国立感染症研究所

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大阪府における麻疹流行状況-2014年前半-

(IASR Vol. 35 p. 296- 298: 2014年12月号)

大阪府では、2014年1月1日~6月末までの半年間に発症し、その後感染症サーベイランスシステムに登録された麻疹症例は44例であった。これは2013年1年間の発生数15のほぼ3倍である。それらの症例について流行状況、渡航歴の有無、遺伝子型等について分析した。 

対 象
確定された44症例および集団発生事例で感染者の居住地が他府県であった1例を加えた45例を対象とした。散発例(疫学的リンクがないか、渡航歴はあるが1例で終わった症例)および初発例(二次感染への発端者)をA群、二次感染および三次感染者をB群として比較検討した。各群はそれぞれ23例と22例であった。

年齢分布図1
45例の年代別分布では、0~9歳が14例(31%)[ うち0歳7例(16%)、1~4歳5例(11%)、5~9歳2例(4%)] 、20~29歳が13例(29%)、30~39歳8例(18%)の順であった。A群では20~29歳が11例(48%)、B群では0~9歳が8例(36%)と最も多く、特にB群では0歳が6例(27%)と多かった。

全体でみると成人の患者が多かったが、A群は20歳以上、B群は20歳未満に多く、年齢分布がA群とB群で大きく異なっていた。

症状発症週別麻疹患者数図2
症状発症週別麻疹患者数では第2~9週と第11~22週、第24~26週で患者数の増加がみられた。

発症から届出までの期間表1
A群ならびにB群の事例のうち、発症から届出までの日数が判明した45例(A群23例、B群22例)についてt検定を用いて比較検討を行った。A群とB群との間で有意差は認めなかった(A群:8.4±4.9日、B群:6.3±4.0日、P=0.12)。

一方、年齢別(0~14歳・15~49歳)の検討では、全例A群では0~14歳の群は15~49歳の群に比べ有意に短かったが、B群では有意差は認めなかった。

流行状況および推定感染経路
A群23例〔散発例が15例、および初発例(他への感染が判明した初発とされた症例が8例)〕の推定感染経路は、海外渡航後が9例(渡航先:フィリピン6例、中国1例、インドネシア1例、ベトナム1例)、感染源不明が14例であった。

B群(二次感染者・三次感染者)の推定感染経路は、家族内感染が6件15例(うち2件は家族外への1名の二次感染者)で、集団発生事例(後述)として院内感染が1件(4例)、職場感染が1件(3例)あった。

ワクチン接種歴表2
B群は0歳児が多かったことから「接種なし」の割合が多かったが、A群は成人が多かったことから、「接種歴不明」が多かった。

ウイルス検出状況表3
A群の中でB3型の麻疹ウイルス遺伝子型が検出された9例中5例はフィリピンからの帰国者で、残り4例は感染経路が不明であった。その他の海外渡航者においては中国(H1型)1例、インドネシア(D8型)1例であった。また5月以降に発症した15例中、H1型は5月に1例、6月に7例報告されていた。6月に発症した7例には発端者の感染経路が不明の職場での集団感染例の二次感染者も含まれているが、第26週(図2)の5例はいずれも疫学的リンクを特定することができなかった。全45例中、未型別が13例(29%)あった。

集団発生事例
2件の集団発生事例があった。

事例1:発端者は4歳の男児(ワクチン接種歴なし)でフィリピンから帰国した時にはカタル期が過ぎ、発疹と高熱が出現していた。遺伝子型はB3型であった。家族内に感染拡大し(2歳の男児、7か月の男児)、受診した医療機関で8か月の女児、10か月の女児、9か月の男児、33歳の女性に接触しており、感染拡大がみられた。8か月の女児の双子の姉妹(9か月)も7日後に発症し、三次感染と考えられた。いずれの患者もワクチン歴はなかった1)。発端者とその弟(2歳、7か月)と33歳の女性は入院となった。

事例2:発端者は22歳の男性(発症:5月30日、臨床診断、ワクチン歴不明)で海外渡航歴はなく、感染経路も不明である。その後、同じ職場の25歳の男性(発症:6月11日、ワクチン接種歴なし)と33歳の男性(発症:6月13日、臨床診断、ワクチン接種1回あり)および33歳の男性(発症:6月12日、ワクチン接種歴不明)に感染が拡大した。二次感染者3例の遺伝子型はH1型であった。

今後の対策
大阪府内における麻疹散発発生例と集団感染例の全症例について発端者群と二次・三次感染者群とで比較した結果、発端者群は成人に多く、二次・三次感染では0~14歳の小児が半数を占めていた。特に二次・三次感染群では、麻疹含有ワクチン定期接種対象前の乳児が多数を占めていた。また、麻疹ワクチン接種歴なし、または不明者の割合が多く、さらに1回接種を行っていても罹患している事例がみられた。発症から届出までの期間の検討では、成人患者は発症から届出までの期間が0~14歳の小児の患者より長い傾向がみられた。市中感染の排除に向けて、今後は成人に対する麻疹含有ワクチンの接種勧奨と、成人が受診する医療機関への「麻疹」に対する注意喚起が必要と考える。

2014年になり、中国(H1型)、インドネシア(D8型)を除いて麻疹事例のほとんどがフィリピンからの輸入麻疹であり、遺伝子型はB3型であった。5月、6月にはH1型の麻疹事例が急増したが、感染経路は特定できなかった。

今後も輸入麻疹の増加が危惧される。輸入麻疹発病者の渡航先の確認と遺伝子型を含めた詳細な疫学的調査とともに、何よりも重要なことは輸入麻疹患者の入国後の感染拡大防止への迅速な対応である。今回のまとめではウイルスの未型別が13例(29%)あり、当該医療機関に対する適切な検体採取の必要性を周知徹底するつもりである。そして、麻疹流行地からの観光客、帰国者との接触の多い職場で従事する成人に対するワクチン接種勧奨を感染拡大予防対策として考慮すべきであり、さらに麻疹流行地への渡航予定者に対するワクチン接種も強く勧奨すべきである。 

 
参考文献
 
感染症発生動向調査解析評価小委員会
(大阪府・大阪市・堺市・東大阪市・高槻市・豊中市・枚方市)
  東野博彦 八木由奈 塩見正司 吉田英樹 廣川秀徹 奥町彰礼 松本治子 
  田邉雅章 高橋和郎 中川直子 髙野正子 入谷展弘信田真里 松岡太郎 
  笹井康典 小林和夫 田中智之
 

 

最終更新日 2016年6月24日(金曜)17:28

参照数: 6164

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