID-19症状のうち、いずれか1つ以上の症状を最も早く発症したのは12月12日の症例であった。確定例における患者の発症日のピークは12月21日であったが、以降も継続的な患者の発生が認められている。

 確定例の基本属性は、男性は24例(48%)、女性は26例(52%)、年齢中央値は44歳(四分位範囲27-53歳、範囲6-89歳)であった。新型コロナワクチン接種歴は、2回接種完了者(2回接種後2週間以上経過した者)33例(66%)、部分接種者(1回接種者および 2回接種後2週間を経過していない者)3例(6%)、未接種者14例(28%)であった。

 発生届出時点での確定例有症状者は、48名(96%)であった。症状の内訳は、37.5℃以上の発熱75%、咳60%、全身倦怠感52%、咽頭痛46%、鼻水・鼻閉38%、頭痛33%、関節痛25%、呼吸困難8%、嗅覚・味覚障害2%であった(重複あり)。なお、この50例について、その後重症例や死亡例は、1月10日時点で確認されていない。

 確定例の推定感染源は、職場内14例(28%)、家族内13例(26%)、家族や親戚、友人等との集まり(会食や法事)9例(18%)、県外0例(0%)、不明・調査中14例(28%)であった。

 行動歴や確定例との接触情報から、推定曝露機会が特定できた17例における潜伏期間(有症状のみ)の中央値は3日(範囲2-5日)(ただし同居内二次感染事例においては最も早く発症した人のみを含めた)であった。

 また、家庭内で最も発症日が早い症例を初発症例と定義し、独居を除く22例の初発症例の同居家族内濃厚接触者が健康観察期間に検査陽性となった割合(同居家族の二次感染割合)(同居家族内の初発症例との最終接触日~1月10日時点での健康観察期間14日経過を対象とした場合の症例数÷同居者数)を算出した結果、31%であった。なお、対象となった初発症例22例のうち、27%に当たる6例において同居家族内濃厚接触者全員が感染していた。

考 察

 沖縄県においては、2021年12月末よりオミクロン株確定例、同疑い例の急激な増加が認められている。年末年始の人の流れが活発であったこともあり、今後も感染者数や濃厚接触者数の増加が懸念される。また、今回の結果より県内のオミクロン株確定例の潜伏期間は3日(範囲2-5日)であり、これまで、国内や海外から報告されているオミクロン株以外の潜伏期間の4.8日、5.1日5,6)よりも短縮の方向に偏位していた。このことから、急速な患者数の増加とそれにともなう濃厚接触者数の増加が予想され、宿泊施設や医療機関の逼迫が懸念される。ただし、本調査では、症例数が限られていること、家庭内で最も探知の早かった二次発症者を用いて算出していることから、一般化するにはさらなる調査が必要と考える。

 県内初発確定例が認められてから、症状の有無を問わず、幅広く検査が実施されており、探知された症例の年齢層は広く、有症状者が多かった。また、2回ワクチン接種完了者が半数を超えていた。以上から、ワクチン接種の有無を問わず、引き続きマスク着用、手指消毒、三密(密集・密接・密閉)の回避など、感染予防対策の徹底が必要である。また、各人が症状を自覚した際には、出勤や会食を控えることで自己隔離すること、また、早期に受診することが周囲への感染拡大を抑制するうえで有効であることを理解することが、公衆衛生として重要である。

 同居家族の二次感染割合は、これまで国内では26.1%7)、海外では11.3%(ワクチン2回接種完了者)、25.8%(未接種者)8)との報告があるが、今回の同居家族の二次感染割合は31%であった。さらに、同居家族全員が感染した家庭も27%認められた。家族内初発例や同居家族全員がワクチン接種完了者であっても感染伝播を認めており、同居家庭内、特に高リスク者がいる家庭おける感染拡大を防ぐためには、家庭に持ち込まないように社会生活における感染予防策の徹底を引き続き講じる必要がある。

 

 注意事項

 本稿は、迅速な情報共有を⽬的とした資料であり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。

 謝 辞

 調査にご協力いただいた沖縄県内の自治体関係者、医療機関の皆様、国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターの皆様に深く感謝致します。

 

参考文献
  1. 国立感染症研究所, SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第5報)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10876-sars-cov-2-b-1-1-529.html
  2. 厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症(変異株)の無症状病原体保有者について(空港検疫)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22507.html
  3. 厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症(変異株)の患者の発生について
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22894.html
  4. 沖縄県, 新型コロナウイルス感染症にかかる知事コメント
    https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kohokoryu/koho/2020_new_korona_virs.html
  5. IASR 42: 131-132, 2021
  6. Lauer SA, et al., Ann Intern Med 172(9): 577-582, 2020
  7. IASR 42 : 236-237, 2021
  8. Oon Tek Nga, et al., The Lancet Regional Health Western Pacific, volume 398, issue100299, December 1, 2021

沖縄県保健医療部
 平良勝也 大濱克行 原 和浩 渡慶次彩子 森近省吾 糸数 公
沖縄県新型コロナウイルス対策本部医療コーディネーター
 佐々木秀章 米盛輝武   
沖縄県各保健所、那覇市保健所
沖縄県衛生環境研究所 
 仁平 稔 髙良武俊 久場由真仁 柿田徹也 久手堅 剛 眞榮城徳之 喜屋武向子
国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース(FETP)
 塚田敬子            
同 実地疫学研究センター      
 神谷 元 土橋酉紀 島田智恵 砂川富正

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