新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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ヒトパレコウイルス3型が検出された新生児・早期乳児の10例―関東

(IASR Vol. 37 p.181-182: 2016年9月号)

2016年6月~8月までの2カ月間において, 東京都内の小児専門医療施設のリアルタイムPCR法1)による微生物迅速診断により, 10例の新生児・早期乳児からヒトパレコウイルス(HPeV)が陽性となった。10例のうち5例は都内の小児専門医療施設へ入院, もしくは転院した症例で, 残りの5例は関東圏内(神奈川県, 埼玉県)の病院から依頼された検体であった。10例全例で発熱, 頻脈などのsepsis-like syndromeを呈し, 6例はPICUへ入室, 1例は気管内挿管などの集中治療管理を要した。今年度においてHPeV感染症が流行する可能性があり, 集中治療管理を必要とする重症例も見られたことから, 注意喚起として報告する。

発症日, 日齢, 性別, 症状(発熱, 循環不全徴候, 痙攣, 腹部膨満, 皮疹など), 血液検査所見(初診時), 転帰をまとめた()。

10例中8例が生後3か月未満の症例で, そのうち5例は新生児であった。生後3か月以上の2症例は早産の双胎児で, 修正月齢で生後1か月であった。家族の感冒症状は全例で認め, 兄弟は発熱・鼻汁・咳嗽などの感冒症状が多く, 両親は倦怠感・筋肉痛・咽頭痛を認めた。臨床所見では, 全例で発熱を認め, 半数の症例で腹部膨満などの非特異的な所見を認めた。体幹部の淡い融合傾向のある紅斑は全例で認め, 一部の症例に第3~4病日で手掌・足底の紅斑2)を認めた。血液検査所見では, 白血球数やCRPなどの炎症反応の上昇を認めない症例が多く, 肝逸脱酵素の上昇は入院時には認めないが第3~4病日で上昇する症例が多かった。転帰は全例で明らかな後遺症を残さずに治癒した。今年度に経験した10例に関して血清型のタイピングも行っており, 全例がHPeV 3型であった。

HPeVはエンベロープを持たないRNAウイルスで, エンテロウイルス属やライノウイルス属と同じピコルナウイルス科に分類される3)。HPeVは現在までに1~16型の血清型/遺伝子型が報告されており, 中でもHPeV-1~8型に関する報告が多い4)。HPeV-1, HPeV-2, HPeV-4~8は, 軽度の胃腸炎症状や上気道炎症状を呈することが多いが, 不顕性感染も多い4)。その一方でHPeV-3は, 生後3か月未満の新生児・早期乳児のsepsis-like syndromeや脳炎などの重症感染症を呈することも知られている2)。典型的な新生児・早期乳児のHPeV-3感染症の経過としては, 高熱と輸液への反応性が乏しい頻脈・末梢循環不全徴候で発症し, 一部の症例では経過中に手掌・足底や体幹部に一過性の紅斑を呈することが報告されている。白血球数は正常範囲内か軽度低下する症例が多く, CRPなどの炎症マーカーは正常範囲内であることが多い。今年度に経験した10例に関しては, 臨床経過や検査所見は過去のHPeV-3感染症の報告と類似していた。

本邦においては2006, 2008, 2011, 2014年にHPeV-3の流行が報告5)されており, 2~3年周期で流行が認められている。季節に関しては7月をピークとして6~9月までの流行が報告されている6)。HPeV-3の感染経路は家族からの伝播が多く, 特に感冒症状や筋肉痛7)のある家族との接触によるものが多いとされているが, 不明であることも多い。感冒症状のない家族の便からHPeVが検出された報告もされており8), 不顕性感染の成人や年長児からの伝播の可能性も考えられる。新生児・早期乳児のいる家庭においては, 感冒症状のある家族のマスク着用と, 手洗いを中心とした手指衛生行動が重要と思われる。

 

参考文献
  1. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 46: 2519-2524, 2008
  2. Shoji K, et al., Pediatr Infect Dis J 32(3): 233-236, 2013
  3. Romero JR, et al., Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition, chapter 172: 2066-2072, 2014
  4. Esposito S, et al., J Clin Virol 60(2): 84-89, 2014
  5. 宮田一平ら, IASR 35: 221, 2014
  6. 久保田雅也ら, Neuroinfection 21(1): 39-47, 2016
  7. Mizuta K, et al., Epidemiol Infect 144(6): 1286-1290, 2016
  8. Aizawa Y, et al., J Clin Virol 70: 105-108, 2015

国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科
 小川英輝 庄司健介 宇田和宏 木下典子 小山(若井)ちとせ 岩瀨徳康 宮入 烈
北里大学病院小児科
 金子雅紀 川村典子 安藤 寿 石井正浩
西埼玉中央病院小児科
 豊田祥子 小穴慎二

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