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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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麻疹風疹検査の外部精度管理について

(IASR Vol. 45 p53-54: 2024年4月号)
 

厚生労働省外部精度管理事業は, 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」1)に基づき感染症の検査を行う公的検査施設(地方衛生研究所および保健所等)を対象として, 外部精度評価の機会を提供し, 調査結果の評価を行うことで精度保証の取り組みを促進し, 検査の信頼性を確保することを目的としている。2023(令和5)年度の本事業の一部として, 麻疹および風疹ウイルスの核酸検出検査の精度管理を国立感染症研究所(感染研)が受託し実施した。本稿ではその結果を概説した後, 本事業から明らかとなった麻疹および風疹ウイルスの核酸検出検査における注意点について解説する。

概 要

令和5年度の外部精度管理事業では, 麻疹・風疹ウイルスの核酸検出検査を課題にして79施設を対象に実施された。に示した5検体から構成される盲検化検体パネルについて, 各施設が実際に用いている手法にしたがって, 麻疹および風疹疑い検体の検査を行うことを課題とした。

一部の施設で補助的にコンベンショナルRT-PCR法による検査も実施されていたが, 全79施設でreal-time RT-PCR法が用いられていた。うち32施設では, 2022(令和4)年10月に病原体検出マニュアルに追加されたマルチプレックス法による麻疹・風疹同時検査法によって実施されていた2-4)

各ウイルスの陽性および陰性の判定について, 全5検体で正答であったのは, 79施設中76施設(96.2%)であった。誤答があった3施設(3.8%)のうち2施設においては, 風疹ウイルス陽性1検体を「陰性」と回答していた。他の1施設においては, 麻疹ウイルス陽性2検体を「麻疹ウイルス陰性・風疹ウイルス陽性」と回答していた()。

麻疹および風疹ウイルスの核酸検出検査の注意点

(1)適正な陽性コントロールの使用

病原体検出マニュアルでは, 検出感度を標準化するために, 感染研より配布された参照RNAを陽性コントロールとして1反応当たり5または50コピーで使用することを推奨している2-4)。しかし, 2施設では, それよりも高濃度の参照RNAを陽性コントロールとして使用していた。うち1施設では風疹ウイルス陽性1検体を「陰性」と誤答していた。

(2)検査試薬の重要性

2施設において, 風疹ワクチン株であるKRTは問題なく「風疹ウイルス陽性」と判定できていた一方で, 野外分離株であるRVi/Tokyo.JPN/00.13/[1E]を「陰性」と誤答していた()。うち1施設についてフォローアップを実施したところ, 当該施設で使用していたプライマーあるいはプローブに問題があったことが判明した。詳細は不明ではあるが, プライマー/プローブ合成時の初期不良もしくは購入後の保存条件の問題により, 検査感度が低下していたことが推測された。本事業を通じて, プライマーやプローブのロットなどの違いによって検査の判定に影響を及ぼす可能性があることが判明した事例であった。

(3)マルチプレックス法の結果の解釈

麻疹ウイルス陽性2検体を「麻疹ウイルス陰性・風疹ウイルス陽性」として誤答した施設では, 麻疹・風疹同時検査法にて検査が実施されていた。マルチプレックス法で検査を実施した場合は, 各病原体とプローブの蛍光色素の対応を慎重に確認したうえで判定する必要がある。

(4)検査結果の報告

本事業では, 回答を専用のwebページに入力する形で実施したが, 1施設において検体IDの入力ミスが認められた。また別の1施設においては, 結果入力後の確定処理が実施されていなかった。実際の検査において, 検査結果が正しくても報告に誤りがあると, その後の対応に大きな影響を及ぼすこととなるので, 入力内容の確認は徹底されるべきである。

まとめ

多くの施設において適切に検査が行われ, 正しい判定がなされていた。一方で, 誤答が認められた施設の結果から, 検査における問題点が明らかとなった。まず, 高濃度の陽性コントロールを使用した場合, 検出限界が不明確になることである。検査の検出感度を担保するため, 規定濃度の陽性コントロールを使用することが推奨される。また, 使用している試薬類のロットなどの差で検出の可否に差が出る事例が認められた。このような問題には, 施設内での精度管理だけでは気付けない可能性があるので, 本事業のような外部精度管理の機会の重要性が明らかとなった。今後も本事業を続けていくことが, 検査の信頼性の向上およびその維持において重要であると考えられた。

 

参考文献
  1. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〔平成十(1998)年法律第百十四号〕
  2. 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル麻疹(第4版)
    https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/Measles20221003.pdf
  3. 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル風疹(第5.0版)
    https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/Rubella20221003.pdf
  4. 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル<麻疹・風疹同時検査法>(第1版)
    https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/MR-multiplex20221003.pdf
国立感染症研究所ウイルス第三部 
 中津祐一郎 森 嘉生 大槻紀之 水越文徳 梁 明秀

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