国立感染症研究所
2021年5月10日時点
(掲載日:2021/5/12)

要約

日本国内で報告されたVOC-202012/01症例の重症度に関して、サーベイランスデータを用いて暫定的評価を行った。VOC-202012/01群はN501Y-PCR検査陰性群と比べて届出時に重症であるリスクは1.40 倍(95%信頼区間:1.11-1.75)であった。一方、非VOC-202012/01群との比較では3月31日以前は1.22倍(1.00-1.48)、4月1日以降は0.88倍(0.79-0.98)であった。この違いは非VOC-202012/01群に含まれる未診断のVOC-202012/01症例が占める割合が経時的に上昇したことが理由であると考えられた。探索的に行った分析では40-64歳のリスク比が高かった。データの制約から本報告の結果のみからVOC-202012/01症例の重症度について結論することは困難であることから、引き続き海外の報告を参照するとともに、国内臨床データを用いた検証が必要である。

2021年5月12日
国立感染症研究所
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国立感染症研究所は、第1報で注目すべき変異株(VOI)として位置付けていたPANGO系統でB.1.617に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえたリスク評価に基づき、懸念すべき変異株(VOC)として位置づけ、監視体制の強化を行う。

B.1.617系統について

  • B. 1.617 系統は、スパイクタンパク質にL452R、D614G、P681R変異を共通に有している。さらに、同系統はB.1.617.1〜3に分類される (表1)。
  • 2021年4月1日、英国はB.1.617.1系統を「調査中の変異株(Variant Under Investigation; VUI)」”VUI-21APR-01”として位置付けた。同年5月6日には、B.1.617.2系統を”VOC-21APR-02”と位置付けた。B.1.617.3系統は同年4月27日に”VUI-21APR-03”と位置付けている(1,2)。
  • ECDCはB.1.617系統をVOIとして位置付けている(3)。
  • WHOは、同年4月27日にWHOが注目すべき変異株(VOI)に分類した。同年5月11日にB.1.617系統を (VOC)に分類した(4)。
表1 SARS-CoV-2 B.1.617系統の概要
covid19 44 tbl1
 

2021年4月26日
国立感染症研究所

B.1.617系統について

  • 2021年4月20日、国内の患者から得られた新型コロナウイルス陽性検体から、新型コロナウイルスB.1.617系統が、国内例としては初めて検出された。
  • 検疫では、2021年1月9日より、全ての入国者に対し、入国時に新型コロナウイルス検査が行われている。すべての陽性検体について国立感染症研究所でゲノム解析を実施しているが、現在まで20例がB.1.617系統と判定されている。
  • B. 1.617 系統は、スパイクプロテインに主にL452R、E484Q変異を有するものと、L452R変異を有し、E484に変異を有さないものがある。2020年12月初旬に最初の配列がGISAIDにインドから登録され、英国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、米国、ドイツ、カナダなどでも確認されている。
    • 国内例はL452R、E484Q変異をともに有していた。
    • 検疫例では、8例が両変異を有し、11例はL452R変異のみ、1例は両変異の有無については確認できなかった。
  • 現在インドで患者が急増しており、B.1.617系統の登録数の割合も増加傾向にある(1)。本系統の症例報告や疫学的知見に関する報告はなく、インド政府は、本系統が患者の急増に寄与しているのかについては現時点では述べていない。
  • 査読前論文の報告では、インドで使用されているBharat Biotech 社製の新型コロナウイルスワクチンBBV152(商品名 COVAXIN)の接種後血清でB.1.617変異株は中和されたが、中和抗体価はワクチン株やB.1.1.7系統変異株に対する抗体価に比べて有意に低下していた(2)。
  • 英国では、2021年4月14日に同系統が77症例報告され、VUI-21APR-01と位置付けられた。4月21日時点では、132例が報告されている(3)。4月22日のイングランド公衆衛生庁のレポートでは、B.1.617から派生したB.1.617.1系統(L452R, E484Q変異を共に有する系統)をVUI-21APR-01と位置付けている。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan