2013南半球インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株－WHO
(IASR Vol. 33 p. 311, p. 314-315: 2012年11月号)
2012年２～９月のインフルエンザの活動性：インフルエンザの活動性はこの期間中に、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアから報告された。A(H1N1)pdm09ウイルス［以下、A(H1N1)pdm09］、A(H3N2)亜型ウイルス［以下、A(H3N2)］、Ｂ型ウイルス（以下、Ｂ型）の混合流行であり、各国・地域における活動性は、低いまたは中程度から高いまで様々であった。
動物由来のインフルエンザウイルス［A(H5N1)、A(H3N2) variant (v)、 A(H1N1)v、 A(H1N2)v、 A(H7N3)］感染：2012年２月23日～９月18日に、A(H5N1)ウイルスのヒト感染例が、バングラデシュ、カンボジア、香港、エジプト、インドネシア、ベトナムから17例（うち死亡10例）報告された。2003年12月からの累計では、15カ国から608例（うち死亡 359例）が報告されている。
2012年２月以降、米国ではＡ型の変異型［variant(v)］ウイルスのヒト感染例が報告されており、その内訳はA(H3N2)vが305例（うち死亡１例）、A(H1N1)vが１例、A(H1N2)vが３例である。
また、メキシコでA(H7N3)亜型ウイルス感染による結膜炎患者が２例報告されており、いずれも同ウイルスに感染したトリとの接触歴が認められた。
なお、同期間中にA(H9N2)亜型ウイルスのヒト感染例の報告はなかった。
最近の分離株における抗原性および遺伝学的特徴：
A(H1N1)pdm09：2012年２～８月に世界中で検出されたA(H1N1) 亜型ウイルスのすべてがA(H1N1)pdm09であった。免疫フェレット血清を用いたHI試験では、抗原性は均一であり、ワクチン株であるA/California/7/2009に類似していた。HA遺伝子配列の解析では、抗原的に区別できない少なくとも４つのグループに分けられた。
A(H3N2)：2012年２～８月に収集されたウイルスのほとんどは、HI試験による抗原性が2012／13シーズン北半球のワクチン株であるA/Victoria/361/2011に類似していた。最近の分離株のHA遺伝子配列は、おもに抗原的に区別できない３つのサブグループ（3A、3B、3C）に分けられ、直近に分離されたウイルスでは3Cの割合が増加している。
Ｂ型：B/Victoria/2/87（Victoria）系統とB/Yamagata/16/88（山形）系統の両方が流行しており、一部の国ではVictoria系統が優勢であるが、それ以外では山形系統が優勢、または増加しつつある。HI試験では、Victoria系統ウイルスの大多数は、2012シーズン南半球のワクチン株であるB/Brisbane/60/2008と抗原性が類似しており、HA遺伝子配列の解析でも多くがB/Brisbane/60/2008のクレードに分かれた。山形系統ウイルスの大多数は2012／13シーズン北半球のワクチン株であるB/Wisconsin/1/2010と抗原性が類似しており、HA遺伝子配列の解析では、多くがクレード２または３に分けられ、最近ではクレード２のウイルスの割合が増加している。
抗インフルエンザウイルス薬への耐性：ノイラミニダーゼ阻害薬：A(H1N1)pdm09では大多数がオセルタミビル感受性であり、耐性ウイルス（H275Y変異）も少数（16/1,124：1.4％）検出されていたが、これらすべてはザナミビルに感受性であった。A(H3N2)では１株（2,822株中）がオセルタミビルとザナミビルに対し感受性が低下（R292K変異）していた。Ｂ型でも１株（1,855株中）がオセルタミビルとペラミビルに対し感受性が低下（H273Y変異）していたが、すべてザナミビルには感受性であった。
M2阻害薬：A(H1N1)pdm09とA(H3N2)のＭ遺伝子配列の解析では、アマンタジンやリマンタジンといったM2阻害薬への耐性に関与するM2蛋白のアミノ酸置換（S31N変異）が、検査されたウイルス株のすべてに認められた。
不活化インフルエンザワクチンに関する調査研究：最近の分離ウイルス株に対する抗体保有状況ついて、現行のワクチン株を含む３価不活化インフルエンザワクチンを接種された小児、成人、高齢者の血清を用いて、HI試験［A(H3N2)については中和試験も］により測定した。
A/California/7/2009抗原を含むワクチンにより誘導されたHI抗体価（幾何平均抗体価）は、ワクチン株によるものと最近のA(H1N1)pdm09株によるものの多くが同等であった。
A/Victoria/361/2011抗原を含むワクチンにより誘導されたHI抗体価（幾何平均抗体価）は、ワクチン株によるものと最近のA(H3N2)株によるものの多くが同等であった。
B/Brisbane/60/2008抗原を含むワクチンにより誘導されたHI抗体価（幾何平均抗体価）は、ワクチン株によるものと最近のVictoria系統株によるものの多くが同等であった。また、B/Wisconsin/1/2010抗原を含むワクチンにより誘導されたHI抗体価（幾何平均抗体価）は、ワクチン株によるものと最近の山形系統株によるものの多くが同等であった。
2013南半球インフルエンザシーズンに推奨される３価ワクチン株：
A/California/7/2009(H1N1)pdm09類似株
A/Victoria/361/2011(H3N2)類似株
B/Wisconsin/1/2010類似株
上記３つにB/Brisbane/60/2008類似株を含んだ４価ワクチンも推奨
（WHO, WER, 87, No.41, 389-400, 2012）
