新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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エンテロウイルスD68が検出された小児の3例―東京都

(速報掲載日 2018/11/2) (IASR Vol. 39 p221-222: 2018年12月号)

エンテロウイルスD68型(EV-D68)は、主に咳嗽・喘鳴等の呼吸器症状を引き起こすウイルスである。2014年に米国でアウトブレイクの発生が報告され、その後カナダ、欧州、アジアなどでもアウトブレイクが確認された1)。日本でも2015年秋期に東京都の4例2)をはじめとして全国的な流行を認めた。急性弛緩性麻痺との関連も指摘されており、2014年8月~2015年3月に米国で107例が報告され、うち半数近くでEV-D68が検出されている3)。日本でも2015年8月~12月に59例の急性弛緩性麻痺の症例が報告されており、うち9例はEV-D68陽性であった4)

2018年9月、気管支喘息様の呼吸器症状で当院を受診する患者が増加した。集中治療管理を要した症例のうち3例で気道検体からEV-D68が検出されたため、その詳細を報告する。なお、EV-D68の確認にはPCR法を用いた。気道検体(鼻咽頭ぬぐい液、気管内分泌物など)からRNAを抽出し、EV-D68特異プライマー5)およびCODEHOP法のプライマーを用いてPCRを行った。これらのPCR産物をシークエンス解析することでEV-D68を確認した。

症例1

3歳女児。気管支喘息の既往はなし。2018年9月27日に38℃台の発熱を認め、28日に咳嗽と努力呼吸が出現した。29日に努力呼吸が悪化傾向であったため救急要請され、当院搬送となった。多呼吸と著明な陥没呼吸を認め、気管支喘息発作の診断で入院となった。入院時、気管支拡張薬の吸入は有効であったが、その後呼吸状態および酸素化が悪化し小児集中治療室(PICU)に入室した。高流量鼻カニュラによる呼吸管理と、全身ステロイド薬・β刺激薬持続吸入・マグネシウム薬で治療を行った。酸素投与期間は8日間、入院期間は12日間であった。発症6日目に採取した鼻咽頭ぬぐい液のPCR検査でEV-D68が陽性であった。退院時点(発症14日目)で神経学的異常は認めなかった。

症例2

3歳女児。気管支喘息の既往があり、ロイコトリエン受容体拮抗薬を内服していた。2018年10月7日に咳嗽が出現し、8日に呼吸苦のため近医小児科を受診した。吸入によりいったん改善したが、その後呼吸苦が再燃し、前医を受診した。経皮的酸素飽和度80%台で努力呼吸が著明であったため、気管支喘息発作の診断で当院へ搬送後、PICUで人工呼吸管理となった。全身ステロイド薬・マグネシウム薬などで治療を行い、現在(発症19日目)もPICUで治療中である。気管内挿管期間は15日間であった。発症4日目に採取した気管内分泌物のPCR検査でEV-D68が陽性であった。発症19日目の時点で神経学的異常は認めていない。

症例3

3か月女児。2018年10月18日に発熱、咳嗽が出現したため前医を受診した。多呼吸、陥没呼吸があり、下気道感染症の診断で当院に紹介入院となった。RSウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス抗原迅速検査は陰性であった。19日、咳嗽が持続し、呼吸数80回/分、経皮的酸素飽和度80%台であった。呼吸不全の診断でPICUに入室し、人工呼吸管理となった。抗菌薬投与が開始され、現在(発症8日目)もPICUで治療中である。気管内挿管期間は6日間であった。発症2日目に採取した気管内分泌物のPCR検査でEV-D68が陽性であった。発症8日目の時点で神経学的異常は認めていない。

 

参考文献
  1. Holm-Hansen CC, et al., Global emergence of enterovirus D68: a systematic review, Lancet Infect Dis 16: e64-75, 2016
  2. 伊藤健太ら,エンテロウイルスD68型が検出された小児4症例―東京都, 病原微生物検出情報(IASR)36: 193-195, 2015
  3. Tyler KL, Rationale for the Evaluation of Fluoxetine in the Treatment of Enterovirus D68-Associated Acute Flaccid Myelitis, JAMA Neurol 72: 493-494, 2015
  4. Chong PF, et al., Clinical Features of Acute Flaccid Myelitis Temporally Associated with an Enterovirus D68 Outbreak: Results of a Nationwide Survey of Acute Flaccid Paralysis in Japan, August-December 2015, Clin Infect Dis 66: 653-664, 2018
  5. Wylie TN, et al., Development and Evaluation of an Enterovirus D68 Real-Time Reverse Transcriptase PCR Assay, J Clin Microbiol 53: 2641-2647, 2015

 

東京都立小児総合医療センター
 感染症科 米田 立 福岡かほる 堀越裕歩
 集中治療科 清水直樹
 分子生物研究室 木下和枝

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan