国内の真菌症
真菌感染症には白癬のように誰にでも発症する場合と、免疫力の低下しているヒトに起こる場合があります。いずれの場合も肺、脳などに侵襲し重篤化する疾患があります。誰でも重篤化する真菌症としてコクシジオイデス症やクリプトコックス症などがありますが、国内で感染し発症するのはクリプトコックス症です。本症の播種型は平成26年に感染症法で全数把握疾患に規定され、現在、国内での動向や疾病の性質が明らかになりつつあり、とくに高齢者では致命率が高いことが解ってきました。
一方、何らかの病気がある場合に起こる代表的な真菌症はカンジダ症とアスペルギルス症です。カンジダ症は、血液から菌が生える極めて重篤な状態といえる「菌血症」の原因微生物として国内トップ5に入る頻度でありながら致命率が10~30%程度と重篤な感染症です。アスペルギルス症は、白血球がほとんど無くなるくらい重症の免疫低下があるときに発症する、早期に診断と治療が必要な疾患です。アスペルギルス症と区別が難しいものにムーコル症があり有効な治療薬が1~2種類しかなく特に早期の診断治療が必要です。
新しい真菌症
これまでに知られていなかった真菌症として、2020年ころから健常なヒトに発症するクラドフィアロフォラ・バンティアナが国内でみられるようになりました。また、2015年ころからはカンジダ属の中のカンジダ・アウリスが世界的に院内・施設内感染のアウトブレイクをおこし一部は薬剤耐性であるため、ヒト–ヒト感染をおこす重症感染症として世界的脅威と認識されています。
真菌部の取り組みについて
真菌部では、新しい真菌症をふくめて生命の脅威となる侵襲性の真菌症を主な対象にしています。病気の重症化の原因を解明し、診断法と治療法に直結する研究を第一優先として推進しています。社会に直接還元できる活動では、平成28年度から侵襲性真菌症対策事業が開始され、大学病院等でも検査が困難な症例の真菌症の診断支援を(真菌同定検査依頼 https://www.niid.go.jp/niid/ja/fungi-kensa.html)、令和2年からは感染研全体で取り組んでいる新型コロナ感染症対策として臨床研究やCOVID-19検査指針の作成等を行っています。