注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認されて以降、中国を中心に感染が国際的に広がりを見せており、世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。
2020年2月25日9時現在の患者数は、世界で計79,370例(内訳:国内以外では、中国77,658例、香港81例、マカオ10例、台湾30例、タイ35例、韓国833例、米国35例、ベトナム16例、シンガポール90例、フランス12例、オーストラリア22例、マレーシア22例、ネパール1例、カナダ10例、カンボジア1例、スリランカ1例、ドイツ16例、アラブ首長国連邦13例、フィンランド1例、イタリア229例、インド3例、フィリピン3例、英国13例、ロシア2例、スウェーデン1例、スペイン2例、ベルギー1例、エジプト1例、イラン61例、イスラエル2例、レバノン1例、クウェート3例、バーレーン1例、オマーン2例、アフガニスタン1例、イラク1例、日本156例)、死亡者は2,694例とされている。国内では、2020年2月25日午後12時現在で、新型コロナウイルスに関連した感染症の患者が156例報告されている(検査対象となった症例数は計1,846例)。 156例のうち、26例は中国湖北省での滞在歴があった。また2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」については、新型コロナウイルスに関する検査で陽性が確認されたのは、延べ3,894例の検査中691例(うち無症状病原体保有者は380例)となった。なお、国内外の患者数等に関する情報は刻々と変わっていることに注意されたい。 |
指定感染症へと届け出方式が変わった2020年2月1日以降に、2月19日現在でNESIDに届出られた2020年第7週(2020年2月16日)までの105例について記述する。内訳は確定例103例(患者89例、死亡例1例、無症状病原体保有者13例)、疑似症患者2例であった。なお、本症については、サーベイランスシステムが届出に対応可能となった以降の情報のみ反映されていることから、公表データと必ずしも一致しておらず、注意が必要である。
この時点での症例の年齢中央値は63歳(範囲21〜91)で、男女比は1.6:1(男性65例、女性40例)で男性に多かった。
主な症状について、情報が得られている範囲では(一部自由記載情報を含む)、届出時点で発熱76例(72%)、咳49例(47%)、重篤な肺炎10例(10%)、下痢5例(5%)、無症状13例(12%)であった。疑似症患者2例についてはPCR検査実施中であり、他103例は病原体遺伝子あるいは分離・同定による病原体の検出により検査確定となっている。届け出られた感染地域として、国内では東京都が15例、和歌山県7例、神奈川県2例、愛知県2例、他に北海道、千葉県、京都府、大阪府、沖縄県がそれぞれ1例、都道府県不明が17例であった。国外では、中国20例(うち18例は湖北省)、ハワイが1例となっていた(2月20日現在)。これらの一部はチャーター便8例を含んでいる。クルーズ船への乗船に関連する記載が49例で認められた。
新型コロナウイルス感染症は、これまで限られた知見しか得られていないが、飛沫感染・接触感染を主とする感染経路であり、一部の感染者には強い感染力を持つ可能性があると考えられている。臨床的な特徴としては、潜伏期間(2月23日付WHO)は1〜14日(5日間が最も多い)であり、その後、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等の感冒様症状が1週間前後持続することが多い。一部のものは、呼吸困難等の症状を呈し、胸部X線写真、胸部CTなどで肺炎像が明らかになる。また、発病者の多くが軽症であるといわれているが、高齢者や基礎疾患等を有する者においては重篤になる可能性があるため注意が必要である。
2月1日に新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定されたことにより、疑似症患者や確定患者に対する入院措置やそれに伴う医療費の公費負担、検疫における診察・検査等の実施が可能となった。国外への滞在歴の無い感染例の報告が複数地域で相次いでおり、さらに、医療従事者への感染も報告された。このような状況を受け、2月25日には、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が発表され、この中では、感染拡大防止策で、まずは流行の早期終息を目指しつつ、患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、流行の規模を抑えること、重症者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くすこと、社会・経済へのインパクトを最小限に留めること、が現時点での対策の目的とされ、対策の強化が進んでいる。
●新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月25日版)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |