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蚊における日本脳炎ウイルス(JEV)保有状況

(IASR Vol. 38 p.162-164: 2017年8月号)

1.JEVの国内動向調査ならびに保有蚊サーベイランス

日本脳炎ウイルス(JEV)の国内での動向は, 増幅動物であるブタのJEV抗体保有状況1)と患者発生動向調査2)によって概ね把握されている。それによると, 近年の日本国内における日本脳炎患者数は年間10名程度で推移しているが, ブタの抗体価は毎年夏季に上昇し, 依然としてJEVの地域的な蔓延が強く示唆されている。さらに, 国内での主要な媒介蚊であるコガタアカイエカCulex tritaeniorhynchusの発生も毎年広範囲で確認されており, 国内におけるJEVの感染リスクは依然として高いと考えられる。媒介蚊調査と捕集蚊からのデングウイルス(DENV)を含むフラビウイルスの検出は, デング熱の国内感染例が発生して以降, 多くの自治体で実施されているが, JEV分離株の情報はあまり得られていない。我々は, 日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨が差し控えられた2005年から継続して, 日本各地で捕集したコガタアカイエカを中心とする蚊類からJEVの分離を試み, 分離株の遺伝子解析を行ってきた。また, 2006年からは3年間にわたり, ベトナムにおいて国内と同様のJEV保有状況調査を行った3)。本稿では, 長崎県およびベトナムにおける蚊のJEV保有状況について紹介する。

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