(2015年10月23日掲載)
エンテロウイルスD68(EV-D68)感染症の病態や国内外の発生状況、検査診断方法、治療・予防等についてのQ&Aをまとめました。下記のリンクからPDFファイルをダウンロードしてご覧ください。
エンテロウイルスD68(EV-D68)は1962年に初めて分離され、2014年以降の流行ではEV-D68による重篤な呼吸器感染症の増加が注目され、また急性弛緩性麻痺(AFP)または急性弛緩性脊髄炎(AFM)の増加との関連も示唆されている1)。本邦においても喘息様患者や、複数例のAFP・AFMの患者から本ウイルスが検出された事例が報告されている2)。今回、同時期に重症喘息発作で集中治療管理を要した小児の2症例からEV-D68が検出されたため報告する。
エンテロウイルスD68型(EV-D68)は1962年に発見されたウイルスで, 気管支喘息の既往歴の有無にかかわらず咳嗽や喘鳴を引き起こし, 急性弛緩性麻痺(AFP)との関連性も報告されている1,2)。2022年9月下旬以降, 気管支喘息様の呼吸器症状で東京都立小児総合医療センター(以下, 当院)の救急外来を受診する患者が急増した。また, 東京都立神経病院にAFPの診断で入院した患者からEV-D68が検出された。気道検体でのEV-D68検出状況とAFP患者の経過を報告する。
エンテロウイルスD68型(以下、EV-D68)は主に喘息や気管支炎といった呼吸器疾患の起因病原体であるが、一方で、急性弛緩性麻痺等の神経症状を呈する患者からの検出も報告されている1-3)。また、乳飲みマウスを用いたEV-D68の接種試験により、前肢および後肢に弛緩性麻痺が発現することが報告されており4)、中枢神経系疾患との関連性も示唆される。
エンテロウイルスD68型(EV-D68)は、主に咳嗽・喘鳴等の呼吸器症状を引き起こすウイルスである。2014年に米国でアウトブレイクの発生が報告され、その後カナダ、欧州、アジアなどでもアウトブレイクが確認された1)。日本でも2015年秋期に東京都の4例2)をはじめとして全国的な流行を認めた。急性弛緩性麻痺との関連も指摘されており、2014年8月~2015年3月に米国で107例が報告され、うち半数近くでEV-D68が検出されている3)。日本でも2015年8月~12月に59例の急性弛緩性麻痺の症例が報告されており、うち9例はEV-D68陽性であった4)。