新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

第33回感染研シンポジウム

国立感染症研究所では、第33回感染研シンポジウムを「過去を知り、その先へ!」のテーマのもとに開催いたします。 日時:2024年5月21日(火)    13:00〜17:00 方法:オンライン開催(Zoomウェビナー)   申込み方法: 事前登録が必要となりますので、下記...

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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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麻疹ウイルス遺伝子型D8型が検出されたインドネシア渡航歴のある麻疹事例―川崎市

(IASR Vol. 44 p137-138: 2023年9月号)
 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策としての渡航制限後, わが国における麻疹の届出は激減し, 川崎市においても2020~2022年までの3年間に麻疹の発生届は1件もなかった1)。2023年に4年ぶりに市内の医療機関から届出があり, 輸入麻疹事例と考えられたため概要を報告する。

患者は40歳代の男性で, 1歳時に1回の麻しん含有ワクチン接種歴(母子手帳に記載)があった。発症8日前まで1カ月間インドネシアに滞在していたが, デスクワークのみで麻疹患者との明らかな接触はなかった。帰国後8日目(第0病日)に発熱, 鼻汁で発症し, 第4病日に咳嗽が, 第5病日に結膜充血, 眼痛, 視力低下, 発疹が出現したため, 救急車で総合病院を受診した。第6病日には発熱, 咳嗽, 結膜充血はいずれも消失し, 第8病日には鼻汁も消失した。同日に受診したクリニックで麻疹特異的IgM抗体検査を実施され, 第15病日の再診時にIgM抗体価が11.33であったことから, 麻疹の発生届が提出された。川崎市健康安全研究所において, 第16病日採取の尿検体を用いてreal-time RT-PCR法により麻疹ウイルスN遺伝子を検出し, さらにconventional RT-PCR法によるH遺伝子およびN遺伝子の増幅ならびにDNAシーケンスの結果, D8型であることが確認された()。

患者は帰国後は, リモートワークが中心で, 自宅や医療機関以外に接触者はいなかった。同居家族3名のうち1名は2回, 2名は1回の麻しん含有ワクチン接種歴があり, 家庭内での二次感染はなく, 感染可能期間内に受診したクリニック2カ所および総合病院1カ所に対しては, 管轄の保健所支所より接触者の特定およびスタッフのワクチン接種歴・罹患歴の確認, 21日間の健康観察を依頼したが, 周囲への感染は確認されなかった。第5病日の搬送時に接触した救急隊員は全員2回のワクチン接種歴があり, 接触後21日目まで発症は確認されず健康観察を終了した。

COVID-19が発生して以来, 麻疹の報告数は世界的にも減少していたが, 2022年以降, 世界保健機関(WHO)の南東アジア地域や東地中海地域, アフリカ地域を中心に再び増加している2)。WHOのデータによると, 2022年11月~2023年4月までの6カ月間に5,000件以上の報告があった国は, インド73,536件, イエメン19,312件, パキスタン6,426件, インドネシア5,175件であった2)。2022年5月~2023年4月までに世界各国で検出された遺伝子型はB3型およびD8型であり, インドネシアではB3型も検出されているものの, D8型が多くを占めていた。

今回の事例は, 渡航時期や潜伏期間, 国内での発生状況, 遺伝子型等から総合的に判断し, インドネシアからの輸入麻疹事例と考えられたが, 接触者が限定されていたことや, 家族にワクチン接種歴があったことなどから, 幸いにも二次感染はなかった。インドネシアにおける2023年の麻疹確定例(2023年4月28日報告)の内訳をみると, 年齢が判明している者のうち95%が1~14歳までの小児であり, 確定例の75%は麻しん含有ワクチンの接種歴がなかったことから, 免疫の不十分な集団での感染拡大が, 現在のアウトブレイクの主な特徴とされている3)。国内でも麻しんを含めた小児の定期接種率の低下が問題になっており, 麻しん含有ワクチンの2回接種は確実に行う必要がある。COVID-19の水際対策の終了とともに海外からの旅行者も増加しており, 今後は国内に麻疹が持ち込まれる機会も増加すると考えられる。ワクチン接種率の早急な回復に加え, 発生時に迅速な対応ができるように疫学調査や検査の手順等に関しても, 今一度周知する必要があると考えている。

謝辞: 調査にご協力いただいた川崎市内の医療機関および関係機関の皆様に深謝いたします。

 

参考文献
  1. 川崎市感染症情報発信システム, 感染症発生動向調査-全数把握疾患集計
    https://kidss.city.kawasaki.jp/ja/nesid/report?action=notifiableReport&chart=1
  2. WHO, Provisional monthly measles and rubella data, Global Measles and Rubella Monthly Update
    https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/immunization-analysis-and-insights/surveillance/monitoring/provisional-monthly-measles-and-rubella-data
  3. WHO, Measles-Indonesia
    https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2023-DON462
川崎市健康安全研究所      
 三﨑貴子 若菜愛澄 夏井航平 荒井千寛 畠山理沙 佐々木国玄
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