新種のコロナウイルスに関連した重症呼吸器疾患の症例発見のための症例定義と分類
新種のコロナウイルスの検査対象となる症例を決めるために、以下に示す手順を推奨する。この手順は、不要な検査によって医療システムに過重な負荷を与えることなく、新種のコロナウイルスに関連すると疑われる症例を、系統的な診断・調査を確実に行うことを目標としている。ここで示す情報は2例の確定症例のデータに基づいたものであるため、疑われる症例を診察する際にはある程度の臨床的判断が求められる。
〇調査が必要な患者(“調査中の患者”と表現する)
- 急性呼吸器症候群を呈している者(38度以上の発熱と咳を伴うこともある)、かつ
- 臨床的または放射線学的に実質性肺病変(例:肺炎またはAcute Respiratory Distress Syndrome (ARDS))が疑われる、かつ
- 新種のコロナウイルス感染が最近報告された地域、または伝播が起こり得る地域(*)に渡航または居住していた、かつ
- 地域の市中肺炎診療ガイドラインに基づいて実施された検査結果を含め、他の感染症または他の病因で説明できない。
〇調査中の患者の管理 このカテゴリーに該当する症例には、他の病原体(例:streptococcus pneumoniae, hemophilus influenza type B, legionella pneumophilaなどの細菌や、インフルエンザウイルス、RSウイルスなど)の存在を確認するため、地域の市中肺炎診療ガイドラインに基づいて、通常実施される検査を行う。これらの検査結果を待つことなく、新種のコロナウイルスの検査を実施してよい。さらに、化学性肺炎や煙の吸入といった病歴や臨床症状が明らかな症例は調査対象としない。
病因や病原体不明の呼吸器疾患の場合、適切な検体を採取し検査室診断を行う。現在、新種のコロナウイルスの特徴が迅速に明らかになってきており、感度や特異度の高い検査方法を開発中である。WHOは協力検査機関と連携し、この検査方法をできるだけ早く共有していく予定である。
症例の調査中は適切な感染症対策を実施する。必要に応じてWHOの暫定的なガイドラインを参考にしてほしい。
Infection prevention and control of epidemic- and pandemic-prone acute respiratory diseases in health care (WHO/CDS/EPR/2007.6). http://www.who.int/csr/resources/publications/WHO_CDS_EPR_2007_6c.pdf
〇濃厚接触者の管理 発病している疑い症例または確定症例と濃厚接触(**)があった者へは、呼吸器症状の発症がないか注意深く経過観察する。最初の濃厚接触から10日以内に発症を認めた接触者に対しては、その重症度に関わらず“調査中の患者”とし、適切な調査を行う。
検体採取前に患者が死亡するなどして、病理学的検査や検査結果が得られない場合や、他の病原体についての適切な検査が実施できない場合には、下記の“疑い例”に該当するか判断する。
報告のための症例定義 疑い例
- 臨床的、放射線学的、または病理学的に“調査中の患者”の定義に該当するが、何らかの理由で検査による確定診断が不可能な場合、かつ
- 検査診断例の濃厚接触者(**)である、かつ
- 地域の市中肺炎診療ガイドラインに基づいて実施された検査結果を含め、他の感染症または他の病因で説明できない。
確定例 検査診断によって新種のコロナウイルス感染と診断されたもの。
報告 疑い例または確定例と診断された症例は、24時間以内に地域の国際保健規則(IHR)担当者を通じてWHOへ報告する。
*サウジアラビア、カタール(2012年9月29日時点) **濃厚接触者の定義 ・医療従事者や家族、または同様な状況で、症例の世話をした者。 ・症例に症状があった時期に同じ場所に滞在(同居、訪問等)した者。
出典 WHO(GAR) Revised interim case definition – novel coronavirus Interim case definition as of 29 September 2012 http://www.who.int/csr/disease/coronavirus_infections/case_definition/en/index.html
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