新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

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令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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SARS-CoV-2検出検査のRT-qPCR法と抗原定量法の比較

(IASR Vol. 42 p126-128: 2021年6月号)

 
はじめに

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出について, 神戸市健康科学研究所も含め全国の地方衛生研究所ではRT-qPCR法で行っている。RT-qPCR法は, RNA抽出を伴い, 核酸の扱いなどの技術習得が必要で, 検体搬入から結果判定までに約4~5時間を要する。一方で, 抗原定量検査は化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いた検査法で, RT-qPCR法と比較して技術習得が容易であり, 測定時間が35分~1時間程度と短い。また, 抗原定性検査であるイムノクロマト法と比較して, 検体の抗原量を特定できること, および相対的に感度が高いことが利点として挙げられる。しかしながら, 検出感度に関するデータが蓄積されていないため, 低い値が出た際の判定に苦慮することがあった。そこで, 当研究所に搬入された唾液および鼻咽頭ぬぐい液の各検体について, RT-qPCR法と抗原定量法の方法の比較を行った。

材料と方法

 当研究所に搬入された, 唾液(n=117)および鼻咽頭ぬぐい液(n=68)をそれぞれ用いた。

 ウイルスRNA抽出は, QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)を使用した。RT-qPCRは, TaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(Applied Biosystems)を用い, StepOnePlus Real Time PCR System(Applied Biosystems)を使用して反応を行った。primerとprobeは, 国立感染症研究所のプロトコルに従い, N2領域を増幅させるセットを用いた1)。反応ごとに, 500copies/wellのポジティブコントロールおよびnuclease-free waterのみのネガティブコントロールを設けた。45サイクルの反応で, thresholdの0.2を超えたものを陽性と判定した。

 SARS-CoV-2の抗原量(Ag値)は, ルミパルス SARS-CoV-2 Ag(富士レビオ)を用い, ルミパルスG600Ⅱ(富士レビオ)を使用して測定した。検体は希釈せずに測定し, 定量上限である5,000pg/mLを超えたものについては, リン酸緩衝液(PBS)で適宜希釈して再測定を行った。判定方法は, ルミパルスの説明書に従い, 唾液については, 0.67pg/mL以下を陰性, 0.67-4.0pg/mLを判定保留, 4.0pg/mL以上を陽性とし, 鼻咽頭ぬぐい液については, 1.0pg/mL以下を陰性, 1.0-10pg/mLを判定保留, 10pg/mL以上を陽性とした。相関係数(r)は, Pearsonの相関係数によって算出した。

結果および考察

 RT-qPCR陽性検体について, 唾液(Sa)と鼻咽頭ぬぐい液(N)の両方において, Ct値と対数変換した抗原定量値(Ag値)をプロットしたところ, 両値が逆相関した(Sa:r=-0.985, N:r=-0.962)(図1)。また, Ct値が30を超えると, Ag値が判定保留域以下になる傾向にあった(図1)。一方で, RT-qPCR陰性検体については, 鼻咽頭ぬぐい液の1検体(判定保留域)を除いてすべて陰性値であった(図2)。当研究所のRT-qPCRの条件では, ポジティブコントロール(500 copy/well)のCt値は約30であった。つまり, 抗原定量法ではおおむね500copyが検出限界であると考えられた。

 以上のことから, 抗原定量検査法は, RT-qPCR法の結果に高い相関を示すこと, また, Ct値30以上(約500 copy以下)は陰性と判定される傾向にあることが分かった。検査としては, RNA抽出が不要であることと, 測定時間が短いことから, 例えば, 施設内で定期的に行うスクリーニング検査など, 多検体を処理する場合に使用することが考えられる。ただしその際には, ウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性に留意する。また判定保留域になった場合にRT-qPCRを行い, 陰性の場合でも患者の症状や疫学情報と総合的に判断するなどの対応を決めておく必要があると考える。

 謝辞:本稿の執筆にあたり, 神戸市健康局保健所保健課の皆様からの多大なるご協力, ご助言をいただいたことに深謝します。

 

参考文献
  1. Shirato K, et al., Jpn J Infect Dis 73(4): 304-307, 2020

神戸市健康科学研究所感染症部      
 谷本佳彦 森 愛 宮本園子 有川健太郎 岩本朋忠         
神戸市健康科学研究所COVID-19検査チーム

 

 

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