Enterovirus D68(EV-D68)は主に小児で呼吸器疾患を引き起こし, 一部の小児では喘鳴や呼吸窮迫等のより重篤な下気道症状を生じることもある1,2)。2014年に米国で発生したEV-D68の大規模なアウトブレイクでは, 急性弛緩性麻痺(AFP)との関連性も報告されている3)。沖縄県では2022年に手足口病が流行し, 5月には6年ぶりに警報が発令されたことから, 当所では例年と比べ多くの病原体解析を実施した。手足口病はEnterovirus A71(EV-A71), Coxsackievirus A6(CV-A6), Coxsackievirus A10(CV-A10), Coxsackievirus A16(CV-A16)などが原因ウイルスとされているが, 当所において2022年10月に手足口病症例からEV-D68が複数検出されたため, その概要について報告する。
三重県感染症発生動向調査に基づき, 2017~2022年に県内の病原体定点医療機関等より搬入された感染性胃腸炎患者検体におけるサポウイルス(SaV)とノロウイルス(NoV)の検出状況について報告する。SaVの検出はcapsid領域を標的としたコンベンショナルPCR法1)により, NoVの検出はreal-time PCR法およびコンベンショナルPCR法2,3)により行った。またcapsid領域の遺伝子型別は, 得られたPCR産物の塩基配列をダイレクトシーケンス法により決定し, ノロウイルスタイピングツール4)やBLAST検索, 系統樹解析により同定した。なお, 三重県では感染性胃腸炎の病原体検査としてSaVとNoVのほかに, A群ロタウイルス, アストロウイルス, アデノウイルス, エンテロウイルスの検索も同時に行っている。
季節性インフルエンザ(以下, インフルエンザ)は例年冬季に全年齢を通じて流行する傾向であった。しかし, 2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降, 2020/21, 2021/22シーズンは国内におけるインフルエンザの流行は認められなかった。一方, 2022/23シーズンにおいては, 3シーズンぶりに全国的なインフルエンザの流行が認められた。本稿では, 富山県における2022/23シーズンのインフルエンザ報告例の年齢層を含む発生動向の特徴をCOVID-19流行前のシーズンと比較し, 報告する。
国立感染症研究所
2023年4月21日9:00時点
変異株の概況
第26報からの更新点
目次
国内外において検出されたオミクロンとその特性について
表1 2023年4月までに確認された、主なオミクロン亜系統の検出時期と特性
※(国立感染症研究所. 2023d)
BA.5系統について
BA.2.75系統について
オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について
XBB系統について
BQ.1系統について
参考
表2 主な変異株とその亜系統の各国における位置付け(2023年 4月17日時点)
系統名 |
感染研(NIID) |
WHO |
ECDC |
UKHSA |
CDC |
B.1.1.529 系統 (オミクロン) |
VOC
|
※各亜系統を以下の通り分類
Currently circulating variants of interest (VOIs): XBB.1.5
Currently circulating variants under monitoring (VUMs): BA.2.75, CH.1.1, BQ.1, XBB, XBB.1.16, XBB.1.9.1,XBF |
※各亜系統については以下の通り分類
VOI: BA.2.75, BQ.1, XBB, XBB.1.5
VUM: XBC注1), BN.1, CH.1.1, XAY注1), XBB.1.16
De-escalated variant: BA.1, BA.2, BA.3, BA.4, BA.5, BA.2+L452X, XAK, B.1.1.529+R346X, B.1.1.529+K444X, N460X, B.1.1.529+N460X, F490X, BA.2.3.20, BF.7 |
※各亜系統については以下の通り
VOC: BA.1, BA.2, BA.4 BA.5.
Designated variants: XE, BA.2.75, BA.4.6, BQ.1, XBB, CH.1.1, XBB.1.5.
Signals in monitoring: XBB.1.9.1, XBB.1.9.2, XBB.1.16 |
VOC
|
VOC: Variant of concern(懸念される変異株)、VOI: Variant of interest(注目すべき変異株)、VUM: Variant under monitoring(監視下の変異株)、Designated variants (指定された変異株)、De-escalated variant(警戒解除した変異株)、Signals in monitoring (監視中のシグナル)
注1) オミクロンとデルタの組換え体
引用文献
注意事項
迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。
更新履歴
第27報 2023/ 4/21 9:00時点
第26報 2023/ 3/24 9:00時点
第25報 2023/ 2/10 9:00時点
第24報 2023/ 1/13 9:00時点
第23報 2022/12/16 9:00時点
第22報 2022/11/18 9:00時点
第21報 2022/10/21 9:00時点
第20報 2022/09/08 9:00時点
第19報 2022/07/29 9:00時点
第18報 2022/07/01 9:00時点
第17報 2022/06/03 9:00時点
第16報 2022/04/26 9:00時点
第15報 2022/03/28 9:00 時点
注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の変異株について」
第14報 2021/10/28 12:00 時点
第13報 2021/08/28 12:00 時点
第12報 2021/07/31 12:00 時点
第11報 2021/07/17 12:00 時点
第10報 2021/07/06 18:00 時点
第 9 報 2021/06/11 10:00 時点
第 8 報 2021/04/06 17:00 時点
第 7 報 2021/03/03 14:00 時点
第 6 報 2021/02/12 18:00 時点
第 5 報 2021/01/25 18:00 時点
注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の新規変異株について」
第 4 報 2021/01/02 15:00 時点
第 3 報 2020/12/28 14:00 時点
第 2 報 2020/12/25 20:00 時点
注)タイトル変更
「感染性の増加が懸念される SARS-CoV-2 新規変異株について」
第 1 報 2020/12/22 16:00 時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」
掲載日:2023年4月20日
第121回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年4月19日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第121回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
英語版(準備中)
全国の新規感染者数は、直近の1週間では人口10万人あたり約46人となり、 今週先週比は1.06と、緩やかな増加傾向となっている。
接触機会の増加や免疫の減衰、変異株の置き換わりの状況等が感染状況に与える影響に注意が必要。
重症者数や死亡者数は横ばいとなっており、病床使用率は全国的に低い水準にある。
国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
細菌第一部
2023年4月5日現在
(掲載日:2023年4月19日)
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis) による感染症は、1999年から髄膜炎菌性髄膜炎が感染症発生動向調査(National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases: NESID)の報告対象疾患とされていた。2013年4月1日からはN. meningitidis による髄膜炎に加えて敗血症なども報告の対象となり、侵襲性髄膜炎菌感染症(Invasive Meningococcal Disease: IMD)として五類全数把握疾患に位置づけられた1,2。2016年11月21日からは血液、髄液のほか「その他無菌部位」から髄膜炎菌が検出された症例も報告対象となった。髄膜炎菌は莢膜多糖体の糖鎖の違いにより少なくとも12血清群に分類され、侵襲性感染の大部分はA, B, C, Y, W群によるものである。このうちA, C, Y, W群を含む4価ワクチンが国内で承認されている。今般、国内におけるIMDの発生動向についてNESIDに基づきまとめたので報告する。
2013年4月1日から2023年3月31日までに診断され、IMDとしてNESIDシステムに報告があった274例(2023年4月5日時点)について記述した。届出票の症状欄に示されている「髄膜炎」または髄膜炎を疑う症状(「頭痛」、「嘔吐」、「意識障害」、「項部硬直」、「大泉門隆起」のいずれか)が記載された症例は髄膜炎として分類した。血清群についてはNESIDシステムに登録された情報と、国立感染症研究所細菌第一部で判定された結果を含めて集計した。