国立感染症研究所

ノロウイルスGIIの複数の遺伝子型が検出された胃腸炎集団事例—富山県

 

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ノロウイルスGIIの複数の遺伝子型が検出された胃腸炎集団事例—富山県

(掲載日 2016/11/25) (IASR Vol. 38 p.8-9: 2017年1月号)

富山県内の高等教育機関の学生寮において胃腸炎集団事例が発生し、患者からノロウイルス(NoV)GIIの複数の遺伝子型が検出されたので、その概要を報告する。

2016年6月11日、県内の医療機関から管轄保健所に、県西部に位置する当該施設において発熱・嘔吐の症状を呈した寮生が複数いるとの情報があった。保健所が調査を行ったところ、学生寮において6月7日〜6月11日の間に胃腸炎症状を呈した寮生が7名確認された()。寮生は食事のほとんどを寮の食堂で喫食していたが、前記患者7名以外の寮生、寮の食堂の調理員14名および検食を喫食した教職員2名の健康状態に異常は見られなかった。疫学調査の結果から、本事例は食中毒の可能性は低いと判断された。

病原体検索のため、6月13日に採取した患者5名の糞便が当所に搬入された。リアルタイムPCR法によるNoV検査を行った結果、5名中3名からNoV GIIが検出された。これら3名の検体から得たcDNAについて、ポリメラーゼ領域およびカプシド領域の境界領域を増幅するプライマー1421f/NV2oR1)を用いてPCRを行った後、ダイレクトシークエンス法により増幅産物の塩基配列を決定した。得られた配列のポリメラーゼ領域(ORF1領域の3’末端側499塩基)およびカプシドN/S領域(ORF2領域の5’末端側282塩基)について、Norovirus Genotyping Tool Version 1.0(http://www.rivm.nl/mpf/norovirus/typingtool#/)を用いて遺伝子型別を実施したところ、3名中2名(患者No.2、6)から検出された配列はGII.P7-GII.6型、1名(患者No.7)から検出された配列はGII.P17-GII.17型に分類された()。2名から検出されたGII.P7-GII.6株の塩基配列は、解析を行った領域において100%一致した。

いずれの検体も、ダイレクトシークエンス法では混合波形は確認されなかったが、2種類の遺伝子型の共感染の可能性も否定できない。そこで、検出された2種類の株それぞれに特異的なフォワードプライマー〔参照株Lordsdale/93/UK(X86557)のnucleotide position 5059-5078に相当〕とリバースプライマー(同株のnucleotide position 5373-5351に相当)を作成し(推定PCR産物:315bp)、NoV陽性の3名の検体よりPCR法による検出を試みた。その結果、共通プライマー1421f/NV2oRによりGII.P7-GII.6を検出した2名は、GII.P7-GII.6株特異的プライマーによるPCRでのみ増幅産物が確認され(図1 A、レーン1, 2)、共通プライマーでGII.P17-GII.17を検出した1名は、GII.P17-GII.17株特異的プライマーによるPCRでのみ増幅産物が確認された(図1 B、レーン3)。したがって、これら患者3名は両遺伝子型の共感染ではないことが示された。

以上から、GII.P7-GII.6が検出された2名とGII.P17-GII.17が検出された1名(患者No.7)は感染経路が異なる可能性が示唆された。さらに、患者No.7の行動調査では発症日の2日前まで寮に不在であったことも勘案すると、当該患者から検出されたGII.P17-GII.17が集団感染を起こしたかは不明であり、複数の患者から検出されたGII.P7-GII.6が、本事例の胃腸炎集団発生に関与したものと推察された。

本事例の発生月には、県西部の異なる保健所管内の高等学校においても胃腸炎集団事例1例からNoV GIIが検出されており、その遺伝子型は本事例とは異なるGII.Pe-GII.4であった。よって、これら2事例に関連は認められず、県西部ではこの時期に複数の遺伝子型のNoV GIIが流行していたと考えられた。

本事例は、使用するトイレや共同浴場の使用など集団感染と推定される感染経路が存在し、集団胃腸炎患者からリアルタイムPCR法により同一遺伝子群のNoVが検出されたものの、遺伝子型が異なる患者が確認されたことから、複数の感染経路が推定される事例であった。2016年4月1日付けの厚生労働省通知2)により、NoV食中毒調査ではウイルスの遺伝子群(GI、GII)だけでなく、遺伝子型の確認まで求められており、NoVが原因と疑われる食中毒事例や胃腸炎集団事例における遺伝子解析の必要性が改めて認識された。

 

参考文献
  1. Nakamura K, et al., Jpn J Infect Dis 62(5): 394-398, 2009
  2. 厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長通知,「食中毒対策の推進について」,生食監発0401第1号,平成28年4月1日
    http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000120186.pdf

富山県衛生研究所ウイルス部
 稲崎倫子 名古屋真弓 米田哲也 佐賀由美子 板持雅恵 稲畑 良 小渕正次
富山県厚生部健康課
 三井千恵子 新保孝治 加納紅代

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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