国立感染症研究所

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飲食店を原因施設とするKudoa septempunctata による食中毒事例―倉敷市

(IASR Vol. 33 p. 102-103: 2012年4月号)

 

1999(平成11)年以降、瀬戸内海沿岸の中四国地域では、下痢・嘔吐を主症状とする原因不明の有症事例の発生が確認されていた。倉敷市ではこれらの事例に注目し、2008(平成20)年度に倉敷市保健所が事務局となり、瀬戸内海沿岸の府県市保健所等と、「原因不明の食中毒の原因究明研究」についての検討会を立ち上げ、原因物質の究明や対応を協議していた。当初は、地方における散発的な事例と考えられていたが、その後の調査から、全国の都道府県においても発生が報告されていることが、確認された。厚生労働省の調査によると、2009(平成21)年6月~2011(平成23)年3月までに報告された原因不明の有症事例は198件、うち135件はヒラメが推定原因食品とされる事例であった。

その後、厚生労働省から「生食用生鮮食品による病因物質不明有症事例への対応について」(平成23年6月17日食安発0617第3号)および「Kudoa septempunctata の検査法について(暫定版)」(平成23年7月11日食安監発0711第1号)が通知され、暫定検査法が示された。

2011年10月、倉敷市内の飲食店において岡山県内初のヒラメに寄生するK. septempunctata を原因とする食中毒事例が発生した。今回、この事例について、暫定検査法に従いリアルタイムPCR 検査法による遺伝子検査および顕微鏡検査による胞子数計測を実施したので報告する。

事例の概要と検査結果
2011年10月14日、飲食店の営業者から、10月13日の利用者が下痢・嘔吐等の食中毒様症状を呈していると、届出があった。当保健所で調査したところ、10月13日に当該飲食店を利用した1グループ、13名中10名が食中毒様症状を呈しており、有症者は共通してヒラメの活け造りを喫食していた。喫食残品であるヒラメの活け造りについて、暫定検査法に従い、当保健所で検査を実施した。検体は、胴体(検体No.1、No.2)とえら蓋付近(検体No.3、No.4)の2カ所から、各2検体ずつ採取した。DNA抽出にはQIAamp DNA Mini kit(QIAGEN社)を用い、リアルタイムPCRには7500 Real Time PCR System (AppliedBiosystem社)を用いた。

リアルタイムPCR検査法による遺伝子検査および顕微鏡検査の結果は、表1のとおりである。

遺伝子検査において、すべての検体からカットオフ値 1.0×107 Kudoa rDNAコピー数/g以上のコピー数が検出され、平均値は 1.3×1011 Kudoa rDNAコピー数/gであった。顕微鏡検査においても、すべての検体から6~7極嚢を有する胞子を確認し、計算板により算出した胞子数の平均値は、 3.2×107 胞子数/gであった。検体の採取位置によるK. septempunctata 検出量の差異は、ほとんどみられなかったことから、K. septempunctata はヒラメの筋肉中に均一に分布していることが確認された。

また、調理施設のふきとり、食材、従業員便および患者便の細菌検査で、食中毒の原因と考えられる細菌は、検出されなかったこと、過去の原因不明の有症事例に共通する潜伏期間が6時間程度と短時間で、主症状が下痢・嘔吐、発熱であったことから、本事例は、ヒラメを介したK. septempunctata を病因物質とする集団食中毒と断定された。

厚生労働省の通知以後においても、K. septempunctata を病因物質とする食中毒事例が、全国で発生している。生食として提供されることの多いヒラメは、冷凍や加熱の食中毒対策が取りにくいため、生産・流通での対策が必要になってくるものと考えられる。今後、ヒラメの産地その他の情報も含めたK.septempunctata による食中毒事例について注視していく必要がある。

倉敷市保健所衛生検査課微生物検査係
小川芳弘 香川真二 杉村一彦 山口紀子
岡山県環境保健センター細菌科 中嶋 洋

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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