5.持続感染

 

 HBVの持続感染の多くは出生時又は乳幼児期の感染によって成立します。持続感染者の大部分はHBVを体内に保持していますが、肝機能正常なHBe抗原陽性の無症候性HBVキャリアとなり、その後免疫能が発達するに従い、顕性又は不顕性の肝炎を発症します。そのうちの約90%はセロコンバージョン(HBe抗原の陰性化、HBe抗体の陽性化)を経て再び無症候性キャリアへと移行します5)(図2)。しかし、約1015%の人は慢性肝疾患(慢性肝炎・肝硬変・肝がん)へ移行すると考えられています。

 

4.急性B型肝炎

 

 成人での初感染の場合、多くは一過性感染で自覚症状がないまま治癒し、2030%の感染者が急性肝炎を発症します2, 3)。まれに慢性化しますが、一般に予後は良好です。200311月の感染症法の改正に伴い、急性B型肝炎は、感染症発生動向調査における全数把握の5類感染症である「ウイルス性肝炎(A型肝炎及びE型肝炎を除く)」に分類されました。診断した医師は、7日以内の届出が義務付けられています。

3.感染後の経過

 

 HBVの感染形態には持続感染と一過性感染があります1-4)。持続感染した場合、肝硬変・肝がんに進行することもあります(図1)。世界中の原発性肝がんの6080%HBVによると推計されています1)。一過性感染の主な感染経路は輸血などの医療処置、感染者とのカミソリ等の共用、感染者との性行為など、持続感染はHBVに感染している母親からの垂直感染、小児期の水平感染などが挙げられますが、我が国では現在、輸血用血液のスクリーニングにより輸血による感染は激減しています。

 

2.感染経路

 

 HBVは、主として、HBV感染者の血液や精液などの体液を介して感染すると考えられています。さらに、出血などで体外に出た血液は乾燥してもすぐに感染性を失わず、体外で少なくとも1週間は感染性を保つと考えられているため、適切な消毒処置が必要です。

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