注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認された。世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。その後、世界的な感染拡大の状況、重症度等から3月11日新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的な大流行)とみなせると表明した。
2020年4月22日12時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で2,515,518例(176,049例)、202カ国に広がった。感染者数が1万例を超えたとして報告のあった国は27カ国あり、米国823,257例(44,845例)、スペイン204,178例(21,282例)、イタリア183,957例(24,648例)、ドイツ148,291例(5,033例)、英国129,044例(17,337例)、フランス117,324例(20,796例)、トルコ95,591例(2,259例)、イラン84,802例(5,297例)、中国82,788例(4,632例)、ロシア52,699例(456例)、ブラジル43,079例(2,741例)、ベルギー40,956例(5,998例)、カナダ37,374例(1,728例)、オランダ34,134例(3,916例)、スイス27,982例(1,186例)、ポルトガル21,379例(762例)、インド18,985例(603例)、ペルー17,837例(484例)、アイルランド16,040例(730例)、スウェーデン15,322例(1,765例)、オーストリア14,810例(491例)、イスラエル13,942例(181例)、サウジアラビア11,631例(103例)、日本11,496例(277例)、チリ10,832例(139例)、韓国10,694例(238例)、エクアドル10,398例(507例)であった。
国内は、厚生労働省からの報道発表によると、2020年4月22日12時現在、新型コロナウイルス感染症の患者は7,096例、無症状病原体保有者760例、陽性確定例(症状有無確認中)3,640例、うち死亡者277例と報告されている。PCR検査実施人数は130,587例であった。また、2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」については、4月21日18時現在、PCR検査陽性者数712例、うち無症状病原体保有者331例、死亡者13例であった。なお、国内外の患者数等に関する情報は刻々と変わっていることに注意されたい。
本稿では、2020年2月1日に新型コロナウイルス感染症が指定感染症となった以降、第16週(2020年4月22日)までに感染症発生動向調査(NESID)へ届出られた10,590例(確定例9,438例、無症状病原体保有者1,142例、感染症死亡者の死体10例)(以下、症例という)に関する記述疫学を行う。なお、本症については、サーベイランスシステムが届出に対応可能となった以降の情報のみ反映されていることから、公表データと必ずしも一致しておらず、注意が必要である。以後の情報はNESIDに届け出られた症例全体の内訳である(確認に至る前の報告は含められていない)。 |
症例の性別は、男性6,205例、女性4,383例、不明2例(男女比1.4:1)であり、男性に多かった。
年齢の中央値は48歳(範囲0〜102)であった。年代別分布は10歳未満139例(1.3%)、10代244例(2.3%)、20代1,721例(16.3%)、30代1,641例(15.5%)、40代1,743例(16.5%)、50代1,854例(17.5%)、60代1,331例(12.6%)、70代1,106例(10.4%)、80代625例(5.9%)、90代以上186例(1.8%)であった。
主な症状(重複あり)は、届出時点で発熱8,136例(76.8%)、咳4,877例(46.1%)、咳以外の急性呼吸器症状953例(9.0%)、重篤な肺炎736例(6.9%)であった。
届出都道府県は、東京都3,465例、大阪府1,216例、神奈川県1,174例、千葉県774例、埼玉県661例、兵庫県515例、福岡県466例、愛知県326例、北海道299例、石川県157例、茨城県122例、群馬県121例、広島県120例、岐阜県117例、福井県89例、福島県62例、沖縄県61例、山形県59例、奈良県58例、大分県53例、長野県52例、静岡県50例、新潟県49例、宮城県45例、和歌山県45例、愛媛県42例、高知県40例、栃木県39例、京都府39例、富山県33例、山梨県33例、三重県32例、山口県30例、青森県22例、熊本県17例、宮崎県17例、秋田県16例、岡山県16例、島根県13例、佐賀県12例、長崎県12例、滋賀県8例、鹿児島県8例、徳島県3例、鳥取県1例、香川県1例であった。
国内では、3月上旬から海外との関連が疑われる事例が増加してきた。また、感染源不明の症例が散発的に発生し、3月中旬には感染源不明の症例が占める割合が継続的に増加してきた。3月下旬には、都市部を中心にクラスター(患者間の関連が認められた集団)感染が次々と報告され、感染者数が急増した。4月22日現在、NESID上、報告の最も多かった日は4月9日(606例)、発症の最も多かった日は、4月1日(381例:発症日の判明している症例のみ)であった。その後も届出数の多い状況が続いており、今後の動向に引き続き警戒が必要である(図1、図2)。なお、図1及び図2については、今後の報告により直近の症例が追加されていくため、解釈には注意が必要である。
国内での行政対応については、3月10日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正が閣議決定され、新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなされることになった。3月28日には「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が発表され、この中では、国民の生命を守るためには、感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要であり、「三つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けること、積極的疫学調査等によるクラスターの発生の封じ込めが推進されている。その後、肺炎等の重篤な症例の発症頻度が相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、かつ感染経路が特定できない症例が多数に上っていること、かつ急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることとして、4月7日には7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)に対して、4月16日には全都道府県を対象に、緊急事態宣言が発出された。現在、国の取り組みに並行して、各自治体は流行状況に合わせた様々な取り組みを実施している。
新型コロナウイルス感染症は、これまで限られた知見しか得られていないが、飛沫感染・接触感染を主とする感染経路であり、一部の感染者及び感染者の行動や環境によっては強い感染力を持つ可能性があると考えられている。臨床的な特徴としては、1〜14日(5日間が最も多い)の潜伏期間(2月23日付WHO)を経て、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等で発症し、感冒様症状が1週間前後持続することが多い。一部のものは、呼吸困難等の症状を呈し、胸部X線写真、胸部CTなどで肺炎像が明らかになる。また、発症者の多くが軽症であると考えられているが、高齢者や基礎疾患等を有する者においては重篤になる可能性があるため厳重な注意が必要である。
●新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月22日版)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |