国立感染症研究所

2023年6月23日

国立感染症研究所

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<一般の方向け>

問1.オズウイルスとはなんですか。感染するとどのような病気になりますか?

答1. 2018年に新たに分離・同定されたウイルスです。感染した場合、どのような症状がでるかについてはまだ詳しいことはわかっていません。研究によると、本ウイルスに過去に感染したことを示す抗体を持っているヒトもいることがわかっているので、感染に気づかないもしくは軽症な場合もあると考えられます。

 

問2.オズウイルス感染症は世界のどこで発生していますか?

答2. これまで世界でオズウイルス感染症を発症した報告はなく、本邦で2023年6月に報告された2022年に発症した症例が初めての報告です(IASR速報)。

 

問3.オズウイルスにはどのようにして感染するのですか?

答3. オズウイルスは国内のマダニから見つかっているので、ウイルスを保有しているマダニに刺されることにより感染する可能性が考えられますが、感染ルートに関する十分な知見はまだ得られていません。

 

問4.マダニは、屋内にいるダニとは違うのですか?

答4. マダニと、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するダニとでは種類が異なります。マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型(吸血前3~4mm)のダニで、主に森林や草地等の屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。日本でも全国的に分布しています。

 

問5.どのようなマダニがオズウイルスを保有しているのですか?

答5. 国内では、これまでタカサゴキララマダニというマダニからウイルスが見つかっています。

 

問6.オズウイルス感染症にかからないために、どのように予防すればよいですか?

答6. 現時点では、感染経路は不明ですが、ウイルスを持ったマダニに刺されることにより感染する可能性が考えられることから、マダニに刺されないようにすることが重要です。特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては注意してください。オズウイルス感染症だけではなく、国内で毎年多くの報告例がある、つつが虫病や日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大事です。DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫除け剤の中には、皮膚に直接塗布するものや服の上から用いるものがあり、補助的な効果があると言われています。また、屋外活動後はマダニに刺咬されていないか確認して下さい(参考ウェブサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html)。
吸血中のマダニに気が付いた際は、無理に引き抜こうとせずに、医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。また、マダニに刺された後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合はすみやかに医療機関で診察を受けて下さい。 その際、マダニに刺されたことを医師に説明して下さい。

 

問7.国内で患者が報告された地域は特に感染のリスクが高いのですか?

答7. 現時点では、詳細な感染経路は不明ですが、オズウイルスを媒介すると考えられるマダニは主に関東以西の全国に分布しており、今回患者が報告された地域以外のマダニからオズウイルスが検出されたことが報告されています。また、野生動物の血清抗体調査で今回患者が報告された地域以外からオズウイルスの感染歴があると考えられる野生動物が確認されていることから、今回患者が報告された地域が他の地域と比較して感染のリスクが高いというわけではありません。

 

問8.動物はマダニに刺されてオズウイルスに感染するのですか?

答8. 一般に、マダニは野外でヒトを含む多くの種類の動物を吸血することが知られています。国内の野生動物(サル、イノシシ、シカ)を調査したところ、オズウイルスへの感染が示唆される動物もいることがわかっています。

 

 

<医療従事者等の専門家向け>

問1.オズウイルスはどのようなウイルスですか?

答1. オズウイルスは、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属する、6分節一本鎖マイナス鎖RNAを有するエンベロープウイルスです。オルソミクソウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、消毒用アルコールなどで急速に失活します。

 

問2.潜伏期間はどのくらいですか?どのような症状が出ますか?

答2. ヒトにおける感染症例の報告は1例のみであり、潜伏期間や特徴的な症状はまだわかっていません。症例の詳細はIASRの報告をご覧ください(IASR速報)。

 

問3.検査所見の特徴はどのようなものですか?

答3. ヒトにおける感染症例の報告は1例のみであり、一般的なことはまだわかっていません。症例の詳細はIASRの報告をご覧ください(IASR速報)。

 

問4.どのようにして診断すればよいですか?

答4. 感染経路について現時点で確立された知見はありませんが、マダニに刺された後に、原因不明の発熱等体調不良が生じた時に鑑別疾患の一つとして挙げることが考えられます。また、IASRに報告された1例ではウイルス性心筋炎がみられましたが、特徴的な症状や心筋炎の発生頻度などはわかっていません。確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。なお、患者がマダニに刺されたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も考えられます。

 

問5.治療方法はありますか?

答5. 現時点では有効な治療薬に関する知見はなく、対症療法のみとなります。

 

問6.患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は何ですか?

答6. 患者の血液や体液にはウイルスが存在する可能性があるため、標準予防策を遵守することが重要です。

 

問7.検査方法等、技術的な内容の相談窓口を教えてください。

答7. 国立感染症研究所感染病理部 pathology[アットマーク]nih.go.jpにお問い合わせください。
*[アットマーク]を@に置き換えて送信してください。

 

 

関連項目

オズウイルス感染症とは

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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