インフルエンザとは

(IDWR 2005年第8号掲載)  インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症であるが、「一般のかぜ症候群」とは分けて考えるべき「重くなりやすい疾患」である。

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インフルエンザ抗体保有状況 -2015年度速報第2報- (2015年12月4日現在)
 

はじめに
 感染症流行予測調査事業における「インフルエンザ感受性調査」は、毎年、インフルエンザの本格的な流行が始まる前に、インフルエンザに対する国民の抗体保有状況(免疫状況)を把握し、抗体保有率が低い年齢層に対するワクチン接種の注意喚起ならびに今後のインフルエンザ対策における資料とすることを目的として実施している。
 わが国におけるインフルエンザワクチンは、従来、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、B型(ビクトリア系統あるいは山形系統)の3つのインフルエンザウイルスをワクチン株とした3価ワクチンが用いられてきた。しかし、近年はB型の二系統が同シーズンに流行する傾向が世界的にみられており、WHOは2013/14シーズンから北半球におけるワクチンとしてB型の二系統を含む4価ワクチンを推奨している。わが国においては今シーズン(2015/16シーズン)より4価ワクチンが使用開始となり、本調査では今シーズンのワクチン株に用いられた4つのインフルエンザウイルスについて抗体保有状況の検討を行った。
 

1. 調査対象および方法
 2015年度の調査は、24都道府県から各198名、合計4,752名を対象として実施された。インフルエンザウイルスに対する抗体価の測定は、健常者から採取された血液(血清)を用いて、調査を担当した都道府県衛生研究所において赤血球凝集抑制試験(HI法)により行われた。HI法に用いたインフルエンザウイルス(調査株)は以下の4つである。また、採血時期は原則として2015年7~9月(例年のインフルエンザの流行シーズン前かつワクチン接種前)とした。
a)A/California(カリフォルニア)/7/2009 [A(H1N1)pdm09亜型]
b)A/Switzerland(スイス)/9715293/2013 [A(H3N2)亜型]
c)B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)]
d)B/Texas(テキサス)/2/2013 [B型(ビクトリア系統)]
 

2. 調査結果
 2015年12月4日現在、北海道、山形県、福島県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、三重県、京都府、佐賀県、宮崎県の17道府県から合計4,540名の結果が報告された。5歳ごとの年齢群別対象者数は、0-4歳群:536名、5-9歳群:335名、10-14歳群:375名、15-19歳群:334名、20-24歳群:333名、25-29歳群:427名、30-34歳群:428名、35-39歳群:389名、40-44歳群:324名、45-49歳群:267名、50-54歳群:275名、55-59歳群:199名、60-64歳群:174名、65-69歳群:94名、70歳以上群:50名であった(※調査株により対象者数が若干異なる)。
 なお、本速報における抗体保有率とは、感染リスクを50%に抑える目安と考えられているHI抗体価1:40以上の抗体保有率を示し、抗体保有率が60%以上を「高い」、40%以上60%未満を「比較的高い」、25%以上40%未満を「中程度」、10%以上25%未満を「比較的低い」、5%以上10%未満を「低い」、5%未満を「きわめて低い」と表した。
 

【年齢群別抗体保有状況】
A/California/7/2009 [A(H1N1)pdm09亜型]
:図1上段
 本ウイルスは2009年に世界的大流行(パンデミック)を起こしたインフルエンザウイルスの代表株であり、2009/10シーズンは本ウイルスを用いた単価ワクチンが製造され、従来の3価ワクチンとは別に接種が行われたが、2010/11シーズン以降は6シーズン続けてワクチン株の1つとして選定されている。
 本調査株に対する抗体保有率は20代前半をピークとし、5歳から20代の各年齢群で60%以上(69~85%)と高かった。また、30代から50代前半の各年齢群では比較的高い(47~57%)抗体保有率を示したが、それ以外の0-4歳群および50代後半から70歳以上の各年齢群は中程度(25~39%)であった。全対象者での抗体保有率は56%(2559/4540)と調査株中最も高かった。

A/Switzerland/9715293/2013 [A(H3N2)亜型]:図1下段
 本ウイルスは前シーズン(2014/15シーズン)に流行したA(H3N2)亜型の代表株であり、今シーズンのワクチン株の1つとして選定された。
 本調査株に対する年齢群別の抗体保有率は、5-9歳群および10-14歳群で60%以上(67~72%)と高く、15-19歳群、20-24歳群および30代から40代前半の各年齢群では比較的高かった(42~50%)。しかし、それ以外の0-4歳群、25-29歳群および40代後半から70歳以上の各年齢群では中程度(28~39%)の抗体保有率であった。全対象者での抗体保有率は調査株中2番目に高かったが、A(H1N1)pdm09亜型より10ポイント低い46%(1958/4279)であった。

B/Phuket/3073/2013 [B型(山形系統)]:図2上段
 本ウイルスは前シーズンに流行した山形系統の代表株であり、今シーズンのワクチン株の1つとして選定された。
 本調査株に対する抗体保有率は、20代をピークとし、10代後半から30代前半の各年齢群および45-49歳群で比較的高かった(40~57%)が、60%以上を示した年齢群はみられなかった。それ以外の年齢群は中程度以下であり、中でも0-4歳群、5-9歳群および50代後半から70歳以上の各年齢群は比較的低い(10~24%)抗体保有率であった。全対象者での抗体保有率は36%(1529/4280)であり、A型と比較して10ポイント以上低かった。

B/Texas/2/2013 [B型(ビクトリア系統)]:図2下段
 本ウイルスは前シーズンに検出されたビクトリア系統のインフルエンザウイルスと抗原性が類似しており、今シーズンのワクチン株の1つとして選定された。
 本調査株に対する抗体保有率はほとんどの年齢群で30%未満であり、中でも0-4歳群および50代後半から70歳以上の各年齢群は10%未満の低い抗体保有率であった。全対象者での抗体保有率は調査株中最も低い17%(738/4280)であった。
 


図1


図2

コメント
 病原微生物検出情報におけるインフルエンザウイルス分離・検出状況(2015年11月26日現在報告数)によると、今シーズンは2015年第36~47週(8月31日~11月22日)にAH1pdm09亜型29例、AH3亜型56例、B型25例(山形系統20例、ビクトリア系統5例)の報告があり、現時点ではAH3亜型の分離・検出報告数が多いが、今後の状況についてはさらなる解析が必要である。また、感染症発生動向調査によるインフルエンザの定点あたり患者報告数は、2015年第47週(11月16~22日)の速報値で0.19であり、全国的な流行の指標となる1.0には達していない。
 本格的な流行シーズンが始まる前に、本調査で抗体保有率が低かった年齢層においてはワクチン接種等の予防対策を行うことが望まれる。


国立感染症研究所 感染症疫学センター/インフルエンザウイルス研究センター

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