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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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GENETIC ANALYSIS OF NOVEL AVIAN A(H7N9) INFLUENZA VIRUSES ISOLATED FROM PATIENTS IN CHINA, FEBRUARY TO APRIL 2013.

T Kageyama, S Fujisaki, E Takashita, H Xu, S Yamada, Y Uchida, G Neumann, T Saito, Y Kawaoka, M Tashiro

Eurosurveillance, Volume 18, Issue 15, 11 April 2013
Rapid communication

 

新種のインフルエンザA(H7N9)ウイルスは、中国で2013年4月10日の時点で、33人に感染し、9人が死亡した。ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ遺伝子はおそらくユーラシアの鳥インフルエンザウイルス由来、残りの遺伝子が鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに密接に関連している。HAレセプターのヒト型受容体への結合性と、哺乳動物における効率的な複製をおそらく制御しているPB2 RNAポリメラーゼサブユニットにおけるいくつかの特徴的なアミノ酸変化(特にE627K)は、新型ウイルスがパンデミックになる可能性があることを強調するものである。

 

 

遺伝子に関する所見のまとめ

  1. 分子系統樹解析による近縁ウイルスの同定
    • HA遺伝子:A/duck/Zhejiang/12/2011・・・浙江省で2011年分離のLPAI(H7N3)に近縁。
    • NA遺伝子:A/mallard/Czech Rep/13438-29K/2010・・・チェコで2010年分離のLPAI(H11N9)に近縁、A/wild bird/Korea/A14/2011・・・韓国で2011年分離の (H7N9)に近縁。
    • 他6つの内部遺伝子・・・浙江、江蘇、上海の近隣省地域で2011~2012年に鶏から検出されたA(H9N2)に近縁。
    • 以上により、2013年2~3月に中国で検出された新たなインフルエンザA(H7N9)ウイルスは、3種類の鳥インフルエンザウイルスの遺伝子交雑体(リアソータント)と思われる(図)。
  2. 採取検体間の遺伝的差異について
    • 3人の感染者から分離されたウイルス検体の遺伝子配列(A/Shanghai/2/2013, A/Anhui/1/2013, and A/Hangzhou/1/2013 )の間の塩基配列変異は、1%の範囲に収まっていた。一方で、上海における最初の感染例の遺伝子配列(A/Shanghai/1/2013)には、これらと52個の差異が見られた。このことは、後から分離された3例が共有する感染源のウイルスがこれらと非常に近縁であるのに対して、最初の感染者の持っていたウイルスは、これらとは別の感染源に由来することを示唆している。
  3. HA遺伝子について
    • ヒト型レセプター(α2-6型)を認識する(表)。
    • HAの解裂活性化部位には、高病原性鳥ウイルス(H7N7、H5N1)に見られる塩基性アミノ酸の連続配列(全身へのウイルス拡散が可能)は無く、鳥類では低病原性の配列が示唆される(表)。
    • 鳥やブタでは不顕性感染である可能性がある。HAの受容体結合部位(RBS)のアミノ酸配列は人又は鳥型受容体に対する優先順位を決定している(表)。
    • 鳥から分離された2株、および環境からの1検体における3つの変異については、いずれも人型受容体への鳥インフルエンザH5ウイルスとH7ウイルスの結合を高めることができる(表)。
  4. NA遺伝子について
    • 5アミノ酸の欠損がstalk部分に見られる。哺乳動物における病原性の増加に関連している。
    • 人に感染する前に、陸生鳥類で循環していたことを示唆している(表)。
    • 分析したすべてのH7N9ウイルスの配列に基づいて、A/Shanghai/1/2013を除いて、ノイラミニダーゼ阻害剤に感受性があると考えられる(表)。
  5. ポリメラーゼPB2遺伝子について
    • E627K置換あり。哺乳動物における鳥インフルエンザウイルスの効率的な複製に必須である。
    • 2003年のインフルエンザA(H7N7)ウイルスにおける死亡例では見られた変異である(表)。
  6. M遺伝子について
    • イオンチャンネル阻害剤耐性のマーカー遺伝子(S31N)をもつ(表)。
    • 病原性の増加に関与する変異が2ヶ所見つかっている(表)。
  7. NS1遺伝子について
    • C端末のPDZドメイン結合モチーフ欠如は哺乳動物における病原性に関係している可能性がある(表)。

(要約文責:国立感染症研究所感染症疫学センター)

 

表:中国で2013年2~3月にかけて検出された新種の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスにおける複数のアミノ酸の特徴(n=7)

 表3

図:新種のインフルエンザA(H7N9)ウイルス発生の模式図

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Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan