エムポックスとは

令和5年5月26日改訂国立感染症研究所 エムポックスは、モンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス、以後エムポックスウイルスと表記)感染による急性発疹性疾患である。感染症法では4類感染症に位置付けられている。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2−4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。

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複数国で報告されているエムポックスについて
(第4報)

2022年11月9日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告されており、7月23日に世界保健機関(WHO)事務局長が今回のエムポックスの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言した。2022年1月1日以降、2022年11月1日現在までに全世界で77,000例以上の症例が報告されている。
  • 常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; Men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。MSM以外の男性、小児、女性の感染例の報告もある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者にみられた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播があった可能性が指摘されている。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。2022年1月1日以降、常在国外を含め死亡例が36例報告されている。
  • 11月2日現在、日本国内においては7例が探知されている。 うち3例は海外渡航歴があり、2例は海外渡航歴のある者との接触が確認されているが、9月下旬以降に探知された2例については海外渡航歴や海外渡航歴のある者との接触が確認できていない。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢サル等の患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
    なお、常在国外で報告されている症例については、皮疹の特徴や症状の経過に、これまでに知られているエムポックスの症状の特徴とは異なる所見があることが報告されており、注意が必要である。
  • 諸外国では症例の探索、感染経路の調査が行われている。我が国では諸外国での知見を注視していくとともに、国内サーベイランスを強化し、患者発生時には積極的疫学調査により実態を速やかに明らかにする体制を構築している。また、適切に対応すれば感染拡大の封じ込めが可能な疾患であるので、注意喚起、早期の患者発見と対応が重要である。
  • 特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながるため、客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

複数国で報告されているエムポックスについて
(第3報)

2022年9月13日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告されている。2022年1月1日以降、2022年9月10日現在までに全世界で54,000例以上の症例が報告されており、前例のない流行となっている。
  • 常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; Men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。少数ではあるが、MSM以外の男性、小児、女性の感染例の報告もある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者にみられた病変の部位などから性的接触に伴う伝播があった可能性が指摘されている。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。2022年1月1日以降、従来の常在国であるナイジェリアと中央アフリカ共和国、ガーナから死亡例が10例報告されたほか、常在国外からもスペイン、ベルギー、インド、ブラジル、エクアドル、キューバから合わせて8例が報告されるなど、2022年において18例の死亡例が報告されている。
  • 9月12日現在、日本国内においては4例の報告がある。 うち3例は海外渡航歴があり、1例は海外渡航歴のある者との接触が確認されている。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢サル等の患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
    なお、常在国外で報告されている症例については、皮疹の特徴や症状の経過に、これまでに知られているエムポックスの症状の特徴とは異なる所見があることが報告されており、注意が必要である。
  • 諸外国では症例の探索、感染経路の調査が行われている。我が国では諸外国での知見を注視していくとともに、国内サーベイランスを強化し、患者発生時には積極的疫学調査により実態を速やかに明らかにする体制を構築している。また、適切に対応すれば感染拡大の封じ込めが可能な疾患であるので、注意喚起、早期の患者発見と対応が重要である。
  • 特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながるため、客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

2022年8月12日
2023年5月26日 一部修正

国立感染症研究所

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目次

1.病原体・感染経路などについて  3

Q1_1. 「エムポックス」とは何ですか?  3

Q1_2. エムポックスウイルスとは何ですか?  3

Q1_3. エムポックスはどこの地域で発生していますか?  4

Q1_4. なぜこの感染症は「サル痘」と呼ばれていたのですか?  4

Q1_5. 動物からヒトに感染しますか?  5

Q1_6. ヒトからヒトに感染しますか?  5

Q1_7. 子どもも感染しますか?  5

2.症状について  6

Q2_1. どのような症状がありますか?  6

Q2_2. 感染すると死亡してしまいますか?  7

Q2_3. エムポックスを疑う症状があらわれたときは、どうしたらよいですか?  7

3.国内の状況について  8

Q3_1. 日本国内の状況は、どうなっていますか?  8

Q3_2. 感染研はどのような取り組みを行っていますか?  8

4.予防について  9

Q4_1. 何に気を付けたら良いですか?  9

Q4_2. 同居する家族がエムポックスに感染してしまったら、家庭内で感染を広げないために、何に気を付けたら良いですか?  10

Q4_3. エムポックスにワクチンはありますか?  10

Q4_4. 動物を飼育していますが、何かすることはありますか?  11

Q4_5. 動物園や動物とのふれあいは避けなければいけませんか?  11

5.治療、検査、調査などについて  12

Q5_1. 治療方法はありますか?  12

Q5_2. 医療機関を受診して、エムポックスの感染が疑われる場合、どんな検査を受けることになりますか?  12

Q5_3. エムポックスの疑いで医療機関を受診した場合や、入院した場合、費用が掛かりますか?

※ 2023年5月26日、改正政令によって名称が「サル痘」から「エムポックス」に変更されたことに伴い、一部内容を修正しています。

複数国で報告されているエムポックスについて
(第2報)

2022年7月12日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のないエムポックス症例が6,000例以上報告されており、常在国外では前例のない流行となっている。世界的にエムポックスに対するサーベイランス体制が十分整っていないことから、水面下で感染が広がっている可能性があり、今後も感染者の報告が続く可能性がある。
  • 今回の流行で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; Men who have sex with men) が多く含まれていることが各国から報告されている。
  • エムポックスはヒトからヒトに容易に伝播するものではない。感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播する。現時点の一連の報告では、感染者にみられた病変の部位などから性的接触に伴う伝播があった可能性が指摘されている。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。2022年5月以降では、従来の常在国であるナイジェリアと中央アフリカ共和国で死亡例が3例報告されたが、常在国外での死亡例は報告されていない。
  • 7月12日現在、日本国内においてエムポックスの報告はない。ただし、今後国内でも感染者が出る可能性はあり、検査・診断を含めた対応について整備が進められている。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者では、皮疹の出現を含む体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢サル等の患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
    なお、常在国外で報告されている症例については、これまでに知られているエムポックスの症状の特徴とは異なる所見があることが報告されており、注意が必要である。
  • 諸外国では症例の探索、感染経路の調査が行われている。我が国では諸外国での知見を注視していくとともに、国内サーベイランスの強化させていく。患者発生時には積極的疫学調査により実態を速やかに明らかにする必要がある。また、適切に対応すれば感染拡大の封じ込めが可能な疾患であるので、注意喚起、早期の患者発見と対応が重要である。
  • 特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながるため、客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

(掲載日2022年6月15日)
(一部改正2022年7月8日)
(一部改正2023年5月26日)
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター国際感染症センター
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エムポックスは接触感染や飛沫感染を起こすが、日常生活の中で空気感染を起こすことは確認されていない。ただし、空気感染を起こすと考えられている麻しんや水痘との臨床的な鑑別が困難であるため、発熱と発疹がありそれらの感染症が否定できない間は、エムポックス疑いの患者には空気予防策の実施が求められる。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan