vaccine-2024-02
Prophylactic vaccination inducing anti-Env antibodies can result in protection against HTLV-1 challenge in macaques

Nakamura-Hoshi M, Hiroshi I, Nomura T, Nishizawa M, Hau TTT, Kuse N, Okazaki M, Ainai A, Suzuki T, Hasegawa H, Yoshida T, Yonemitsu K, Suzaki Y, Ami Y, Yamamoto H, Matano T

 Mol Ther, Epub (11:S1525-0016(24)00323-X, 2024).

HTLV-1感染拡大抑制は、近年、国内外の重要課題とされ、ワクチン開発が求められている。HTLV-1はcell-cell感染により伝播するため、抗体による感染防御が可能かどうかが問題であった。本研究は、カニクイサルHTLV-1チャレンジモデルを用い、抗Env抗体誘導ワクチンの感染防御効果を明らかにした。ワクチン接種群10頭のうち、抗HTLV-1中和抗体誘導の認められた8頭のみで、チャレンジ後、感染が防御され、プロウイルスが検出されなかった。このうち5頭でCD8涸渇実験を行ったところ、3頭ではプロウイルス出現や抗HTLV-1抗体上昇が検出されず、機能的にsterlileな感染防御効果が示された。本結果は、予防HTLV-1ワクチン開発における抗Env抗体誘導戦略の合理性を示すものである。

Mucosal adjuvanticity and mucosal booster effect of colibactin-depleted probiotic Escherichia coli membrane vesicles

Uchiyama H, Kudo T, Yamaguchi T, Obana N, Watanabe K, Abe K, Miyazaki H, Toyofuku M, Nomura N, Akeda Y, Nakao R.

 Human Vaccines & Immunotherapeutics.
2024 Dec 31;20(1):2337987.
doi: 10.1080/21645515.2024.2337987. Epub 2024 Apr 24.

細菌が産生する膜小胞を活用した新たなワクチンの開発に向けて、細菌由来毒素コリバクチン (Clb)を産生しないプロバイオティックス大腸菌株を作製した。Clb産生、非産生株の培養上清から回収した膜小胞をマウス鼻腔に投与したところ、Clbを含む膜小胞と比べClbの無い膜小胞のアジュバント活性は高かった。また、異種抗原を発現するClb非産生株を作製後、膜小胞を回収して皮下へ初回投与後、同じ膜小胞による皮下または経鼻でのブースター効果について検討した。その結果、2, 3回目も皮下投与した場合と比べ、2, 3回目に経鼻投与すると血中の抗原特異的IgG産生は同程度だが、血中と粘膜面での抗原特異的IgA産生は増強した。以上より、皮下と経鼻のルートを組み合わせることで膜小胞ワクチンの効果が向上する可能性が示唆された。

本研究はJSPSの支援を受けて実施された。

A bivalent outer membrane vesicle-based intranasal vaccine to prevent infection of periodontopathic bacteria

Ryoma Nakao, Satoru Hirayama, Takehiro Yamaguchi, Hidenobu Senpuku, Hideki Hasegawa, Tadaki Suzuki, Yukihiro Akeda, Makoto Ohnishi.

 Vaccine, 2023 Jun 9; S0264-410X(23)00619-9. doi: 10.1016/j.vaccine.2023.05.058

歯周病の制圧は、有史以来人類の願いである。本論文では、歯周病原細菌P. gingivalis (Pg) とA. actinomycetemcomitans (Aa) が放出する外膜小胞 (OMVs) による経鼻ワクチンの効果と安全性について、マウスモデル等で検討を行なった。Pg OMVsはAa OMVsと較べ内毒素活性・免疫誘導活性が弱く単体ではワクチンとして機能しないが、Pg とAaの両方のOMVs (二価ワクチン) を経鼻投与することで、両菌に対する特異的な血清IgGと唾液IgAが強く誘導された。口腔感染実験では、二価ワクチンを投与するとPgとAaの口腔内菌数は有意に減少した。また、二価ワクチンのマウス脳内攻撃による中枢神経系毒性は認められなかった。二価OMVsワクチンの経鼻投与で口腔からPg やAaを排除できる可能性が示された。

本研究はJSPS、AMEDの支援を受けて実施された。

Saturation time of exposure interval for cross-neutralization response to SARS-CoV-2: implications for vaccine dose interval

Sho Miyamoto, Yudai Kuroda, Takayuki Kanno, Akira Ueno, Nozomi Shiwa-Sudo, Naoko Iwata-Yoshikawa, Yusuke Sakai, Noriyo Nagata, Takeshi Arashiro, Akira Ainai, Saya Moriyama, Noriko Kishida, Shinji Watanabe, Kiyoko Nojima, Yohei Seki, Takuo Mizukami, Hideki Hasegawa, Hideki Ebihara, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Maeda Ken, Tadaki Suzuki.

 iScience. 2023 Apr 106694.

免疫逃避能の高いSARS-CoV-2オミクロン系統への中和抗体を誘導するためには十分なワクチン接種間隔が必要である。しかしながら、2回目から3回目ワクチン(ブースター)接種の間隔は世界保健機関(WHO)で4〜6ヶ月と推奨されているものの、科学的な裏付けは限定されている。私達は2回ワクチン接種後から感染までの曝露間隔が多様なブレークスルー感染者(ワクチン接種後感染者)血清を用いて、交差中和反応の誘導に必要な時間を推定した。曝露間隔が異なるオミクロン流行前と流行期ブレークスルー感染者血清の中和抗体価を用いて交差中和反応の上昇と飽和に至る時間を推定した。

オミクロン系統に対する交差中和反応の飽和には2回ワクチン接種後から2〜4ヶ月の間隔が必要であると推定され、その日数は祖先株から抗原性が遠い系統ほど延長した。様々なSARS-CoV-2オミクロン系統を中和する交差中和反応を最大化するためには、2回目から3回目のワクチン接種間隔を4ヶ月以上とすることが重要であると示唆された。

Dose-sparing effect of Sabin-derived inactivated polio vaccine produced in Japan by intradermal injection device for rats

Eriko Itoh, Sakiko Shimizu, Yasushi Ami, Yoichiro Iwase, and Yuichi Someya

 Biologicals, Vol. 82, 2023.

世界的に不活化ポリオワクチンの接種がなされるようになり、ワクチンの不足が懸念されている。不活化ポリオワクチンは通常筋肉内もしくは皮下に接種されるが、強毒株由来不活化ポリオワクチン(ソークワクチン)の皮内接種の検討により、1回の接種用量を1/5に削減することが実証されており、ワクチン不足への対策のひとつとなりうる。本研究では、セービン株由来不活化ポリオワクチンについて、皮内接種により同様の効果が認められるか、ラットを用いて検証した。皮内接種はテルモ株式会社が開発した皮内注射デバイス、イムサイスをラット用に改造した専用デバイスを用いた。セービン株由来不活化ポリオワクチンの1ヒト用量を筋肉内に接種する群と1/5ヒト用量を接種した群とを比較したところ、同等の中和抗体価を得たことから、セービン株由来不活化ポリオワクチンにおいてもソークワクチンと同様に、皮内接種により1/5量まで投与量を削減することができることが示された。

本研究はテルモ株式会社との共同研究契約に基づき実施された。

Non-Omicron breakthrough infection with higher viral load and longer vaccination-infection interval improves SARS-CoV-2 BA.4/5 neutralization

Sho Miyamoto, Takeshi Arashiro, Akira Ueno, Takayuki Kanno, Shinji Saito, Harutaka Katano, Shun Iida, Akira Ainai, Seiya Ozono, Takuya Hemmi, Yuichiro Hirata, Saya Moriyama, Ryutaro Kotaki, Hitomi Kinoshita, Souichi Yamada, Masaharu Shinkai, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Tadaki Suzuki.

 iScience. 2023 Feb 17;26(2):105969.

COVID-19症例におけるSARS-CoV-2オミクロンなどの変異ウイルスに対する免疫応答は、ワクチン接種や感染の有無など様々な要因に影響される。既存の免疫力を有するCOVID-19症例におけるSARS-CoV-2に対する中和活性の向上の要因を解明することは、オミクロンなどの抗原性の異なる変異ウイルスに対する幅広い中和抗体を誘導するブースターワクチンの改良に役立つ。

本研究により、ブレークスルー感染後のオミクロンに対する血清中和活性の大きさと幅は、主に上気道ウイルス量とワクチン接種から感染のインターバルによって誘導されることが明らかとなった。抗原性の離れたオミクロンBA.5亜系統までカバーする広い血清中和活性は、高ウイルス量かつ長いインターバルの症例で観察された。抗原地図を描くことで、変異ウイルスに対する中和の幅を広げる上で,インターバルが重要な役割を担っていることを明らかにした.この成果は、変異ウイルスに対する耐性を持つブースターワクチンの開発において、抗原設計と同様に投与間隔の最適化が重要であることを示している。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan