新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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COVID-19流行下における国内小児の麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種状況

(IASR Vol. 41 p164-165: 2020年9月号)

背 景

世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により, 世界において約8千万人の乳児が, 必要なワクチンを接種できなくなると予想しており1), 今後, 風しんを含むvaccine preventable diseases(VPD)の世界的流行が懸念されている。日本小児科学会は, 「COVID-19流行により適切な予防接種が適正な時期に行われなくなることは子ども達にとって大きなデメリットとなる」として, COVID-19流行下であっても通常通りワクチンを接種することを推奨している2)。我々は, 神奈川県川崎市の協力により, COVID-19の流行下における小児の定期予防接種状況を調査した3)。本稿においてはそのうち乾燥弱毒生麻しん風しん混合(MR)ワクチンに関する結果を紹介する。

方 法

本調査が行われた川崎市は, 東京都心部および羽田空港などに隣接する神奈川県の政令指定都市であり, 国内では早期にCOVID-19患者のクラスターが発生した都市である。また, 川崎市における直近のMR1期, 2期の接種対象となる1歳児人口, 5歳児人口は13,000人前後で推移している。

予防接種は, その種類や接種推奨年齢により月ごとの接種状況が異なる。例えば定期接種期間が年度末で終了するMR2期は, 例年3月の接種本数が増加している。従って, 本調査では通年接種率ではなく, 川崎市の予防接種台帳に登録されたCOVID-19流行前の2019年3月と, 流行後の2020年3月の接種本数を比較することにより, 流行前後におけるMRワクチン接種状況の変動を検討した(実際には, 川崎市では前月の定期接種本数が翌月集計されるため, 4月集計分を3月の接種本数と想定した)。

結 果

MR1期:1歳以上2歳未満での接種が推奨されているMR1期における2019年3月, 2020年3月の接種本数は, それぞれ991本, 944本であり, COVID-19流行後の2020年においては, 前年度の同月接種本数と比べて95.3%まで減少していた (図1-A)。

MR2期:小学校入学前の1年間での接種が推奨されているMR2期における2019年3月, 2020年3月の接種本数は, それぞれ3,384本, 1,787本であり, COVID-19流行後の2020年においては, 前年度の同月接種本数と比べて52.8%まで減少していた(図1-B)。

考 察

COVID-19流行前後で同月(3月)のMRワクチン接種本数の推移を比較した本調査の結果によると, 1歳児を接種対象としたMR1期の接種本数は流行前後でわずかに減少するに留まっていた。一方で, 小学校入学前の1年間での接種が推奨されているMR2期の接種本数は, 流行前後で約半数まで大幅に減少していた。このような結果となった要因として, 一般的に乳幼児における予防接種は, 出生した病院の医師やかかりつけ医などにより積極的に啓発されることが多く, また保護者も乳幼児がVPDに罹患した場合のリスクを警戒していることが多いと考えられる。一方で, 感冒等でかかりつけ医を受診する機会は年齢とともに徐々に減少し, また保護者は「大きくなってきたから少しくらい接種が遅れても大丈夫」という健康過信により, 予防接種時期の延長が安易になされている可能性がある。定期予防接種スケジュールは, 小児にとって最も理想的な接種時期を想定して作成されており, 幼児期以降であっても推奨される接種スケジュールを遵守することは, それぞれのワクチンの有効性および安全性を最大限確保する上で非常に重要である。また, 一部のVPDはCOVID-19よりも重篤な症状や後遺症を認める場合もあり, 今後世界全体でのherd immunityの低下も懸念されている。以上より, COVID-19流行下であっても, ワクチンの種類や接種者の年齢などにかかわらず, 予定通り予防接種を継続するとともに, やむを得ず接種が控えられたワクチンがある場合は, なるべく早期にキャッチアップ接種をすることが重要である。一部の地方自治体はCOVID-19流行の影響に対する特例として, 定期接種時期を超えていても定期接種に準じた接種を認めている。なお本研究は, COVID-19が先行して流行した川崎市において行われた調査であり, 流行状況が異なる地域においては, 接種状況も異なっている可能性がある。

結 語

国内におけるCOVID-19流行下での小児に対する風疹予防策に関しては, MR1期の接種率をいままで通り維持するとともに, MR2期接種率が低下しないよう, 十分な接種啓発を継続していく必要がある。

謝辞:本調査にご協力いただいた, 神奈川県川崎市健康福祉局保健所感染症対策課の小泉祐子様, 清田祐太郎様に深謝いたします。

 

参考文献
  1. WHO, At least 80 million children under one at risk of diseases such as diphtheria, measles and polio as COVID-19 disrupts routine vaccination efforts, warn Gavi, WHO and UNICEF
    https://www.who.int/news-room/detail/22-05-2020-at-least-80-million-children-under-one-at-risk-of-diseases-such-as-diphtheria-measles-and-polio-as-covid-19-disrupts-routine-vaccination-efforts-warn-gavi-who-and-unicef
  2. 日本小児科学会, 新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて, 2020
    https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=326
  3. 日本小児科学会, 新型コロナウイルス感染症流行時における小児への予防接種について
    http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=345
 
 
聖マリアンナ医科大学  小児科 
 勝田友博

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan