13価肺炎球菌結合型ワクチンと23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの免疫不全成人への使用(ACIP勧告)―米国
(IASR Vol. 34 p. 73-74: 2013年3月号)
2012年6月、予防接種諮問委員会(ACIP)は、19歳以上の成人で免疫不全、無脾(解剖的または機能的)、髄液漏、または人工内耳の者に対しては、従前より勧告されていた23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23: Merck & Co)に加え、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13: Pfizer)がルーチンに使われるよう勧告した。
肺炎球菌は米国内で毎年約4,000人の死亡を引き起こす依然として重篤な感染症で、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発症頻度は18~34歳では10万人当たり3.8であるが、65歳以上では36.4と高まり、また、血液腫瘍の患者では186、HIV感染者では173と、基礎疾患によってリスクは20倍以上に高まる。
PCV13は2000年より使われていた7価結合型ワクチン(PCV7)に代わって2010年より小児で使用されている。PCV7の導入によってワクチン血清型の肺炎球菌感染症は小児にとどまらず成人のIPDも減少させたが、免疫不全者は依然としてワクチン血清型のIPDを起こしている。IPDの50%はPCV13に含まれている血清型で、21%はPPV23に含まれている血清型で起きている。
PCV13は小児へのIPDと中耳炎の予防について2010年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、免疫不全の児に対して使うことが2011年のACIPで勧告され、2011年12月には50歳以上の成人の肺炎およびIPD予防に対して承認された。これはFDAの重篤な疾患に対する迅速承認の枠組みを用い、PPV23との免疫抗体反応の比較によりなされた。アメリカと欧州で行われた2つの多施設無作為研究で、PCV13とPPV23の免疫能のある成人に対する単回接種による免疫原性(オプソニン活性:OPA)が比較され、PPV23接種後よりもPCV13接種後のほうが2回目の接種により上昇するOPAが高いことなどが示された。PCV13の安全性についても6,000人の成人で検証され、1カ月以内の重篤な有害事象はPPV23を受けたかどうかにかかわらず2%未満であった。上記の研究では免疫不全者については検証されておらず、また臨床データも得られていないが、マラウイで成人のHIV感染者に対して行われたPCV7に関する無作為割付試験では、75%(95%CI: 29~92%)の防御効果が得られ、14日間の有害事象もワクチン群がプラセボ群より低かった。アメリカと欧州での研究で、HIV陽性でCD4細胞が200/μl以上の者を対象とした研究では、PCV7による免疫抗体の上昇はPPV23と同等で、両方を接種する場合はPCV7を先に接種したほうが免疫応答がよく、逆にPPV23接種後5年以上経過した場合はPCV7の効果に変化はなかった。
PPV23は65歳以上の高齢者、および19~64歳のハイリスク成人に勧告されているが、HIV感染者への効果は定かでない。PPV23に含まれ、PCV13に含まれない血清型が多いため、PPV23の併用でより広い防御効果が得られるかもしれない。現在の勧告ではハイリスク群の診断を受けた段階での接種および65歳以上の接種が認められているが、2回目の接種には5年以上の間隔を置くべきである。
費用対効果分析としては、PCV13とそれに続いてPPV23を接種したと仮定するライフタイム・コホート・モデルでは、760万ドルの費用抑制と1,360QALYの延長、57例のIPD回避が示され、PCV13の有効性を高く見積もれば費用対効果はさらに上昇する。
(CDC, MMWR, 61, No.40, 816-819, 2012 )