新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報

公開講座

令和6年度 国立感染症研究所研究発表会(学生・若手研究者対象 研究部紹介)

国立感染症研究所では、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫等による各種感染症の克服に向け、数々の基礎・臨床研究に取り組んでいます。 感染症研究を志す若手研究者・医療関係者・学生の皆様のご参加を歓迎します。  2024年5月25日(土)13:00〜18:00 Zoom Webinarで開催いたします。参加を希望...

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令和6年度 感染研市民公開講座 知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 (全6回)

掲載日:2024年5月8日 オンライン企画(世界中どこからでも視聴可能!) 令和6年度 国立感染症研究所 感染研市民公開講座知らなかった、感染症の「へぇー、そうだったんだ!」 ポスターPDF 感染症にまつわる、普段なかなか聞くことができないさまざまな「へぇー、そうだったん...

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IASR最新号 特集記事

IASR 45(4), 風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在

  風疹・先天性風疹症候群 2024年2月現在 (IASR Vol. 45 p51-52: 2024年4月号)   風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。風疹に対する免疫が不十分な妊婦が風疹ウイル...

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Mycoplasma amphoriforme, 長引く咳嗽を主訴とする小児からの検出

(IASR Vol. 37 p. 115: 2016年6月号)

Mycoplasma amphoriformeは1999年にWebsterらによって慢性気管支炎を罹患している免疫不全患者から検出され, その存在が確認された1)。その後の調査では免疫能の正常な患者からの報告もあり2,3), 現在では気道感染症原因菌として認知されている。しかし本菌は栄養要求が厳しく, またその性状がMycoplasma pneumoniaeと同様のブドウ糖分解, アルギニン非代謝性であることから, 感染していても検出できていない, または見逃されている可能性も高く, わが国ではこれまで検出の報告はなかった。今回我々は肺炎マイコプラズマ感染疑い患者の調査中にM. amphoriformeを分離同定したので報告する。

患者は4歳の女児, 2015年5月頃から咳嗽が続いていたが鼻汁なく, 他の全身所見もなかったため医療機関を受診することはなかった。しかし2015年8月, 7歳の兄が発熱(39.3℃), 咳嗽の症状を呈したためクリニックを受診, 胸部レントゲン検査で右上肺野に陰影があり, M. pneumoniae LAMP陽性でマイコプラズマ肺炎と診断されたことから, 妹についても咽頭ぬぐい液を採取, M. pneumoniae特異遺伝子の検出(LAMP)およびマイコプラズマの培養検査(自家製酵母エキス使用二層培地およびPPLO broth)を実施した。

その結果, LAMPは陰性, 培養検査でも二層培地では変化がなかったが, PPLO brothで培地の黄変が認められた。PPLO broth で発育した菌は0.45μmのポアサイズのフィルターを通過, PPLO brothでは継代培養できたが, 二層培地およびPPLO寒天培地には発育しなかった。黄変の認められた培地から抽出したDNAのM. pneumoniae同定PCR4)でも陰性であったことから, 16S rRNA遺伝子(GenBank accession No. LC131338)による同定を試みたところ, M. amphoriforme A39(NR_117836)と99.9%一致(1408/1409 16S rRNA partial sequence), M. amphoriformeと同定した。

血液検査では白血球数9,000, 好中球53%, CRP 0mg/L, 生化学;特に異常なし, マイコプラズマ抗体(PA法);320倍, 百日咳抗体PT; 4 EU/mL, FHA; 23 EU/mLであり, M. pneumoniaeの感染履歴が認められた。

分離菌はM. pneumoniaeの治療に用いられるマクロライド系薬剤, テトラサイクリン系薬剤, ニューキノロン系薬剤に耐性は認められなかった。女児は8日間のトスフロキサシンの投与によって咳嗽は消失した。

兄の咽頭ぬぐい液の培養検査では, 二層培地, PPLO brothの両方でM. pneumoniaeを検出した。さらに, 兄妹のM. amphoriforme特異遺伝子の検出real-time PCR5)を実施したところ, ともに陽性であった。

本事例のみでM. amphoriformeの病原性およびM. pneumoniaeとの共感染時における両菌の関連性について論じることは難しいが, わが国においてもM. amphoriformeが存在することが明らかとなった。外国の事例ではウイルスとの共感染の報告もあり5), 種々の感染症が疑われる患者の遺伝子検出検査を行うことによりM. amphoriformeの感染実態が明らかになってくるものと考えられる。

 

参考文献
  1. Webster D, et al., Eur J Clin Microbiol Infect Dis 22: 530-534, 2003
  2. Pitcher DG, et al., Int J Syst Evol Microbiol 55: 2589-2594, 2005
  3. Pereyre S, et al., Clin Microbiol Infect 16: 1007-1009, 2010
  4. Craven RB, et al., J Clin Microbiol 4: 225-226, 1976
  5. Ling CL, et al., J Clin Microbiol 52: 1177-1181, 2014

大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課
 勝川千尋 水谷香代子 石鍋美智子
あさいこどもクリニック
 浅井定三郎
国立感染症研究所細菌第二部
 佐々木裕子 見理 剛 柴山恵吾
国際医療福祉大学
 高橋和郎

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan