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風疹とは

(2013年05月07日改訂) 風疹(rubella)は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風疹と...

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先天性風疹症候群とは

 免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがある。

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風疹・先天性風疹症候群 2018年1月現在

(IASR Vol. 39 p29-31: 2018年3月号)

風疹は風疹ウイルスによる急性感染症で, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を3主徴とする。一般的に症状は軽症であるが, まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症を発症する。感受性のある妊婦に風疹ウイルスが感染すると, 胎内で児に伝播することがあり, 特に妊娠20週頃までの母体への感染において, 心疾患, 白内障, 難聴, 低出生体重, 血小板減少性紫斑病, 精神運動発達遅滞等の様々な症状を示す先天性風疹症候群(CRS)の児が出生する可能性がある(5ページ)。風疹およびCRSの発生予防には安全性および有効性の高いワクチンが存在する。

世界保健機関(WHO)等により, 麻疹排除とともに風疹排除を加速させる活動が進められている。2012年第65回世界保健総会で採択された「世界ワクチン行動計画2011-2020(Global Vaccine Action Plan 2011-2020)」では, 2020年までに少なくともWHO5地域において麻疹および風疹の排除達成を目標として掲げている。厚生労働省は「風しんに関する特定感染症予防指針」(以下「予防指針」)(2014年3月28日厚生労働省告示第122号)を策定し, 本邦において早期にCRSの発生をなくすとともに2020年度までに風疹排除を達成することを目標とした施策の方向性を示した。さらに2017年12月に一部改正された予防指針では, 2018年1月1日からは, ①風疹診断後直ちに届出を行うこと, ②風疹患者が1例でも発生した場合には積極的疫学調査を行うこと, ③原則として全例にウイルス遺伝子検査を行うことが求められるようになった(3ページ)。

感染症発生動向調査:風疹は全数把握対象の5類感染症である(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-02.html/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-02.html)。2012年および2013年には全国流行が発生し, それぞれ2,386例ならびに14,344例の患者が報告された(図1下)。その後報告数は減少し, 2014年は319例, 2015年は163例, 2016年は126例, 2017年は91例であった(図1左上)。

風疹患者の性別をみると, 男性が2013年では77%であったが, 2014~2017年では58~66%であった(図1左上)。年齢群別では, 2013年は成人が男性患者の90%, 女性患者の78%を占めた(図2)。男性は20~40代, 女性は20代に多かった。2017年は女性患者の約半数である16例が20~30代であった。

2013年以降の風疹患者の予防接種歴は, 接種歴なしが19~30%(定期接種の機会の無い0歳は全体の1~7%), 接種1回が5~19%, 接種2回が1~9%, 接種歴不明が48~65%であった(図3)。

CRSも感染症法に基づく全数把握の5類感染症である(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-10.html)。2012~2013年の全国流行に関連して2012~2014年に45例のCRS患者報告があり, 調査時点の致命率は24%であった(5ページ)。2018年2月1日現在, 2015年以降の報告はない。

風疹およびCRSの検査診断の現状:2013~2017年に感染症発生動向調査に報告された風疹症例のうち, 検査診断例として報告されたものの割合は63~78%であった(図4)。一方, 2014年4月1日~2016年12月31日までに報告された検査診断例では, 風疹特異的IgM検出が最も多く (72%), 次いでPCRによる風疹ウイルス検出(23%)であった(重複あり)(6ページ)。風疹ウイルス遺伝子は, 咽頭ぬぐい液, 血液, 尿からの検出が推奨されている。発疹出現後早期に検出率が高く, 7日目頃まで検出できる(7ページ)。一方, IgM検査は発疹出現後0~3日目までは抗体価の十分な上昇が得られないことがあり, 風疹の診断を確定するためには4日目以降, できれば5日目以降の検体による検査が望ましい(9ページ)。予防指針の改定により, 2018年1月1日以降, 医師は風疹と臨床診断した時点でまず届出を行い, 血清IgM抗体検査等の血清抗体価の測定の実施と, 地方衛生研究所(地衛研)でのウイルス遺伝子検査等の実施のための検体の提出が求められるようになった(3ページ)。

CRSの届出には検査診断が必要である。2012~2014年のCRS患者の検査診断法は, 風疹特異的IgM検出(93%), 次いでPCRによる風疹ウイルス遺伝子検出(82%)の順であった(重複あり)(5ページ)。CRSのIgM検査およびPCR検査で検出感度が高いのは生後6か月頃までであり, 時間経過とともに診断が困難になる。保存臍帯からの風疹ウイルス遺伝子検出は, 出生後時間が経過した後のCRSの検査診断法としての可能性が検討されている(10ページ)。

風疹含有ワクチンの定期予防接種率:2006年度以降, 1歳児(第1期)および小学校就学前1年間の児(第2期)を対象に, 麻疹風疹混合ワクチンを原則とした2回の定期接種が行われている。2016年度風疹含有ワクチンの接種率は第1期97.2%, 第2期93.1%であり, 第1期は95%以上とする目標に達しているが, 第2期は達成に向けてさらなる取り組みが行われているところである(http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/655-measles/idsc/7536-01-2016.html)。

感染症流行予測調査:2017年は全国18都道県を対象に, 5,656例(男性2,886例, 女性2,770例)の健常人の血清中抗風疹赤血球凝集抑制(HI)抗体価の測定が行われた(図5)。HI抗体価1:8以上の抗体保有率について, 男性では30代後半~50代前半で80%前後の抗体保有率であり, 同年代女性と比較して明らかに低かった。1962~1978年度生まれの男性(調査時39~55歳)の抗体保有率は, 2008~2017年度の10年間で約80%と変化が無く, 多くの感受性者が残されている(11ページ)。

WHO西太平洋地域(WPR)の取り組み:日本が属するWPRでは風疹排除を達成することを目標に掲げている。ほとんどの国と地域で風疹含有ワクチンが導入され, 小児患者は顕著に減少してきたが, 成人層での流行が報告されている国がある。なお, CRSのサーベイランス制度が未整備の国もある(16ページ)。

今後の対策:早期にCRSの発生をなくし, 2020年度までに風疹排除を達成するためには, 1)2回の定期予防接種率をそれぞれ95%以上に維持すること, 2)思春期以降妊娠出産年齢の女性, 成人男性, なかでも妊婦の周囲の男性, 流行国への渡航者, 医療関係者などに風疹含有ワクチンを受けることを推奨し, 接種を受けやすい環境を構築すること, 3)風疹患者を早期発見し, 適切に伝播を封じ込めること, 4)積極的に風疹ウイルスの遺伝子解析を行い, ウイルスの伝播経路を明らかにすること, などが求められる。

2012~2013年に発生した国内流行の主体は成人男性であり, 職場での流行が目立った。再び同じような流行を繰り返さないためには, 成人男性に多く残されている感受性者を減らすことが重要である。さらには職場における対策や風疹流行国への渡航に関する対策も重要である。東京都では2015年10月から企業を対象に, 風疹予防対策など感染症対策を支援する取り組みを立ち上げている(13ページ)。“風疹ゼロ” プロジェクトでは, 2月4日を「風疹ゼロの日」 として啓発活動を行っている(15ページ)。これらの風疹対策には, 職場, 医療関係者, 保健所, 地衛研等の関係各所の連携が不可欠である。

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