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エムポックス 2023年現在

(IASR Vol. 44 p83-84: 2023年6月号)
 

エムポックス(下記脚注参照)は, オルソポックスウイルス属に属するモンキーポックスウイルス(別名エムポックスウイルス: MPXV)の感染によって起こる感染症で, 感染症法上の4類感染症に指定されている。MPXVは主に感染動物や, 感染患者の血液・体液・皮膚病変との接触により伝播することが知られてきた。MPXVの自然宿主は現在も明らかになっていないが, アフリカの熱帯雨林に生息するげっ歯類が自然宿主であり, サルなどの哺乳類は偶発的に発生する宿主である可能性が高い。流行はアフリカ地域でみられてきたが, アフリカ地域以外の輸入感染事例としてヒト集団におけるアウトブレイクが発生したのは2003年の米国での事例が初めてである。この事例では, ガーナから輸入されたげっ歯類に感染していたMPXVがプレーリードッグに伝播し, そのプレーリードッグとの接触が原因とされ, ヒトからヒトへの伝播は確認されていない。他にもナイジェリア国内で動物から感染したと思われる複数の感染者が, イスラエル, 英国, シンガポール, 米国を訪問し, そこで輸入症例として確認された事例がある。これらの事例でもヒトからヒトへの伝播は院内感染1例, 家族間感染2例にとどまっていた(本号3ページ)。

 

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セレウス菌食中毒事例―沖縄県

(IASR Vol. 44 p95-96: 2023年6月号)
 

セレウス菌食中毒の国内での発生件数は, 過去10年で毎年1-9件と稀な食中毒である。本県では, 2021年に23年ぶりにセレウス菌による食中毒事例が発生し, さらに2022年にも発生した。この2事例についての概要を報告する。

 

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長崎県内における75歳未満の新型コロナウイルス感染症罹患後の死亡例に関する実地疫学調査, 2022年1月~2023年1月

(IASR Vol. 44 p96-98: 2023年6月号)
 

2022年1月以降, オミクロンの流行により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は, 以前に比してその流行規模が大きくなった1)。死亡者の多くは高齢者だが, 高齢者以外の死亡も認められた。死亡リスクが比較的低いとされている年代の死亡者の背景や発症から死亡に至るまでの経過を把握することは, 公衆衛生対策を検討するうえで重要である。本調査はオミクロン流行にともなう長崎県内の75歳未満のCOVID-19罹患後死亡者の特徴の把握を目的に積極的疫学調査を行った。

国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年6月19日)

性器クラミジア感染症Chlamydia trachomatisを起因微生物とする感染症で、男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を主に起こす。性器クラミジア感染症は感染症法の定点把握対象疾患で、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関から感染症発生動向調査に報告されている。性感染症定点医療機関数は2007年以降1000弱でほぼ横ばいである。性感染症定点医療機関の医師が「症状や所見から性器クラミジア感染症を疑い、定められた検査方法により診断した」症例を月毎に集計し、性器クラミジア感染症として報告している。定められた検査方法には、尿道や性器から採取した検体からのC. trachomatis分離・同定、又はC. trachomatisの抗原、あるいは遺伝子の検出、又は患者血清からの抗体検出が含まれる。

国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年6月19日)

性器ヘルペスウイルス感染症は、単純ヘルペスウイルスの感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。性器ヘルペスウイルス感染症は感染症法の5類定点把握対象疾患で、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関から感染症発生動向調査に報告されている。性感染症定点医療機関数は2007年以降1000弱でほぼ横ばいである。性感染症定点医療機関では医師が「症状や所見から性器ヘルペスウイルス感染症を疑い、かつ、届出のために必要な臨床症状(性器や臀部にヘルペス特有な有痛性の1から多数の小さい水疱性又は浅い潰瘍性病変)により、性器ヘルペスウイルス感染症患者と診断した」症例を月毎に集計し、性器ヘルペスウイルス感染症として報告している。

国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2021年2月3日現在
(掲載日:2023年6月19日)

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス6、11型などのウイルス感染症を原因とし、生殖器等に隆起性の病変を作る疾患である。尖圭コンジローマは感染症法の5類定点把握対象疾患で、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関から感染症発生動向調査に報告されている。性感染症定点医療機関数は2007年以降1000弱でほぼ横ばいである。性感染症定点医療機関の医師が「症状や所見から尖圭コンジローマを疑い、かつ、届出のために必要な臨床症状(性器及びその周辺に淡紅色又は褐色調の乳頭状、又は鶏冠状の特徴的病変)により、尖圭コンジローマ患者と診断した」症例を月毎に集計し、尖圭コンジローマとして報告している。

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