ペストとは(2023年9月13日改訂…

(2023年9月13日改訂) エルシニア属細菌の一種,ペスト菌(Yersinia pestis)感染に起因する全身性の侵襲性感染症. 動物由来感染症.げっ歯類を保菌宿主とし,節足動物(主にネズミノミ属のノミ)によって伝播される.ペスト菌感染動物を感染源とする直接感染もある. 肺ペスト患者から排出された気道分泌液により,ヒトーヒト間で飛沫感染する場合がある. 潜伏期間は通常1〜7日.感染ルートや臨床像によって腺ペスト,肺ペスト,および敗血症型ペストに分けられる. 治療薬として,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系もしくはテトラサイクリン系の抗菌薬が使用され,その投薬期間は10〜14日間である. 適切な抗菌薬による治療が行われなかった場合,腺ペストでの死亡率は30〜60%である.肺ペストの場合はさらに死亡率は高まる. 抗生物質の発見前には全世界的な大流行が幾度か記録されており,特にヨーロッパでは黒死病として古くから恐れられてきた.近年の流行は,アフリカ,南米で報告がある.北米やアジアでも散発事例が報告されている.

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世界におけるペストの現状, 2010~2015年(1)

(IASR Vol. 37 p. 84: 2016年4月号)

ペストは主に小哺乳類に起こる, ノミが媒介する細菌感染症である。地理的には非常に局所的である。ペストの病原体であるYersinia pestisは, 感染ノミによりヒトに感染することがある。ヒトにおけるペスト, 特に敗血症型ペストと肺ペストは重篤である。肺ペストは早期に治療をしなければ致命的であり, 感染性も高い。直接的なヒトとヒトの接触で重大な集団発生が起こりうる。このような状況から, ペストは医学的にも公衆衛生的にも緊急性を要する感染症である。

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