国立感染症研究所

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<速報>ベトナム渡航者からの麻疹ウイルス遺伝子H1型の検出―愛知県

(掲載日 2014/6/10)  (IASR Vol. 35 p. 177-178: 2014年7月号)

2014年5月28日現在、全国の麻疹患者累積報告数(第1週~21週)は既に343例に達しており、2012年と2013年の年間報告数をすでに上回っている1)。これらの多くはフィリピンからの輸入麻疹もしくは関連事例で、遺伝子型は主にB3型である。愛知県(名古屋市を除く)では2014年1~5月までに12例の検体から麻疹ウイルス遺伝子を検出し、その内訳はB3型が10例とH1型が2例だった。B3型10例のうち3例にはフィリピンへの渡航歴があった。H1型の2例はベトナムから帰国した患者とその家族であったため、ウイルス遺伝子検査およびウイルス分離の概要を報告する。

患者1:39歳男性、麻疹含有ワクチン(MCV)接種歴なし。前月より滞在していたベトナムから帰国した5月6日に発熱、5月9日に発疹出現。5月12日に検体採取。

患者2:1歳男児、MCV接種歴なし。患者1の同居家族。5月17日に発熱し、5月20日発疹出現およびコプリック斑陽性。5月17日と5月20日に検体採取。

患者1と2より採取された血液(全血)、尿、咽頭ぬぐい液を検体として、RT-nested PCR法による麻疹ウイルス遺伝子検出およびVero/hSLAM細胞を用いたウイルス分離を試みた。PCRの結果、すべての検体より麻疹ウイルスNおよびH遺伝子が増幅され、N遺伝子増幅産物の塩基配列を決定した。N遺伝子の部分塩基配列(456bp)は患者1と2で同一であり、系統樹解析の結果、H1型に分類された()。この塩基配列は2013年ベトナムから報告された配列Mvs/Lao Cai.VNM/28.13(450bp)と100%相同であったが、2013年2月と3月に本県で決定された中国からの輸入症例由来H1型とは異なっていた()。また、患者1の1検体(尿)、患者2の5月17日に採取された尿検体を除く5検体の計6検体より麻疹ウイルスが分離された。

4月20日現在、世界保健機関西太平洋地域からの2014年累積確定麻疹患者数は中国、フィリピン、ベトナムの順に多く、ベトナムからは936人の報告がある2)。遺伝子型をみると、中国はH1型、フィリピンはB3型が多いが、ベトナムからはD8型、B3型、H1型が報告されている2)。2012年以降国内からは、福島県による台湾からの輸入例を発端としたアウトブレイク3)や千葉県(中国渡航歴)・東京都(渡航歴なし)4)、大阪府(中国渡航歴)5)の散発例にH1型の報告がある。さらに2014年3月には静岡県でベトナムからの輸入例も報告されている6)。今回本県で検出されたH1型は以前国内で報告された中国輸入例などと異なる塩基配列であること、ベトナムから帰国した日に発症していることからベトナムからの輸入麻疹と考えられる。

本県で2014年に海外渡航歴を有した麻疹患者4名のうち3名はMCV接種歴なし、1名は不明であった。2013年12月以降、本県のみならず全国でフィリピンやベトナムなど東南アジアで麻疹ウイルスに感染した人による輸入麻疹のリスクが高まっており、今後も輸入麻疹への備えが必要である。2015年の麻疹排除に向けて輸入麻疹との関連や感染経路の特定に有用な分子疫学的解析の重要性が、ますます高まると思われる。

 
参考文献
  1. 感染症発生動向調査:麻しん累積報告数(6月4日アクセス)
    https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/measles/measles2014/meas14-21.pdf
  2. WHO Western Pacific Region Office (WPRO), Measles-Rubella Bulletin Vol. 8 Issue 4 (April 2014)
    http://www.wpro.who.int/immunization/documents/MRBulletinVol8Issue04.pdf
  3. IASR 33: 242-244, 2012
  4. IASR 麻疹ウイルス分離検出状況2012年
    http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/2084-measles/idsc/iasr-measles/3245-iasr-measles-130207.html
  5. IASR 麻疹ウイルス分離検出状況2013年
    http://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/iasr-measles-v/2014v/20140428iasr/IASR-2013.gif
  6. IASR 麻疹ウイルス分離検出状況2014年(5月27日アクセス)
    http://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/iasr-measles-v/2014v/20140428iasr/IASR-2014.gif


愛知県衛生研究所  
  安井善宏 尾内彩乃 伊藤 雅 安達啓一 中村範子 廣瀬絵美  小林慎一  山下照夫 
  皆川洋子
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最終更新日 2016年7月01日(金曜)15:27

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