妊婦さんおよび妊娠を希望されている方へ
妊婦さんおよび妊娠を希望されている方に知っておいてほしい感染症として先天性トキソプラズマ症があります。
先天性トキソプラズマ症とは
妊娠中に初めてトキソプラズマに母親が感染する結果起こります。妊娠末期ほど胎児への感染率は上がりますが、妊娠初期の感染ほど重症化しやすいとされています。
胎児が感染した場合の症状としては、死産、流産、水頭症、脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害などがよく知られています。例え出生時に無症状でも、その後成人となるまでの間に症状を呈する可能性があります。
トキソプラズマの感染源
大きく分けて3つあります。空気感染やヒトからの感染などはありません。
- (1)トキソプラズマに感染している肉を生で、または十分に加熱しないで食べること
- (2)土いじり
- (3)トキソプラズマに感染しているネコの糞に触れること
レアステーキ、ユッケ、馬刺し、鶏刺し、生ハム、サラミ、生乳なども感染源になり得ます。また肉を切った包丁やまな板で生野菜を調理する事にも感染の危険性があります。
土や砂には、ネコの糞から出て来たトキソプラズマのタマゴ(オーシスト)が含まれている可能性があります。タマゴは1年以上感染力を有しています。水より比重が軽いので、雨の後には土の表面に浮き上がってきます。素手での砂場遊びやガーデニングは避けましょう。
ネコの糞に直接触れることがなくても、糞に汚染された土や砂からも感染する危険性があります。飼いネコのトイレ掃除はできるだけ避けて下さい。避けられない場合はマスクや手袋を着用し、終了後しっかりと手を洗いましょう。ネコの糞中のトキソプラズマは成熟するのに24時間以上かかります。ネコのトイレ容器は毎日掃除して下さい。ネコは全身を舐めるため、キスなどのスキンシップも避けた方が良いでしょう。ネコを捨てる必要は決してありません。また、ネコ科動物以外のペットからは感染しません。
トキソプラズマの抗体検査
日本の妊娠可能女性の多くは、トキソプラズマに感染したことがなく、免疫を持っていません。トキソプラズマ抗体検査(自費の場合約1000~2000円程度)を行うことで、トキソプラズマに対する免疫の有無を調べることができます。トキソプラズマ抗体検査は、標準的な妊婦健診の検査項目ではありませんが、希望すれば多くの医療機関で受けることができるので、主治医の先生に相談しましょう。また、ブライダルチェックにトキソプラズマ抗体検査を含む医療機関もあります。 なお、感染時期の推定や胎児への感染の有無については、より詳しい検査が必要です。
○抗体検査結果が陰性の場合
これまで、トキソプラズマに感染した事はありません。妊娠中に新たにトキソプラズマに感染しないよう、感染源に留意し、感染予防に努めましょう。(トキソプラズマの感染予防は、食中毒等、妊娠中に赤ちゃんに影響を及ぼす他の感染症予防にも有効です。)
○抗体検査結果が陽性の場合
更に専門機関で検査を行い、感染時期を推定します。感染時期の確定は困難な場合が多いですが、推定は出来ます。妊娠中の感染が疑われる場合は、胎児感染の有無を調べ、必要な場合は治療を行います。