新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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糞便からのザルコシスティス検出法の開発

(IASR Vol. 33 p. 159-160: 2012年6月号)

 

馬肉生食によるザルコシスティス食中毒の検査は、現在馬肉(残品)を検体とする検査法が通知されている状況であり、馬肉内の同寄生虫を証明することがその目的となっている。一方、多くの他の病原体による食中毒事例をみても、残品が必ずしも検体として入手できるわけではなく、患者検体(便、吐物)からの病原体検出が必要となる場合が多い。本食中毒事例においても今後同様の対応が求められることを想定して、実験的に便検体からザルコシスティスを検出する方法を考案した。

方 法
ザルコシスティス食中毒事例とは無関係の下痢便試料に、通知法の遺伝子検査で使用するスタンダードDNAをスパイクし実験的に便を汚染し、DNA抽出精製、PCRによる遺伝子増幅を行った。

1.糞便検体へのDNA添加とDNA抽出
50mgの糞便を1.5mlエッペンドルフチューブに取り、TE溶液300μlを加え、ヴォルテックスでよく攪拌し、卓上遠心機で10秒間遠心分離した上清200μlをDNA抽出用試料とする。ここで通知法の遺伝子検査法で使用するスタンダードDNAを添加し10倍希釈系列を作製した。市販のQIAGEN-QIAamp DNA Mini Kitを用いて手順書に従いDNA抽出し、AEバッファー100μlに溶出した。

2.PCRによるSarcocystis  DNAの増幅
糞便中に含まれるSarcocystis  DNAは極微量であると想定されることから、本試験では感度を上げるためNested-PCRを適用した。

1)1st-PCR 
プライマーはザルコシスト暫定試験通知法に記載されている18SF1: 5'-GGATAACCGTGGTAATTCTATGならびに18SR11: 5'-TCCTATGTCTGGACCTGGTGAGを用いた。DNAポリメラーゼとしてTAKARAのEx Taq HotStart ver.を用い、上記テンプレートDNAは1μl加え反応液量は25μlとした。温度反応条件は、95℃・5分間の熱変性後、95℃・30秒間、56℃・30秒間、72℃・1分間を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返した。

2)Nested(2nd)-PCR
プライマーはHRS1F:5'-GATACAGAACCAATAGGGACATCACならびにHRS3R: 5'-ACTACCGTCGAAAGCTGATAGGを用いた。本プライマーは馬肉より検出されるSarcocystis fayeri の18S rRNA遺伝子解析より設計されたもので、S. fayeri 特異的なDNA増幅(およそ140bp)を行うプライマーである。PCR反応液の調整は用いるプライマーを変更したのみで、必要な試薬類の量は1st-PCRの場合と同様である。テンプレートDNAには1st-PCRの産物を1μl用いた。温度反応条件は、95℃・5分間の熱変性後、95℃・10秒間、60℃・30秒間、72℃・10秒間を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返した2%アガロース/TBEバッファーで産物を電気泳動し、エチジウムブロマイド染色によりDNAバンドの確認を行った。

結果と考察
上記の方法から、1st-PCRでは106コピー/200μlが検出限界であったが、nested-PCRでは103コピー/200μlの条件でDNA増幅が確認できた(図1)。添加試験の感度として103コピー/200μlが得られたが、これまでの研究よりブラディゾイト1個当たり10~20コピーの18S rDNAが存在すると算定されるので、50~100ブラディゾイト分のDNAが200μl中に存在した場合、それをDNAとして検出できることになる。実際の食中毒事例検体中の原虫量に関してはデータがない状態なので、検体入手が可能な事例において本試験法の実用性を検証していきたい。

 

国立感染症研究所寄生動物部 八木田健司 村上裕子

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