新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

第33回感染研シンポジウム

国立感染症研究所では、第33回感染研シンポジウムを「過去を知り、その先へ!」のテーマのもとに開催いたします。 日時:2024年5月21日(火)    13:00〜17:00 方法:オンライン開催(Zoomウェビナー)   申込み方法: 事前登録が必要となりますので、下記...

続きを読む

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

続きを読む

令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

続きを読む

IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

続きを読む

logo

狂犬病から回復した症例、2011年―米国・カリフォルニア州

(IASR Vol. 33 p. 106, 109: 2012年4月号)

 

米国において狂犬病から回復した3例目の報告である。

2011年4月25日にカリフォルニア州郊外に住む8歳の女児が咽頭痛、嘔吐を主訴に小児科を受診した。その後、日中の活動はできていたが、嚥下困難をきたし、少量の水しか摂取できなくなったため、4月28日に地域の救急部門(Emergency Department:ED)を受診し、脱水に対して点滴を受けた。さらに、腹痛、頸部痛、背部痛のため、4月30日に再度EDを受診したが、ウイルス感染症を疑われ帰宅した。5月1日には咽頭痛、全身衰弱のため3度目のED受診をし、意識混迷(錯乱)、呼吸窮迫が存在しており、気管挿管され、第三次医療施設へ搬送された。この時の頭部CT、腹部CTでは有意な所見はなかったが、胸部CTでは左肺の下葉に無気肺が認められた。

小児集中治療室に入院時の髄液検査では、細胞数 6/μl、タンパク 62mg/dl、糖 67mg/dlであった。その後、急性弛緩性麻痺と脳炎が進行し、MRI(T2強調/FLAIR)では、脳室周囲の白質と皮質・皮質下領域に異常信号が認められた。カリフォルニア州公衆衛生部局のウイルス・リケッチア検査室におけるカリフォルニア脳炎プロジェクトの介入のもと、エンテロウイルスやウエストナイルウイルスなどに関する検査が緊急実施されたが、結果は陰性だった。臨床経過から狂犬病を疑われ、さらに狂犬病特異的抗体検査、遺伝子検査(PCR 法)、狂犬病ウイルス抗原検査が実施された。その結果、PCR 法、狂犬病ウイルス抗原検査では陰性だったが、血清および髄液中の狂犬病ウイルス特異的抗体が陽性であり、狂犬病と診断された。治療として、ケタミン、ミダゾラムによる鎮静、アマンタジン、ニモジピンによる脳動脈攣縮予防等が施行されたが、抗狂犬病ガンマグロブリンや狂犬病ワクチンは投与されなかった。5月8日には自発的に頭部を動かすなど、徐々に回復し、6月22日に退院となった。その後も、認知機能障害なく、日常生活を送っている。

予防として、患者の唾液に曝露された可能性のある27名(家族、クラスメート、PICUスタッフ、EDのヘルスケアワーカー)に狂犬病の曝露後ワクチン接種が行われた。その後、さらなる狂犬病患者は同定されていない。

なお、女児には、発症前6カ月以内に地域外に旅行した経歴はなかった。発症の約9週前と4週前に、通学する学校近くの野良猫にひっかかれた既往があった。野良猫に狂犬病ワクチンの接種歴はなかった。これらの猫を捕獲し観察したところ、1匹の健康状態は良好であったが、1匹は追跡調査ができなかった。

急性進行性脳炎患者の診療時には、狂犬病を鑑別診断にあげ、検査を行う必要がある。また、狂犬病予防のためには、家庭で飼育している動物に対するワクチン接種、ワクチン接種を受けていない野生動物との接触の回避、曝露後の迅速なワクチン接種が重要である。

(CDC, MMWR, 61, No.4, 61-65, 2012)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan