ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2023年度速報-

(2023年7月09日現在)

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 日本脳炎は、日本を含め東南アジアを中心に広く常在した疾患で、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus: JEV)に感染した者のうち100~1,000人に1人程度が発症すると推定される重篤な急性脳炎である [1]。感染経路は、主にイエカ属の蚊(日本では主にコガタアカイエカ)による吸血でJEVに感染したブタ等を刺咬・吸血したのちにヒトを吸血することで感染する。

  1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており [2,3]、ブタの感染状況からJEVが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。1960年代の日本脳炎の患者が多数発生していた環境では、日本脳炎患者が検出される時期に先行してブタのJEVに対するHI抗体の上昇が確認されている [4]。1992年以降、日本脳炎患者の報告数は、2016年の11例、2019年の10例を除き全て一桁の報告でブタの感染状況と比較して患者発生数は低く、環境中のウイルス活動状況と必ずしも一致していない。しかし、ブタの抗体保有状況はウイルス陽性蚊の存在している地域を間接的に示唆するデータと推測され、少なくともこのような地域ではヒトへの感染リスクの存在する地域と考えられる。2015年には10か月齢の小児にも感染が確認され[5]、2022年は千葉県、広島県、熊本県から症例が報告されている。

 感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中のJEVに対する抗体保有状況を赤血球凝集抑制法(Hemagglutination inhibition test: HI法)により測定し、JEVの蔓延状況およびウイルスの活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタがJEVに対する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近JEVに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況を都道府県別に示しており、JEVに最近感染したブタが認められた地域を青色、それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。

 本速報はJEVの感染に対する注意を喚起するものである。それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、JEVが活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受けていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要である。

 なお、日本脳炎定期予防接種は、第1期(接種回数は初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象であるが、平成7年4月2日(1995年4月2日)から平成19年4月1日(2007年4月1日)までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として合計4回の日本脳炎ワクチンの接種が可能である(詳細は厚生労働省ページを参照)。また、平成19年4月2日(2007年4月2日)~平成21年10月1日(2009年10月1日)までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。ただし、生後90か月(7歳半)以上9歳未満は定期接種として接種することができないので、注意が必要である。市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい[6,7]。

抗体保有状況
(月別推移)


抗体保有状況
(地図情報)

JE 2021 11
1. 日本脳炎とは
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. Arai, S., Matsunaga, Y., Takasaki, T., Tanaka-Taya, K., Taniguchi, K., Okabe, N., Kurane, I., Vaccine Preventable Diseases Surveillance Program of Japan. Japanese encephalitis: surveillance and elimination effort in Japan from 1982 to 2004. Japanese Journal of Infectious Diseases. 2008. 61: 333-338. Pubmed
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H., Ishida, N., Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300.Pubmed
5. 2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例. IASR Vol. 38 p.153-154: 2017年8月号. 
6. 厚生労働省. 日本脳炎. (2023年7月10日アクセス)
7. 国立感染症研究所 予防接種スケジュール

国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部

Updated July 5, 2023

National Institute of Infectious Diseases, Japan

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Japanese

 

Oz virus (OZV) is an RNA virus of the genus Thogotovirus, family Orthomyxoviridae. This virus was first isolated from Amblyomma testudinarium ticks in Japan and was named Oz virus in 2018. Although human infection has been suggested by previous human serological research, no confirmed case of human infection had been reported worldwide. In June 2023, the world's first case of human infection (fatal case) with Oz virus was reported in Japan (IASR report: Japanese).

 

Pathogen

OZV is an enveloped virus with a six-segmented, single-stranded, negative-stranded RNA belonging to the genus Thogotovirus in the family Orthomyxoviridae. It was first isolated from Amblyomma testudinarium ticks in Ehime Prefecture, Japan (Ejiri H, et al., 2018). OZV has not been reported outside Japan.

 

ozv 230623

Figure1. Electron micrograph of Oz virus particles

 

Distribution

Amblyomma testudinarium ticks are distributed westward from the Kanto region. Serum antibody surveys conducted in wildlife suggest a history of OZV infection in macaques (Macaca fuscata), wild boars (Sus scrofa leucomystax), and sika deer (Cervus nippon) in Chiba, Gifu, Mie, Wakayama, Yamaguchi, and Oita prefectures (Tran NTB, et al., 2022). Among serum samples from healthy hunters in Yamaguchi Prefecture from 2013 to 2019, two of the 24 samples tested positive for anti-OZV antibodies (Tran NTB et al., 2022). These findings had suggested a potentially wide geographic distribution of OZV in Japan.

 

Clinical Symptoms

The case in Japan is the only reported case of human OZV infection (IASR report: Japanese), making characterization of the clinical symptoms associated with OZV infection difficult. The reported case-patient presented with fatigue, loss of appetite, vomiting, joint pain, and a fever of 39 °C, ultimately resulting in viral myocarditis and death.
As described above, a human serological study of hunters indicating a history of infection suggests that OZV may not always be fatal However, further investigation is required to elucidate this disease.

 

Transmission

OZV has been detected in Amblyomma testudinarium ticks that bite humans. In the case from Japan (IASR report: Japanese), an attached engorged tick was observed, indicating that a tick bite may have served as a potential transmission route. However, conclusive evidence on the exact route of transmission is lacking. The sole reported case of human infection is the case-patient reported in June 2023, and the route of transmission for this case remains inconclusive.

 

Pathogen Diagnosis

Pathogen diagnosis can be achieved through the isolation and identification of the virus from samples such as whole blood, or, by detecting viral genes using RT-PCR (Ejiri et al., 2018). Paired serology testing can also be used for the diagnosis. These diagnostic tests can be conducted at the National Institute of Infectious Diseases.

 

Treatment

Currently, there are no known effective antiviral drugs and supportive care is the only treatment available.

 

Prevention

While definitive evidence regarding the transmission route is lacking, as tick bites may be the cause of infection, preventive measures such as minimizing skin exposure and use of repellants outdoors to avoid tick bites should be taken. Vaccines are not available.

 

References

・ Ejiri H, et al. 2018. Characterization of a Novel Thogotovirus Isolated from Amblyomma Testudinarium Ticks in Ehime, Japan: A Significant Phylogenetic Relationship to Bourbon Virus. Virus Research 249 (April): 57–65.

・ Tran NTB, et al. 2022. Zoonotic Infection with OZ virus, a Novel Thogotovirus. Emerging Infectious Diseases 28 (2): 436–39.

 

3

国立感染症研究所

インフルエンザウイルス研究センター 第1室

全国地方衛生研究所

流行株抗原性解析

 国立感染症研究所(感染研)では、国内で流行するインフルエンザウイルスの性状を把握し、インフルエンザ対策およびワクチン株選定に役立てるため、全国地方衛生研究所(地研)で分離・同定されたウイルス株総数の約10%を無作為に抽出し、解析を行っている。

 流行株とワクチン株の抗原性を比較する目的で、フェレット感染血清を用いた赤血球凝集阻止(HI)試験または中和試験による抗原性解析を実施した。

 現行の季節性インフルエンザワクチンは、ワクチン原株として選ばれたウイルスを鶏卵で継代して製造している。そのため、継代の間に、ウイルスが鶏卵に馴化することでアミノ酸置換が起こり、抗原性が変化(抗原変異)することがある。その結果、流行株とワクチン製造株の抗原性が一致しなくなる場合があり、世界的に問題となっている。

 抗原性解析試験:結果の見方

2022/2023シーズン抗原性解析結果 (データ更新日:2023年 3月30日)

A(H1N1)pdm09 図1

20229月以降に分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析したすべての株が、2022/23シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ウィスコンシン/588/2019株と抗原性が類似している細胞分離A/神奈川/IC1920/2019株および卵分離A/ビクトリア/2570/2019株に対するフェレット感染血清とよく反応した。

 

A(H3N2)図2

20229月以降に分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析した多くの株において、2022/23シーズンのWHOのワクチン推奨株である細胞分離A/ダーウィン/6/2021株に対するフェレット感染血清と良く反応した。一方、卵分離A/ダーウィン/9/2021株に対するフェレット感染血清との反応性は若干低下する株が認められた。これはワクチン推奨株の卵での分離・増殖による卵馴化の変異の影響と思われる。

 

B(ビクトリア系統)図3

20229月以降に分離された国内および近隣諸国の流行株について抗原性解析を実施したところ、解析したすべての流行株が、2022/23シーズンのWHOのワクチン推奨株であるB/オーストリア/1359417/2021(細胞および卵分離株)に対するフェレット感染血清とよく反応した。

 

B(山形系統)

2020年3月以降、自然界で流行している山形系統の株は検出されておらず、解析されていない。

 

遺伝子系統樹
 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室が解析した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子配列を用いて、HA遺伝子系統樹を作成した。国内外で流行しているウイルスと比較するため、各地方衛生研究所にて分離された株の遺伝子配列だけではなく、海外で分離された株の遺伝子配列も解析に加えている。なお、海外の研究機関で解析された遺伝子配列はインフルエンザウイルス遺伝子データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data:http://platform.gisaid.org/epi3/frontend)から入手している。 
2022/2023シーズン系統樹(データ更新日:2023年6月29日)NEW

A(H1N1)pdm09図1

近年の流行株はHA遺伝子系統樹内の6B.1A.5a (アミノ酸置換N129D, T185I)に属し、6B.1A.5aは更に6B.1A.5a.1 (D187A, Q189E)と6B.1A.5a.2 (K130N, N156K, L161I, V250A, E506D)(代表株A/Victoria/1/2020, A/Victoria/2570/2019)に分岐している。また6B.1A.5a.2内では、6B.1A.5a.2a(省略名: 5a.2a)(K54Q, A186T, Q189E, R259K, K308R)が、そして更に6B.1A.5a.2a.1(省略名: 5a.2a.1)(P137S, K142R, E224A, D260E, T277A, E356D, I418V, N451H)(代表株A/Wisconsin/67/2022, A/Victoria/4897/2022)のサブクレードが派生し、これらが流行の中心となっている。解析した株のほとんどは5a.2aに属したが、共通アミノ酸置換として 1. D94N (代表株A/Sydney/5/2021)、2. A48P、3. I418Vを持つグループに分かれており、HA遺伝子の多様化が示された。なお解析された国内株のうち、5a.2a.1に属するウイルスは1株のみ確認されている。NAタンパク質にH275Y置換を有するオセルタミビル耐性株の流行は確認されていない

 

A(H3N2)図2

最近の流行株は、HA遺伝子系統樹上のクレード3C.2a1b.2a(K83E, Y94N, T131K, I522M, V529I)内に属している。3C.2a1b.2a 内には3C.2a1b.2a.1(F193S, Y195F, G186S, S198P)および3C.2a1b.2a.2(F193S, Y195F, Y159N, T160I, L164Q, G186D, D190N)が派生している。流行の中心である3C.2a1b.2a.2内では更に、3C.2a1b.2a.2a (H156S)(省略名: 2a、代表株A/Darwin/9/2021)、3C.2a1b.2a.2b (E50K, F79V, I140K) (省略名: 2b)、3C.2a1b.2a.2c (S205F, A212T) (省略名: 2c)、3C.2a1b.2a.2d (G62R, H156Q, S199) (省略名: 2d)(系統樹での表示なし)が分岐している。また2a 内には2a.1 (D53G, D104G, K276R), 2a.1a (2a.1 + L157I, S262N), 2a.1b (2a.1 + I140K, R299K), 2a.2 (2a + I25V, D53G, R201K, S219Y), 2a.3 (2a + D53N, N96S, I192F, N378S) , 2a.3a (2a.3 + E50K), 2a.3a.1 (2a.3a + I140K, I223V), 2a.3b (2a.3 + I140M)が出現しており遺伝子的に多様化が進んでいる。国内流行株では、2022年7〜8月は2a内でD53N, P289S, R307Kを持つウイルスが主流であったが、2022年9月以降は2a.3a (37.5%)、2b (32.1%)、2a.3a.1 (13.1%)に属するウイルスが主流となっている。

 

B (ビクトリア系統)図3

HA遺伝子系統樹上のクレードV1A.3[K136E+3アミノ酸欠損(162〜164番目のアミノ酸)、代表株: B/Washington/02/2019, B/Victoria/705/2018]内にV1A.3a (G184E、N197D、R279K)が派生し、さらにV1A.3a.1 (V220M、 P241Q)およびV1A.3a.2 (A127T、P144L、K203R、代表株:B/Austria/1359417/2021)が分岐している。解析株は全てV1A.3a.2に属し、D197EまたはA202Vを有するグループに属した。

 

B (山形系統)

2020年3月以降、自然界で流行している山形系統の株は検出されておらず、解析されていない。

 

 

 

 

 

2023年6月23日

国立感染症研究所

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<一般の方向け>

問1.オズウイルスとはなんですか。感染するとどのような病気になりますか?

答1. 2018年に新たに分離・同定されたウイルスです。感染した場合、どのような症状がでるかについてはまだ詳しいことはわかっていません。研究によると、本ウイルスに過去に感染したことを示す抗体を持っているヒトもいることがわかっているので、感染に気づかないもしくは軽症な場合もあると考えられます。

 

問2.オズウイルス感染症は世界のどこで発生していますか?

答2. これまで世界でオズウイルス感染症を発症した報告はなく、本邦で2023年6月に報告された2022年に発症した症例が初めての報告です(IASR速報)。

 

問3.オズウイルスにはどのようにして感染するのですか?

答3. オズウイルスは国内のマダニから見つかっているので、ウイルスを保有しているマダニに刺されることにより感染する可能性が考えられますが、感染ルートに関する十分な知見はまだ得られていません。

 

問4.マダニは、屋内にいるダニとは違うのですか?

答4. マダニと、食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するダニとでは種類が異なります。マダニ類は、固い外皮に覆われた比較的大型(吸血前3~4mm)のダニで、主に森林や草地等の屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。日本でも全国的に分布しています。

 

問5.どのようなマダニがオズウイルスを保有しているのですか?

答5. 国内では、これまでタカサゴキララマダニというマダニからウイルスが見つかっています。

 

問6.オズウイルス感染症にかからないために、どのように予防すればよいですか?

答6. 現時点では、感染経路は不明ですが、ウイルスを持ったマダニに刺されることにより感染する可能性が考えられることから、マダニに刺されないようにすることが重要です。特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては注意してください。オズウイルス感染症だけではなく、国内で毎年多くの報告例がある、つつが虫病や日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大事です。DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫除け剤の中には、皮膚に直接塗布するものや服の上から用いるものがあり、補助的な効果があると言われています。また、屋外活動後はマダニに刺咬されていないか確認して下さい(参考ウェブサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html)。
吸血中のマダニに気が付いた際は、無理に引き抜こうとせずに、医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。また、マダニに刺された後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合はすみやかに医療機関で診察を受けて下さい。 その際、マダニに刺されたことを医師に説明して下さい。

 

問7.国内で患者が報告された地域は特に感染のリスクが高いのですか?

答7. 現時点では、詳細な感染経路は不明ですが、オズウイルスを媒介すると考えられるマダニは主に関東以西の全国に分布しており、今回患者が報告された地域以外のマダニからオズウイルスが検出されたことが報告されています。また、野生動物の血清抗体調査で今回患者が報告された地域以外からオズウイルスの感染歴があると考えられる野生動物が確認されていることから、今回患者が報告された地域が他の地域と比較して感染のリスクが高いというわけではありません。

 

問8.動物はマダニに刺されてオズウイルスに感染するのですか?

答8. 一般に、マダニは野外でヒトを含む多くの種類の動物を吸血することが知られています。国内の野生動物(サル、イノシシ、シカ)を調査したところ、オズウイルスへの感染が示唆される動物もいることがわかっています。

 

 

<医療従事者等の専門家向け>

問1.オズウイルスはどのようなウイルスですか?

答1. オズウイルスは、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属する、6分節一本鎖マイナス鎖RNAを有するエンベロープウイルスです。オルソミクソウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、消毒用アルコールなどで急速に失活します。

 

問2.潜伏期間はどのくらいですか?どのような症状が出ますか?

答2. ヒトにおける感染症例の報告は1例のみであり、潜伏期間や特徴的な症状はまだわかっていません。症例の詳細はIASRの報告をご覧ください(IASR速報)。

 

問3.検査所見の特徴はどのようなものですか?

答3. ヒトにおける感染症例の報告は1例のみであり、一般的なことはまだわかっていません。症例の詳細はIASRの報告をご覧ください(IASR速報)。

 

問4.どのようにして診断すればよいですか?

答4. 感染経路について現時点で確立された知見はありませんが、マダニに刺された後に、原因不明の発熱等体調不良が生じた時に鑑別疾患の一つとして挙げることが考えられます。また、IASRに報告された1例ではウイルス性心筋炎がみられましたが、特徴的な症状や心筋炎の発生頻度などはわかっていません。確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。なお、患者がマダニに刺されたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も考えられます。

 

問5.治療方法はありますか?

答5. 現時点では有効な治療薬に関する知見はなく、対症療法のみとなります。

 

問6.患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は何ですか?

答6. 患者の血液や体液にはウイルスが存在する可能性があるため、標準予防策を遵守することが重要です。

 

問7.検査方法等、技術的な内容の相談窓口を教えてください。

答7. 国立感染症研究所感染病理部 pathology[アットマーク]nih.go.jpにお問い合わせください。
*[アットマーク]を@に置き換えて送信してください。

 

 

関連項目

オズウイルス感染症とは

 

IASR-logo

初めて診断されたオズウイルス感染症患者

(速報掲載日 2023/6/23) (IASR Vol.44 p109-111:2023年7月号
 

オズウイルス(Oz virus:OZV)はオルソミクソウイルス科(Family Orthomyxoviridae)トゴトウイルス属(Genus Thogotovirus)に分類される新規RNAウイルスである。2018年に本邦でタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)より分離同定され1)、野生動物の血清抗体調査によって国内での広い分布が予測されていたが2)、世界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていなかった。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan