国立感染症研究所

 logo

ノロウイルスGII/4による集団食中毒事例―沖縄県

(IASR Vol. 33 p. 334-335: 2012年12月号)

 

2012年10月に沖縄県沖縄本島内の飲食店において、ノロウイルス(NoV) GIIを原因とする集団食中毒事例が発生したので、その概要を報告する。

2012年10月9日、県内医療機関より、食中毒疑いの患者がいるとの通報が沖縄県中部保健所にあった。患者は10月7日18~21時に沖縄本島内飲食店で子供の誕生日会を行い、その後10月9日1時頃から吐き気、嘔吐、下痢等を発症したとのことであった。また、この誕生日会の参加者複数名も同様の症状を呈していることも通報された。

保健所の疫学調査の結果、誕生日会に参加した喫食者27名中17名が10月8日6時~10月10日1時の間に発症していた(発症率63%)。沖縄県衛生環境研究所において、有症者17名中13名および従業員4名についてリアルタイムPCR法によるNoV遺伝子の検出を実施したところ、有症者12名(92%)、従業員4名(100%)からNoV GIIが検出された。そのうち有症者6名および従業員2名から得たcDNAについてNoVカプシド領域を標的としたプライマーG2SKF/G2SKRを用いPCRを行った後、PCR産物(302bp)の塩基配列をダイレクトシークエンス法により決定し、系統樹解析を実施したところ、検出NoVはGII/4に遺伝子型別された。DDBJのBLAST検索では、Norovirus_Hu/GII.4/Sydney/NSW0514/2012/AU (JX459908)と最も高い相同性を示した。有症者6名および従業員1名に由来するNoVの塩基配列は完全に一致し、他の従業員由来株はそれらと1塩基の変異がみられた。

本事例は、有症者からのNoV検出率が高いこと、有症者全員に共通する食事が当該施設の食事のみであること、誕生日会には参加していないが、当該施設で調理された食事を持ち帰り弁当として自宅で食べた1名も発症していること、喫食後24~47時間に発症のピークがみられること、および手洗い後に手拭タオルを共用するなど、従業者の手洗いが適切に行われていなかったことから、上記の検査結果と合わせて、当該施設を原因施設とする食中毒であると断定された。

今回検出されたNoV GII/4と近縁な株は、2012年3月の久米島での有症苦情事例、2012年9~10月の沖縄本島での有症苦情事例4件からも検出されている。これらの株は2012年1~5月に北海道、大阪市、新潟県、その後、8月以降に大阪市、新潟県、東京都、千葉市、広島市、島根県、大分県において検出、報告されている新たなGII/4変異株に近縁である(本号13ページ参照)。一方、2012年10月に宮古島で発生した有症苦情事例から検出されたNoVは、遺伝子型はGII/4であるが、これらとは異なりNorovirus_Hu/GII.4/AlbertaEI425/2008/CA (JX445162)と最も高い相同性を示した。沖縄県内の今後のNoVの遺伝子型動向が注目される。

 

沖縄県衛生環境研究所衛生科学班
仁平 稔 高良武俊 岡野 祥 喜屋武向子 平良勝也 久高 潤
沖縄県中部保健所生活衛生班
崎枝央輝 細田千花 富永正哉
国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部
野田 衛

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version