新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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HIV感染におけるクリプトコックス症

(IASR Vol. 36 p. 188-189: 2015年10月号)

1. 日本のHIV感染症に伴うクリプトコックス症(肺以外)の疫学動向
日本では、HIV感染が診断された場合、特にAIDS指標疾患を発症している際には、最初は診療経験の豊富なHIV診療拠点病院へ紹介され、初期治療が開始されていることが多い。そこで、日本におけるHIV関連日和見合併症の実態を把握する目的で、1995年より厚生労働科学研究の中で全国のHIV診療拠点病院を対象としたHIV関連日和見合併症の発生動向調査が継続的に行われており、今日までに20年間のデータが蓄積されている1)

本調査は対象施設に対して調査票を郵送し、回答を返送していただくアンケート形式で年1回実施されており、各施設で前年の1月~12月の間に確定診断されたAIDS指標疾患(23疾患)について、診断根拠と転帰、抗HIV治療(ART)の有無などの情報を収集・集計している。なお、AIDS指標疾患の動向調査であるため、クリプトコックス症については肺クリプトコックス症のみの場合は集計対象とはなっていない。図1にこれまでに累計されたAIDS指標疾患の発生頻度を示した(1995~2013年)。頻度が高いのはニューモシスチス肺炎(37.3%)、サイトメガロウイルス感染症(14.2%)、カンジダ症 (12.6%)であり、クリプトコックス症は全体の2.4%を占めていた。図2にクリプトコックス症の発生数(実数)と致命率の推移を示した。発生数は年ごとにばらつきが大きいが、各年10例前後であり、症例数は横ばいからやや増加している傾向が読み取れる。一方で、転帰には劇的な改善が見られている。これまでの累計193例のクリプトコックス症の地名率は20.7%に達しているが、時系列でみると、2000年以前は50%近かった致命率が、その後に急速に低下傾向となっており、2011年以降は5%未満で推移している。生命予後の改善はクリプトコックス症に限らず、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、結核などの他の主要疾患でも確認されており、ARTの進歩による免疫能の改善と、各医療機関における各種日和見合併症に対するマネジメントの向上が示唆される結果となっている。日和見合併症全数における各疾患の相対頻度の推移を図3に示した。クリプトコックス症は1~4%の間で推移しており、頻度は決して高くないが、減少傾向はみられていない。

2. HIV合併例における診断上の注意点
髄膜炎例では頭痛や発熱、意識障害を呈しうるが、免疫不全を反映して炎症反応に乏しいため、病初期には発熱以外の症状が軽微であり、髄膜刺激症状もみられないことのほうが多い。一方で、死亡例の多くは診断の遅れが関連しており、特に意識障害を呈した症例でみられるため、HIV患者の原因不明の発熱では、常に本疾患の可能性を疑うことが早期診断の観点から重要である。髄膜炎例では血清および髄液のクリプトコックス抗原が99%以上で陽性になるとされており、特異度も高いため診断に非常に有用である。髄液検査では蛋白の増加と糖の減少、リンパ球有意の細胞増多がみられるのが典型的であるが、免疫不全の進行に伴い、これらの炎症反応は極めて軽微な場合もあり得るので、必ず墨汁法による菌体の確認と培養検査を提出する。頻度は少ないが、脳実質に病変を形成することもあり、頭部MRIを施行すべきである。Mettaらは51例のHIV患者のクリプトコックス髄膜炎についてレトロスペクティブに検討を行い、血液培養で65.2%、髄液培養で94.1%、髄液の墨汁法で79.1%が陽性であったと報告している2)

著者(照屋)らの施設では、肺クリプトコックス症は他疾患、特にニューモシスチス肺炎などと合併する形で診断されることが多い(図4)。万一、見逃した場合には、そのまま髄膜炎へと進展するリスクが高いため、ニューモシスチス肺炎などの確定診断例であっても、画像所見で一部性状の異なる陰影を認める場合には、積極的に本症を疑って除外診断を進めていくことが重要である。

 

参考文献
  1. 安岡 彰, 「ART早期化と長期化に伴う日和見感染症への対処に関する研究」, 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業, 平成26年度総括・分担研究報告書
  2. Metta HA, et al., Rev Argent Microbiol 34(3): 117-123, 2002

 

国立国際医療研究センター病院
    エイズ治療・研究開発センター
      病棟医長 照屋勝治
市立大村市民病院
      副院長 安岡 彰
長崎大学病院感染制御研究センター
      助教 塚本美鈴 

 

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan