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保育所における亜テルル酸塩感受性腸管出血性大腸菌O103の集団感染事例―大阪市

(IASR Vol. 42 p64-65: 2021年3月号)

 

 3類感染症の全数把握疾患として届出される腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症では, 溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断された場合を除き, 届出には志賀毒素(Stx)産生あるいはstx遺伝子保有大腸菌菌株の分離が必須である。2019年に地方衛生研究所から報告されたEHEC検出数1,784件のうちO血清群としてはO157が最も多く53.5%, 次にO26が15.9%であった。次いでO103が5.8%, O111が5.7%, となっている1)。これらにO121とO145を加えた6血清群(O26, O103, O111, O121, O145およびO157)が1,784件のうち1,545件(86.6%)を占めており, 公衆衛生対策上重要なO血清群と考えられている。これら6血清群に含まれるEHECの多くは, CT(セフィキシムおよび亜テルル酸塩)に耐性を示すことから, 検出・分離するための選択分離平板培地にはCTが添加されることが多い(通常, セフィキシム; 0.05μg/mL, 亜テルル酸塩; 2.5μg/mL)。EHECの検出・分離に使用されるクロモアガーSTEC培地(クロモアガーSTEC), CT添加ソルビットマッコンキー培地(CT-SMAC)上のEHECの発育は亜テルル酸塩(Ter)濃度に依存するようである2)。クロモアガーSTECは, 強い夾雑菌抑制効果とEHECのコロニーが藤色に着色することから, EHEC検出・分離に有用であり, CT-SMACとともに検査に頻用されている。今回我々は, Ter感受性のEHEC O103による集団感染事例を経験したので報告する。

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