新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

第33回感染研シンポジウム

国立感染症研究所では、第33回感染研シンポジウムを「過去を知り、その先へ!」のテーマのもとに開催いたします。 日時:2024年5月21日(火)    13:00〜17:00 方法:オンライン開催(Zoomウェビナー)   申込み方法: 事前登録が必要となりますので、下記...

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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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日本海裂頭条虫の同定―沖縄県

(IASR Vol. 33 p. 103-104: 2012年4月号)

 

2011年11月県内医療機関より成人男性の排便時に排出されたという寄生虫様検体の検査依頼があり、形態学的検査とミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼサブユニット1(CO1)遺伝子解析により日本海裂頭条虫と同定したので報告する。

患者は40代男性、症状は下痢および心窩部痛で、排虫は今回が初めてではないとのことであった。生魚は食べるがマス等を生食した記憶はなく、海外渡航歴も無かった。

排出された虫体は生理食塩水に保存され搬入された。虫体は白く平たい紐状で多数の片節が連なっていたことから条虫類と判断した(図1)。また、片節の中央には生殖器様構造が確認された。片節の一部を細切し、スライドグラス上で圧平し顕微鏡で観察したところ、裂頭条虫様の虫卵が確認された(図2)。以上のような虫体や虫卵の形態学的所見から、裂頭条虫類と推察できた。

裂頭条虫類には、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei )、広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)および日本海裂頭条虫(Diphyllobothrium nihonkaiense )などが属しているが、マンソン裂頭条虫はヒトでは成虫に成長せず弧虫症となることから鑑みて、当該条虫は日本海裂頭条虫または広節裂頭条虫の可能性が高いと考えられた。

しかし、形態学的には両種の判別は困難なため、ミトコンドリアCO1遺伝子解析を試みた。試料は片節1つをDW 1mlに入れホモジナイズにより乳剤とし、QIAamp DNA Mini Kit(QIAGEN社)によりDNAを抽出した。ミトコンドリアCO1遺伝子を増幅するPCRは、プライマーDBCO1-1 およびDBCO1-2 1,2) を用いて実施し、300bp付近にDNA増幅産物を確認した。得られたDNA産物の塩基配列をダイレクトシークエンスで決定し、DDBJに登録された塩基配列データを用いて分子系統解析を行った結果、日本海裂頭条虫のクラスターに属した(図3)。塩基配列の相同性は、日本海裂頭条虫と100%一致し、類症鑑別が必要となる広節裂頭条虫とは91.9~92.3%、マンソン裂頭条虫とは82.3~84.6%であった。以上の結果より、当該条虫は日本海裂頭条虫と同定した。

今回の検体は保存状態が良く、形態的な観察も十分できたが、搬入される検体によっては損傷や不適切な保存液による形態の変化等により、形態学的特長が明瞭でなく、大まかな分類でさえ困難な場合も想定される。その場合でも遺伝子学的検査は有用であり、形態学的検査と合わせて実施していくことでより迅速で正確な同定が可能になると考えられる。

日本では、裂頭条虫症が条虫症の大半を占め、有薗らの報告によると裂頭条虫症の報告件数は最近の5年間では増加傾向である3,4) 。沖縄県では、本土復帰後に初めて裂頭条虫症が確認され、1980年代には17例の報告があるが 5)、近年の状況は把握できていない。条虫症は感染症法の対象疾患ではないため発生状況の調査は難しく、今後、より多くの検査機関が検査体制を整えておくことにより、わが国における本症の実態把握につながるものと考えられる。

 参考文献

1)八木欽平,三好正浩,道衛研所報 55: 81-84, 2005
2)阿部仁一郎, 他,生活衛生, 53: 169-176, 2009
3) Naoki Arizono, et al ., Emerg Infect Dis 15: 866-870, 2009
4)有薗直樹,Clinical Parasitology 22: 9-17, 2011
5)長谷川英男, 安里龍二, Japanese Journal of Parasitology 39 Supplement, April, 1990

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