エムポックスとは

令和5年5月26日改訂国立感染症研究所 エムポックスは、モンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス、以後エムポックスウイルスと表記)感染による急性発疹性疾患である。感染症法では4類感染症に位置付けられている。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2−4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。

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アフリカ大陸以外の複数国で報告されている
エムポックスについて(第1報)

2022年5月24日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のないエムポックス患者が相次いで報告されており、常在国外では前例のない流行となっている。世界的にエムポックスに対するサーベイランス体制が十分整っていないことから、水面下で感染が広がっている可能性があり、今後も感染者の報告が続く可能性がある。
  • エムポックスはヒトからヒトに容易に伝播するものではない。感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播する。現時点の一連の報告では、感染者にみられた病変の部位などから性的接触に伴う伝播があった可能性も示唆されているが、詳細な感染経路は調査中である。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。
  • 5月24日現在、日本国内においてエムポックスの報告はなく、大規模に市中に拡大する可能性は低く、日常生活における感染リスクは低い。ただし、今後国内でも感染者が出る可能性はあり、検査診断を含めた対応について整備しておく必要がある。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者では、皮疹の出現を含む体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックス発生国への渡航歴があり、エムポックス患者や常在国の動物との接触があった者
     ➢エムポックス発生国への渡航歴がある者との濃厚接触(性的接触を含む)があった者
     ➢複数または不特定の者と性的接触のあった者
  • 諸外国では症例の探索、感染経路の調査が行われており、我が国では諸外国での知見を注視していくとともに、国内の発生状況を注視し、サーベイランス体制を強化する。患者発生時には積極的疫学調査により実態を速やかに明らかにする必要がある。また、適切に対応すれば感染拡大の封じ込めが可能な疾患であるので、注意喚起、早期の患者発見と対応が重要である。
  • 特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながるため、客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動が推奨される。

 

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