国立感染症研究所

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渡航歴のない麻疹集団発生からのB3型麻疹ウイルス検出―愛知県

(IASR Vol. 34 p. 345-346: 2013年11月号)

 

2013年8月23日~9月12日の期間に愛知県内で麻疹と診断された患者のうち、愛知県衛生研究所にて行った麻疹ウイルス遺伝子検査陽性を示した13例について、ウイルス検査の概要を報告する。このうち遺伝子型別のできなかった1例を除く12例の遺伝子型はB3型であった。保健所による疫学調査では、13例とも患者および同居者に患者発症前1か月間の渡航歴はない。なお患者番号はNESID届け出ID順に付番した。

1)8月上旬に同一医療機関来院歴のある者7名
患者2:9歳男児、麻疹含有ワクチン(MCV)接種歴なし、8月16日発熱。患者1:9カ月女児、MCV接種歴なし、8月18日発熱。患者12:26歳女、MCV接種2回、8月18日発熱。患者8:6歳女児、MCV接種1回、8月20日発熱。患者3:1歳男児、MCV接種歴なし、8月21日発熱。患者4:2か月女児、MCV接種歴なし、8月29日発熱・発疹、患者12の家族。患者5:11歳女児、MCV接種歴不明、8月28日発熱。

2)来院者の同居家族4名
患者9:1歳男児、MCV接種歴なし、母が受診、8月30日発熱。患者7:1歳男児、MCV接種歴なし、患者8の家族、8月31日発熱。患者6:35歳男、MCV接種歴不明、患者1の家族、9月2日発熱。患者10:3か月男児、MCV接種歴なし、患者12の家族、9月7日発熱。

3)上記医療圏を通勤し、患者との接触歴のない患者2名
患者11:39歳男、MCV接種歴なし、8月31日発熱。患者13:19歳男、MCV接種歴不明、9月6日発熱。

患者1~13より採取された血液(全血もしくは血清)、尿、咽頭ぬぐい液を検体として、RT-nested PCR法およびVero/hSLAM細胞を用いたウイルス分離による実験室診断を試みた。PCRの結果、患者12を除く12例については、提供された1検体以上より麻疹ウイルスNおよびH遺伝子(1st primerのproduct)が増幅され、N遺伝子の増幅産物について塩基配列を決定した。患者由来N遺伝子の部分塩基配列(456bp)はすべて同一で、系統樹解析の結果、B3型麻疹ウイルスに分類された()。この部分塩基配列は2013年福岡市がタイからの帰国者より検出を報告した配列および同年尼崎市から報告された配列と100%の相同性を示した(、文献1)。H遺伝子nested primerによるproductが生成されなかった(文献1)点も福岡市の事例と同じである。なお患者12については第4病日に採取後冷蔵されていた血清を18日後に検査したところ、H遺伝子のみが増幅された。また、患者5名(1, 3, 4, 6, 10)由来検体より麻疹ウイルスが分離された。

愛知県では、2010年以降毎年輸入麻疹関連症例への対応がなされており、適切な時期に採取された検体が増えて遺伝子検出やウイルス分離率が向上している。2013年は、2月と3月に中国からの輸入各1例より遺伝子型H1を、3月と4月には渡航歴のない患者各1例より遺伝子型D9を検出しており、異なる遺伝子型の麻疹流入が繰り返し検知されている。今回の集団発生は、医療機関以外に接点のない患者5名が8月16~21日の期間に集中して発症しており、感染源は共通と考えられる。また、患者13名中MCV接種歴のあった者は6歳(1回)および26歳(2回)2名のみ、残り11名(うち0歳児3名)のMCV接種歴はなしまたは不明であり、ひとたび麻疹が発生するとMCV未接種者間で速やかな感染拡大がみられる2-4)ことが改めて認識された。日本における2006~2008年のアウトブレイクの主たる原因ウイルスであり、常在型ウイルスとされている遺伝子型D5の麻疹ウイルスの検出は2010年5月を最後に報告がない。輸入麻疹との関連や感染経路の特定に有用な分子疫学的解析の重要性が、今後ますます高まると思われる。  

 

参考文献
1)IASR 34: 201-202, 2013
2)IASR 31: 271-272, 2010
3)IASR 32: 45-46, 2011
4)IASR 33: 66, 2012

 

愛知県衛生研究所  
     安井善宏 伊藤 雅 安達啓一 尾内彩乃 中村範子 小林慎一 山下照夫  皆川洋子
愛知県衣浦東部保健所  
     氏木里依子 山下敬介 伴友輪 鈴木英子 福永令奈 飯田 篤 吉兼美智枝  成瀬善己 
     服部 悟
岡崎市保健所   
     土屋啓三 深瀬文昭 望月真吾 片岡 泉 大嶌雄二 片岡博喜

最終更新日 2016年8月04日(木曜)15:24

参照数: 7398

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