掲載日:2021年8月20日
第48回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月18日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第48回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。
英語版(準備中)
感染状況について
全国の新規感染者数は、報告日別では、過去最大の水準を更新し続けており、直近の1週間では10万人あたり約101となっている。感染拡大の歯止めがかからず、全国的にほぼ全ての地域で新規感染者数が急速に増加しており、これまでに経験したことのない感染拡大となっている。
感染者数の急速な増加に伴い、重症者数も急激に増加し、過去最大の規模となっている。また、療養者数の増加に伴い、入院等調整中の者の数も急速に増加している。公衆衛生体制・医療提供体制が首都圏を中心に非常に厳しくなっており、災害時の状況に近い局面が継続している。
- 実効再生産数:
- 全国的には、直近(8/1時点)で1.15と1を上回る水準が続いており、首都圏では1.11、関西圏では1.16となっている。
感染状況の分析【地域の動向等】
※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。
- 首都圏(1都3県)
- 東京では、緊急事態措置が続く中、新規感染者数は今週先週比が1.14*で増加が続き、約228。過去最大の規模の感染拡大が継続。20-40代が中心だが、高齢者や10代以下の感染者数も増加傾向。入院者数では20-50代を中心に増加が継続。60代以上でも増加の動き。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数では、40-60代を中心として増加傾向が継続。入院者数と重症者数は共に過去最高の水準を更新し続けており、夜間をはじめ新規の入院受け入れ・調整が困難な事例が生じている。感染者の急増に伴い、自宅療養や調整中の者も急激に増加。さらに、集中治療室等での対応など一般医療の制限も生じている。埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数は20-30代中心に急増が続き、それぞれ、約149、138、160。東京同様、病床、重症病床の使用率が急速に上昇している。東京では夜間滞留人口は、前回宣言時の水準には届いていないものの着実に減少。埼玉、千葉、神奈川でも夜間滞留人口が減少を続けている。滞留人口の減少が新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
- 沖縄
- 緊急事態措置が続く中、新規感染者数は今週先週比が1.26*で増加が続き、約312と全国で最も高く、過去に例のない水準で増加が継続。20-30代が中心。病床使用率及び重症病床使用率は8割を超える厳しい状況が続き、調整中の者も増加している。夜間滞留人口はお盆に入り再び増加傾向にあり、感染の拡大が継続する可能性。
- 関西圏
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大阪では、新規感染者数は今週先週比が1.46で急速な増加が続き、約126。20-30代が中心。入院者数は増加が続き、重症者数も増加。夜間滞留人口は減少傾向にあり、新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
滋賀、京都、兵庫でも、新規感染者数の増加傾向が続き、それぞれ、約76、104、81。いずれも、入院者数が急速に増加。京都では重症病症使用率が急速に上昇し、厳しい状況となっている。夜間滞留人口は、滋賀では微減、京都では横ばい。兵庫では急激な減少が見られる。減少している地域で新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
奈良でも新規感染者数が急速な増加傾向が続き、約63。和歌山でも新規感染者数が増加に転じており、約34。
- 北海道
- 新規感染者数は今週先週比が1.26で増加が続き、約55(札幌市約85)。重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口の減少は見られるが、依然高い水準であり、感染の拡大が継続する可能性。
* 首都圏や沖縄県における新規感染者数について、検査陽性率が上昇している状況下では、実際の感染者数が過小に評価されているとの指摘もあるため、トレンドの分析には注意が必要である。
- 北関東
- 茨城、栃木、群馬では、新規感染者数は、増加傾向が続き、それぞれ約65、55、69。いずれも、入院者数、重症者数が増加傾向で、病床使用率は厳しい状況となっている。夜間滞留人口は、茨城では、直近では横ばいとなっているものの、いずれも減少傾向。新規感染者の減少につながるか注視が必要。
- 中京・東海
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愛知では、新規感染者数は、今週先週比が1.90で急速な増加が続き、約62。静岡では、新規感染者数は、今週先週比が1.74で急速な増加が続き、約66。いずれも、入院者数、重症者数の増加が継続。いずれも、夜間滞留人口の減少が見られ、新規感染者の減少につながるか注視が必要。
岐阜、三重でも新規感染者数の急速な増加がみられ、それぞれ約54、56。特に岐阜では、今週先週比が2を超える水準が継続。
- 九州
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福岡では、新規感染者数は、今週先週比が1.18で増加傾向が続き、約112。入院者数は増加が継続し、厳しい状況となっている。重症病床使用率は2割を切る水準。夜間滞留人口は急速に減少しており、新規感染者数の減少につながるか注視が必要。 熊本、鹿児島でも、新規感染者数の増加が続き、それぞれ、約77、70。特に鹿児島では、今週先週比が2を超えており、急速に増加。鹿児島では、病床使用率が5割を超える厳しい状況となっている。
その他の各県でも急速な新規感染者数の増加が見られており、佐賀、長崎、大分、宮崎では、それぞれ、約76、33、58、37と25を超えており、特に、佐賀、大分では、急速な感染拡大となっている。
- その他重点措置対象地域
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福島では、新規感染者数は、今週先週比が1.40で急速な増加傾向が続き、約45。病床使用率は5割を超え厳しい状況。夜間滞留人口の減少が見られており、新規感染者の減少につながるか注視が必要。石川では、新規感染者数は約47で下げ止まりの動きが見られる。夜間滞留人口の減少は見られるがその動きは鈍く、感染の再拡大が懸念される。
その他、新たに重点措置地域とされた、宮城、富山、山梨、岡山、広島、香川、愛媛でも、新規感染者数の急速な増加傾向が続いており、それぞれ、約51、45、60、63、42、51、38。特に、宮城、富山、岡山、広島、香川、愛媛では、今週先週比が1.5を超える水準で急速に増加している。宮城、山梨、香川では病床使用率が5割を超える、厳しい状況となっている。
- 上記以外
- その他の地域でも多くの地域で急速な新規感染者数の増加が見られており、特に、青森、新潟、長野、山口、高知では、それぞれ約27、27、30、29、26と25を越え、急速な感染拡大となっている。
変異株に関する分析
- B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算、8/2-8/8)が約79%。直近では各地で 9割を超える状況と推計されており、一部の地域を除き、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)からほぼ置き換わったと考えられる。
今後の見通しと必要な対策
- これまでの緊急事態措置や重点措置の継続や拡大にも関わらず、滞留人口の減少は限定的で、デルタ株への置き換わりが進み、感染者数がこれまでにはない規模で全国的に増加しているが、今後お盆の影響もあり、更に感染者数が増加してくることも想定される。こうした中で、重症者数も過去最大規模となり、死亡者数の増加傾向も見え始めているが、高齢の感染者も増加しており、今後さらに死亡者が増加することが懸念される。全国各地で、災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。
- 一方、医療提供体制や公衆衛生体制の拡充には限界がある。中等症や重症患者の入院調整対応が困難となり、手術など一般医療の制限や救急での搬送が困難な事例も生じている。このままでは、救える命が救えなくなるような危機的な状況さえ危惧され、一刻も早く、現下の感染拡大を速やかに抑えることが必要である。ただちに、新規感染者数の増加を速やかに減少させるためには、接触の機会を更に削減するとともに、医療体制の強化、保健所業務の重点化や支援の強化などが必要である。
- 日中及び夜間の滞留人口は減少傾向が見られるものの、緊急事態宣言直前の5割減には達しておらず、40~64歳層も多い。PCR陽性率も20%以上の地域も多く、検査による感染者数の把握が不十分と考えられる。感染力が高いデルタ株はこれまでとは違うレベルのウイルスであるという危機感を行政と市民が共有し、今一層の取組が必要。
このため、改定された基本的対処方針や8月12日の新型コロナウイルス感染症対策分科会提言を踏まえ、国や自治体においてはこれまでの対策のより一層の強化やきめ細やかな呼びかけを行うとともに、市民の生活において外出を半分以下とし、混雑した場所を避けることで、接触機会を削減していただくことが必要。
★【市民生活で求められる対策】県境を越えた移動・外出を控え、普段会わない人とは会わないように
普段会わない人と会う機会が感染リスクを高めることが示されており、そのような感染の機会をできるだけ減らすことが必要。
既にワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも、県境を越えた移動や外出を控え、できるだけ家庭で過ごしていただくことが必要。
★【社会の対策】基本的な感染対策の徹底を
特に働く年代層はワクチン接種の途上であり、既にワクチンを接種した方も含め、改めて、基本的感染防止対策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者の出社の自粛などを徹底すべき。さらに、少しでも体調が悪い場合、軽い症状でも早めの受診、積極的な検査、適切な療養に繋げることが必要。あわせて、引き続き、ワクチン接種を積極的に進めることが必要。
★【医療体制の対策】当面続く危機的状況に際し、最大限に効率的な医療資源の活用を
感染が急拡大する地域では、それぞれの地域の状況を踏まえ、都道府県が主体となって地域の医療資源を最大限活用して、新たに特例承認された中和抗体薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制を早急に整備することにより、必要な医療を確保することが求められる。さらに、全国的に厳しい感染状況が少なくとも当面は続くという前提で、改正された感染症法第16条の2の活用や臨時の医療施設などの整備を含め、早急に対策を進める必要がある。