IASR-logo
 

北海道のエキノコックス症診断体制

(IASR Vol. 40 p38-39: 2019年3月号)

1.はじめに

日本, とりわけ北海道で問題となるのは, 主に多包虫Echinococcus multilocularisの感染による多包性エキノコックス症(多包虫症)である。本症は, 4類感染症に分類されており, 診断した医師による届出が義務づけられている。北海道における感染症法施行以前からの患者数は2017年12月末現在で累積747名に達している。近年, ヒトへの感染源となる虫卵を排出する感染キツネは北海道全域に分布している。2001年度以降をみても, 年平均20名の新規患者が発生しており, 決して過去の風土病ではない。放置すれば死に至ることもあり, 外科的切除が唯一の根治的治療法である本症では早期発見が肝要であるため, 血清診断は身体への負担が小さい検出法として欠かせない。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan