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Essential role of TMPRSS2 in SARS-CoV-2 infection in murine airways

Naoko Iwata-Yoshikawa1, Masatoshi Kakizaki1, Nozomi Shiwa-Sudo, Takashi Okura, Maino Tahara, Shuetsu Fukushi, Ken Maeda, Miyuki Kawase, Hideki Asanuma, Yuriko Tomita, Ikuyo Takayama, Shutoku Matsuyama, Kazuya Shirato, Tadaki Suzuki, Noriyo Nagata*, Makoto Takeda*(1 equal contribution, * corresponding authors)

Nature Communications (Published online 15 October 2022)
https://doi.org/10.1038/s41467-022-33911-8

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ウイルス粒子表面のスパイク蛋白の働きによって細胞に吸着し、ウイルスの膜と細胞の膜とを融合させることで感染します。ただし、このスパイク蛋白がこのような働きをするためには、感染しようとする細胞がもつ蛋白分解酵素の力が必要です。しかし、蛋白分解酵素には沢山の種類があり、SARS-CoV-2が気道の細胞に感染して、肺炎を起こす時に働いている蛋白分解酵素が何であるのかは、はっきりとはしていませんでした。国立感染症研究所のウイルス第三部(竹田誠部長:現在東京大学医学部微生物学教授)、感染病理部の永田典代室長らを中心とした研究チームでは、気道の上皮に発現しているTMPRSS2と呼ばれる蛋白分解酵素に注目して研究を進めてきました。マウスにおけるTMPRSS2の遺伝子を人為的に欠損させると、SARS-CoV-2は、その個体の鼻腔や肺の中で増殖することができなくなり、肺炎などの病気を起こすことができなくなりました。この成果は、TMPRSS2がSARS-CoV-2による肺炎の発症に非常に重要であることを示しています。そして、この成果は、SARS-CoV-2による肺炎に対する治療法の開発に貢献すると考えられます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)、JSPS科研費、光科学技術研究振興財団、内藤記念科学振興財団、日本呼吸器財団の助成を受けて成されました。

 

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