高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)感染事例に関するリスクアセスメントと対応

2023年4月13日
2024年4月17日最終更新
国立感染症研究所

 

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更新点

 2023年4月17日  疫学的所見、ウイルス学的所見、リスクアセスメント

 

目次

  •    背景
  •    疫学的所見
     1.事例の概要
      国外の状況
      国内の状況
     2.治療薬、ワクチン、検査について
  •    ウイルス学的所見
  •    日本国内の対応
  •    リスクアセスメント

背景

 高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1) (Highly pathogenic avian influenza virus: 以下、HPAIV(H5N1))は1997年に初めて香港で生鳥市場を介したヒト感染例の報告があり、2003年、2004年には東アジア、東南アジアでもヒト感染例が報告された。これ以降、世界各地の家きんや野鳥に感染が拡がり、流行域を拡大したH5亜型のHPAIVは、A/goose/Guangdong/1/1996(H5N1)に由来するユーラシア型のHA遺伝子を保持しており、HA遺伝子の塩基配列により当初は0~9のCladeに分類され、その後HA遺伝子の変異が蓄積し、Cladeごとにさらに細かな亜系統に分類されるようになった。さらに他のA型インフルエンザウイルスとの遺伝子再集合を起こすなど、遺伝的にも多様化している。特に2005年以降はClade 2の亜系統が鳥類で流行したことに伴い鳥類からヒトへの感染例も増加し、2006年には欧州、アフリカ大陸でもヒト感染例が報告された。HPAIV(H5N1)のヒト感染例は2024年4月9日時点で少なくとも889例が世界保健機関(WHO)に報告されているが、ほとんどは2017年以前の報告である。
 2021年以降はClade 2.3.4.4bに属するHPAIV(H5N1)の世界的な感染拡大に伴い、2023年には南極地域で初めて鳥類での感染例の発生が報告され、オセアニアを除く全世界から報告があったほか、水生動物を含む野生の哺乳類や農場のミンクなどの感染例、散発的なヒト感染例が世界各所で継続的に報告されている。加えて2024年3月には、米国からヤギ及び乳牛でのClade2.3.4.4b属するHPAIV(H5N1)感染例、および未殺菌乳(生乳)からの同CladeのHPAIV検出が報告され、接触者の調査中にヒトの感染例が確認された。
 また、Clade 2.3.2.1cに属するHPAIV(H5N1)の局地的なヒト感染例も報告されている。
近年のHPAIV(H5N1)のヒト感染例の報告は限られるが、鳥類や哺乳類で流行が拡大していることから、2020年以降の状況について、HPAIV(H5N1)感染事例の疫学情報の更新及びリスクアセスメントを行った。

 

ポーランド共和国および大韓民国におけるネコの高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)感染事例について

2023年9月15日
国立感染症研究所

 

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目次

  •    背景
  •    事例の概要
     1. ポーランドにおける事例
     2. 韓国における事例
     3. ウイルス学的所見
     4. 欧州におけるHPAIV(H5N1)の報告状況
     5. 東アジアにおけるHPAIV(H5N1)の報告状況
  •    過去の哺乳類における鳥インフルエンザウイルス感染事例
     1. 近年のネコ科動物の鳥インフルエンザウイルス感染事例
     2. 過去の鳥インフルエンザの哺乳類からのヒト感染事例
  •    日本国内における家きん肉を用いたペットフードの状況
  •    リスクアセスメント
  •    今後の対応

背景

 高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1) (Highly pathogenic avian influenza virus: 以下、HPAIV(H5N1))は1997年に初めて香港で生鳥市場を介したヒト感染例の報告があり、2003年、2004年には東アジア、東南アジアでもヒト感染例が報告された。これ以降、世界各地の家きんや野鳥に感染が拡がり流行域を拡大したH5亜型のHPAIVは、A/goose/Guandong/1/1996(H5N1)に由来するユーラシア型のHA遺伝子を保持している。HA遺伝子の塩基配列により当初は0~9のCladeに分類され、その後HA遺伝子の変異が蓄積し、Cladeごとにさらに細かな亜系統に分類されるようになった。さらに他のA型インフルエンザウイルスとの遺伝子再集合を起こすなど、遺伝的にも多様化している
 2021年以降はClade2.3.4.4bに属するHPAIV(H5N1)の世界的な感染拡大が起こり、2021年に北米で報告され、2022年には中南米へと拡大した。2022年には南極大陸及びオーストラリア大陸以外の全ての大陸の野鳥、家きんでのHPAIV(H5N1)感染事例が報告された。トリでの感染事例の地理的な拡大と報告数の増加に伴い、トリを捕食するもしくはトリの死骸を餌とする動物での感染事例が増加し、イルカ、アザラシなど海棲哺乳類を含む野生の哺乳類や毛皮農場で飼育されているミンクなどでの感染例の報告があった
 哺乳類の感染事例として、2023年6月から7月にかけて、ポーランド共和国(以下、ポーランド)及び大韓民国(以下、韓国)において、飼い猫や動物保護施設で飼育されていたネコでのHPAIV(H5N1)感染事例が報告されたことから、これら事例に関する情報の更新及びリスクアセスメントを行った

 

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