新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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成田空港検疫所で過去3年間に確定診断されたデング熱症例からの考察(2013~2015年)

(IASR Vol. 37 p. 132-134: 2016年7月号)

はじめに

2013年, 2014年に引き続き, 成田空港検疫所における血液検査陽性採血者について報告する。また, 3年間の確定診断されたデング熱症例の特徴について報告する。

対象および方法

成田空港検疫所では2015年1年間にデング熱, チクングニア熱, マラリアが疑われた167人に対して血液検査を行った。検査実施の基準は, 帰国時に38℃以上の発熱または38℃未満でも解熱剤を服用している場合で, 検疫感染症に感染しているリスクが高いと診断された症状を有する者(有症者)とした。検査方法は, デング熱についてはReal-time RT-PCR法検査および迅速NS1検査を行った。

なお, 上記の検査実施の基準と検査方法は, 2013年(牧江他, IASR 35: 112-114, 2014), 2014年(高橋他, IASR 36: 140-142, 2015)と同様である。

に示すとおり, 検査時に収集した, デング熱検査が陽性となった者(以下, 陽性例)22例の基本情報, 臨床症状, および血球検査のデータをまとめ, 一部はデング熱検査が陰性となった者(以下, 陰性例)との間でχ2検定を行った。

結 果

血液検査の結果をに示す。2015年の陽性例は8例(男5, 女3)で, デングウイルスのすべての血清型が検出された。チクングニア熱, マラリアは検出されなかった。推定感染国はすべてアジア圏で, 2015年の流行地域(インド, 台湾)が含まれていた。旅行期間は例年通り1週間を超えていた。自覚症状では, 頭痛・頭重感(5), 倦怠感(4)が半数を超えた。これらの傾向は, 3年間同様であった。

3年間の陽性例22例(2013年11, 2014年3, 2015年8)の特徴をに示す。基本情報において, 陽性例の年齢は20代および30代で59%(13/22)を占め, 平均年齢は31.5歳であった。陰性例は, 70%(483/209)と32.5歳であった。性別は男12:女10に対し, 男443:女249で差がなかった。陽性例22例中, 推定感染国は1例(ケニア)を除きすべてアジア圏であった。その帰国月は夏期が過半数を占めた。また, 蚊刺の自覚が7例にはなかった。

体温では, 陽性例22例中で体温38.5℃以上が14例を占め, 38℃未満は3例であった。デング熱検査の陽性例と陰性例とをχ2検定で比較した自覚症状のp値(陽性例での有/無, 陰性例での有/無)は, それぞれ頭痛・頭重感p=.023(15/7, 303/389), 倦怠感p=.988(13/9, 410/282), 関節痛p=.865(8/14, 264/428), 眼窩痛p<.001(5/17, 21/671), 発疹p=.65(1/21, 20/672)であった。

血球検査については, 白血球数平均値が3,974/mm3, 中央値が2,900/mm3で, 中央値が低値に偏っていた。ヘマトクリットおよび血小板数は基準値から外れることがなく, 分布にも偏りはみられなかった。

考 察

これまでの3年間の血液検査環境に大きな変化がないことを確認し, 我々は過去3年間の確定診断されたデング熱症例の特徴について議論した。

デング熱症例の推定感染国はほとんどがアジア圏であり, 1週間以上の滞在期間が大半を占めた。一方, 性別と年齢はデング熱症例には偏在はなかった。

血球検査については, 白血球数の平均値よりも中央値の方が低く, 低値側に偏りがみられた。一方, ヘマトクリットと血小板に偏りはなかった。血小板の低下やヘマトクリットの上昇は発症後期の症状である(WHO, Dengue: Guidelines, 2009)ことを踏まえて検査集団を考えるとき, 集団は発症初期に偏っている可能性がある。ウイルス感染の後期に現れやすい発疹の頻度が低いこともこれを支持した。実際, 旅行中の発症状況を考えれば, 確定診断されたデング熱症例集団は発症初期に偏りがあると考えることに合理性がある。

臨床症状では, 頭痛・頭重感は症状の出現頻度が高く, 陰性例との比較でも有意であった。一方, 倦怠感は出現頻度が高いものの有意な差はなく, 関節痛は頻度が半数以下で有意な差もなかった。ところが, 眼窩痛は頻度は低いものの陰性例との間に有意な差がみられた。成田空港検疫所においては, これらの情報は, 旅行先や旅行期間の情報と併せて, デング熱の感染輸入例をより効率的に発見する上で参考になる情報である。

謝辞:本報告にあたり, 森脇奈緒子氏, 佐々木さおり氏をはじめ, 検査課職員および検疫課の方々に深謝致します。

 成田空港検疫所
 検査課 久保田 瞳 宮田昌弘
 検疫情報管理室 トルマ千恵 牧江俊雄
 所 長 原 德壽

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan