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過去の分離株がヒトアデノウイルス57型(HAdV57)と判明した1例―大阪府

(IASR Vol. 35 p. 278: 2014年11月号)

2005年6月に採取された検体より分離されたアデノウイルスで、当時は難中和株として、ヘキソン蛋白コード領域の遺伝子配列の解析により6型と同定されたが、今回、国立感染症研究所(感染研)にて再度詳細に遺伝子配列を解析した結果、ヒトアデノウイルス57型であったことが判明したので、その概要を報告する。

検体は、2005年6月に、咽頭結膜熱と診断された女児より採取された咽頭ぬぐい液で、南河内ブロックの病院から提出された。検体情報として、38.0℃以上の発熱・上気道炎症状があり、アデノウイルス迅速診断キット(チェックアデノ)は陽性との記録があった。分離株は、HEp-2細胞に接種後、1週間ごとに継代し、3代目で分離された。

分離培養上清についてアデノウイルス中和用抗血清(デンカ生研)を用いて中和試験を行ったが、アデノウイルス1型、2型、6型、37型のいずれか判別できなかった。そこで、当時のヘキソン領域遺伝子配列の解析により6型と同定された。

今回、感染研にて再度詳細に遺伝子配列を解析した結果、ヒトアデノウイルス57型であったことが判明した。ペントン、ヘキソン、ファイバーをコードする領域がそれぞれ1型、57型、6型であるので、PHF表記法によるとP1H57F6であった。

HAdV57はアデノウイルスC群に属し、近年新たに分類されたウイルスである。その検出報告は非常に少ないため、病原性等は不明である。

アデノウイルス6型のヘキソン遺伝子が組み換えられているため、抗血清を用いた中和試験では、不完全ながらもアデノウイルス6型抗血清にて細胞変性が抑制されるという報告がある1)。本邦では島根県にて2014年に分離された報告があり2)、以前に分離され6型と同定された分離株にHAdV57が混在している可能性があることが指摘されていた。

今回の解析にて、少なくとも2005年には本邦にHAdV57が存在していたことが明らかとなった。同様の株を解析することで、本邦への導入時期や病原性など、詳細が明らかとなると考えられる。

 
参考文献
  1. Alexander NL et al., J Gen Virol 89: 380-388, 2008
  2. 辰巳智香, 他, IASR 35: 222-223, 2014
 
大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課
  森川佐依子 廣井 聡 加瀬哲男   
国立感染症研究所感染症疫学センター    
  花岡 希 小長谷昌未 大石和徳 藤本嗣人
 

 

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